2011年 8月



8月 25日 2011

数年前から自動車雑誌などに“クルマに興味を待たない若者が増えている”という記事が掲載されている。インターネットの普及が追い風となり、興味を向ける矛先が多様化しているのは事実だろうが、本当に若者達はクルマに魅力を感じなくなってしまったのだろうか。プリウスPHVで日本中を旅していると“新しいクルマ”に目を輝かせるたくさんの若者にも出会うし、ボクの近所の子供たちの多くが高校卒業前に教習所通いを始め、就職が決まればピカピカのクーペやコンパクトカーが納車されていたので「若者の自動車離れ」という実感が沸かないのだが、実際はどうなのだろう。

埼玉自動車大学校に到着

埼玉自動車大学校に到着

我々チームACPの仲間でエコミッションでも力を発揮している三角メンバーが若かりし頃、技術の習得に励んだ母校でもある「埼玉自動車大学校」を訪れ、将来の夢をクルマ業界へ向けた若者達に話を聞くことができた。

埼玉自動車大学校は広大なキャンパスに最先端の設備を導入した施設が建ち並び、新しい時代を担う最先端の技術者を養成する恵まれた環境が整っている。整備士をはじめ、カスタム、モータースポーツなどメーカーに囚われないクルマのスペシャリストを輩出する学び舎には、クルマ業界へ将来の夢を託す若者達が全国から集まってくる。

学校に到着すると一見強面だが情熱に溢れ、学生からの信頼も厚いという学生指導の清水先生が出迎えてくださった。休講日にも関わらず、エコミッション来校を知った学生達も揃ったところで、プリウスPHVの“プラグイン充電”をお披露目する。授業でハイブリッドカーやEVカーに触れる機会の多い彼らも、プラグインハイブリッドは初めて見るという事で、見つめる眼差しの真剣さはただものではない。すぐさま技術的な事や走行性能についての質問が飛び交う。

プリウスPHVに見入る埼玉自動車大学校の学生達

プリウスPHVに見入る埼玉自動車大学校の学生達

教材やコレクションとしてたくさんのクルマを所有している中で、東京大学自動車工学の教授もその出来栄えに驚いたという学生達の力作、プリウス(20系)のカットモデルがあるというので見せていただいた。中央部からスパッと鋭利な刃物で切り取られたような精巧な作りにメンバー全員が唸る。その工作過程は、バラバラににしたパーツをひとつずつ糸のこなど身近な工具で切り取り、面取りをした後で組み直したというから、もう、ただ驚くばかりだ。クルマの前にある操作ボタンを押すと、エンジンとモーターの切り替えが再現され、キチンと駆動する念の入れ用。こうした作業の積み重ねがしっかりとした技術習得に繋がっているのかと、あらためて実感させられた。

精巧なPRIUSカットモデルも学生作品

精巧なPRIUSカットモデルも学生作品

充電が完了したところで、次世代のクルマを学生たちに体験してもらおうと試乗会を行う事にした。一般発売前のクルマを運転できるとあって、それまで少し固い表情だった学生達に笑顔が溢れる。簡単な説明をした後、滑るように校内テストコースへ繰り出して行くプリウスPHVの走りに、順番待ちの学生達から「お〜静か、早いなぁ。」などの言葉が飛び出す。試乗後に感想を聞くと、力強さと静かさのギャップが楽しい、これまで知っているクルマのどれとも違う感じ、モーターのトルク感が良い、などクルマ業界を目指す学生ならではの言葉が印象的だった。中には、やっぱりエンジンの鼓動が聞こえないと、これって自動車ですか、などの意見もあったが、それも彼らがクルマを好きな証としての大切な言葉だろう。その後も時間を延長してクルマ談義に花が咲き、彼らのような若者がいる限り次世代のクルマ社会にも希望が持てると感じる事ができた。

多くの所蔵ヒストリックカー

多くの所蔵ヒストリックカー

自動車が発明されて100年余。レシプロエンジンの時代は大きく変わり、電気エネルギーが台頭しようとする時代のこの瞬間に立ち会える事を幸運に思う。これから先の10年で、クルマだけでなく暮らし全体がエネルギーの生産・活用手段を巡って、想像を超える程ドラマチックな変貌を遂げるだろう。次世代を担う若者たちが、正確な情報の元にそれぞれのスキルを習得し、自分たちが社会を創り上げて行くという自覚を持って進む事ができれば、現在の日本が直面しているエネルギー問題にも活路が開けるに違いない。若い学生達と触れ合い、そんな事を考える素敵な一日だった。

お世話になった埼玉自動車大学校の清水先生、松村先生、
良い体験ができました。ありがとうございます。
学生のみなさん、夢に向かってがんばってください。
心から応援しています。


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8月 24日 2011

フロントガラスを叩きつけていた激しい雨が止み、雲の切れ間から妙義山の荒々しい山容が見え隠れしている。それを迂回するように上信越自動車道が蛇行する辺りで「群馬県」のサインボードを見送った。4月初旬に沖縄からスタートしたエコミッション2011@ジャパンが3ヶ月を掛けてようやく関東へと駒を進めた瞬間だ。群馬県は戦前に創設された日本初の民間航空機会社「中島飛行機」があった事から優秀な技術者が多く、現在の自動車産業の基盤を支える「自動車王国」として知られている。群馬県下でトヨタ店、レクサス店、RVパーク、U-Car、Volkswagenなどを展開し、クルマをベースにしたライフスタイルを総合的にサポートするのが「群馬トヨタ」さんだ。数ある店舗の中で交通の拠点とも言える高崎市の中心に位置する「高崎東町店」にプリウスPHVを展示するため訪問させていただいた。

