ノアの箱舟「ソーラーアーク」

窓から見える“アレ”の正体

東海道新幹線下りの岐阜羽島駅から長良川を渡った直後、右手の車窓に灰色の大きな舟形が現れ、新幹線のスピードを忘れてしまいそうな程ゆっくりと後方へと流れていく。以前から気になっていた“アレ”をプリウスPHVで見に行く事にした。遠くから見た印象から、かなりの大きさだと予想はしていたが、近くに寄ってみてると、スケール感が麻痺する程の巨大きさに驚いた。全長315メートル、最高部の高さは37メートルの舟の正体は、クリーンエネルギーの可能性と太陽光発電のシンボルとして三洋電機が2002年に建設した世界最大級の太陽光発電施設だ。表面を覆う発電ユニットは幅1320mm高さ895mmのリサイクルソーラーパネルが5,046枚も使用され、最大で630kW(推定年間発電量53万kWh)を発電できるという。施設の形状は、大洪水による人類滅亡の危機を救った「ノアの方舟」をモチーフとし、21世紀の環境問題に立ち向かう人類の英知の象徴として「ソーラーアーク」と名付けられた。

現代の「ノアの箱舟」ソーラーアーク

現代の「ノアの箱舟」ソーラーアーク

1998年に三洋電機会長である創業家の井植敏さんが発案し、2000年の会社設立50周年の記念事業としてスタートしたのが「ソーラーアーク」計画だった。カラーテレビを生産していたこの場所に未来を見据えたものを作ろうと、1998年に外観デザインや設計をスタート。1年後には着工し、2001年に竣工するという素早い動きであった。そして、驚くことに自社の記念事業にも関らず「目先のサンヨー製品の展示などいらない。未来を展示するのだ」という井植会長の考えから、地球環境の未来を見据えた「ノアの箱舟」が誕生する事になった。

箱舟の中には「太陽」がいっぱい

すごいのは建物だけではない。これまで太陽光発電の施設を自由に見学できるものはなかったが、この巨大な箱舟内部には「ソーラーラボ」と呼ばれる「太陽」についての知識を楽しく学べる最新の科学が展示されている。ひとつのものが地球と太陽ではその重さが驚くほど変わったり、実際の自転車を漕いで太陽までどのくらいの時間で到着するのかなど、体験して楽しみながら学ぶことができる。残念ながら現在は一般公開されていないものの、学校関係など団体での見学は可能だ。未来を担う子どもたちには楽しく自然の偉大さを体験してもらいたい。

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