目抜通りの交差点に面した美しい大型店舗

目抜通りの交差点に面した美しい大型店舗

雨の高速道路で汚れたボディを洗車してもらい、高い天井の広々としたショールームに搬入。フロア埋め込み式のコンセントはアース付き3穴タイプで充電ケーブルの取り回しも楽々完了し、“プラグイン”とともに特別展示がスタートした。来店されたお客様は思いがけない“珍客”に興味津々、充電中のプリウスPHVに足を止めていた。

今日は新入社員研修が行われており、長年トヨタ車で世界中を駆け回ってきたTeam ACP代表の横田BOSSも講演することになっている。短い時間だったが、パリダカ時代からエコミッションで巡った世界五大陸、昨年からスタートさせた日本の環境最前線を訪ねる旅の話に、メモを取りながら熱心に聞き入るフレッシュマン達の姿があった。講演が終わり展示しているプリウスPHVを取り囲むように集まった皆さんに、足掛け2年に及ぶ実走体験やEV車との違いなどを話すと、これから始まる本格的な業務を前により多くの知識を得ようと、さらに耳を澄ます表情が印象的だった。新しい時代を担う彼らが、進化を加速させる次世代のクルマと、それを取り巻くエネルギー環境を正しく理解し、真の魅力を多くの方々に広めていただきたいと願うばかりだ。

新人研修でプリウスPHVの実走体験を語る

新人研修でプリウスPHVの実走体験を語る

充電開始から3時間でリチウムイオンバッテリーは満タン。希望する数組のスタッフや一般のお客様に試乗してもらう事にした。ショールームから大通りへEVモードで滑るように走りだすプリウスPHVは高崎の街でも注目の的。5キロほどの試乗を終えて戻ったスタッフに感想を伺うと、力強くしっかりとした加速感に驚いた様子で、発売が待ち遠しいという意見が多く聞かれた。一般発売がすぐそこまで迫ったプリウスPHVが、自動車王国群馬を魅了する日も近い。肌寒いぐらいの陽気が続いていたグレーの空が一転、真っ白な入道雲が湧き上がり暑さがぶり返す上州高崎を後に、関越道を南下して開通したばかりの北関東自動車道で東北道に乗り継ぎ、次の訪問地を目指した。

プリウスPHVに足を止めていただいたお客様、お世話になった群馬トヨタのみなさま
本日はありがとうございました。


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8月 23日 2011

大阪万博が大成功に終わり日本中が好景気に湧いていた40年前、白馬連峰を望む姫川沿いの斜面をひとり耕す男の姿があった。大規模農法がもてはやされ、農薬や化学肥料を盛んに用いて“美しい畑”で作られた“美しい野菜”が大量に市場に出まわっていた頃、あえて昔ながらの農業の魅力に惹かれ、自給自足を目指した彼は「無農薬・有機農法」の先駆者だった。

顔に力強い生きざまが刻まれている

顔に力強い生きざまが刻まれている

今年で81歳になるという彼の名は山岸豊吉さん。東宝映画の大ヒット作「あゝ野麦峠(1979)」の企画・制作に携わるなど、多くのルポルタージュ作品を中心に手がけて来た映画人でもある彼の元には多くの映画仲間が集い、農作業に汗を流して行くとの事。“土魂塾”と名づけられた畑に建つ母屋の壁に、ずらりと掲げられた塾生名札には有名俳優などが名を連ねている。

「大きいのが穫れたよ〜っ」と横浜から来た女の子

「大きいのが穫れたよ〜っ」と横浜から来た女の子

山岸さんが開墾した農地で農業体験ができるというので北安曇郡小谷村にある“土魂塾”を訪れた。樹齢千年を超える杉の大木を従えた諏訪神社に繋がるように広がる畑は、一見すると雑草が繁茂しているように見えるが、これこそが自然農法。野菜は野草と競うように力強い株に成長し、豊かな実りを授けてくれるという。横浜から自然農業体験に訪れていた子供たちと一緒に畑へ出向き、トマトやインゲン、ズッキーニ、きゅうりなどの収穫の手伝いをさせていただいた。夏の陽と土の栄養をたっぷり吸収した野菜たちは元気の塊のように輝いている。トマトをひとつもいで口にすると、パチッと弾けるしっかりとした皮の中から、ほとばしるような香りと元気が飛び込んでくる。それを呑み込むと身体中が喜んでいるように感じた。

みずみずしい加賀太きゅうりのたたき

みずみずしい加賀太きゅうりのたたき

収穫した籠いっぱいの野菜をかついで“土塊塾”の母屋へ戻り、採れたて野菜を振舞っていただくことになった。見事な加賀太きゅうりの皮を荒く剥いて麺棒で叩き割り、味噌をつけて頬張ると、口元からあふれそうな程の水気を含んで、先程のトマトに負けず劣らずの旨さ。傍らで静かに見守っていた山岸さんもうれしそうに頬張っていた。御年81歳の山岸さんだが、每日のように急斜面の畑を往き来し鍬をふるっている。「農業を続けるのが長生きの秘訣。90歳までは続けますよ。映画は借金して撮るもんだからね、年金はみんなそっちに回るんだよ。これからも畑を増やして口にする全ての食べ物を自分で作りたいんだ。」時折、少年のようにはしゃいだ表情を浮かべながら、そんな夢を語ってくれた。山岸さんはこれからも畑に出ては汗を流し、“将来の夢”に向かって進んで行くだろう。

楽しい時間をありがとうございました。
山岸さんのお人柄に強く惹かれました、いつまでもお元気で。


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