9月 20日 2012

澄川地熱発電所(秋田県鹿角市)

澄川地熱発電所(秋田県鹿角市)

田沢湖畔を後に国道341号を北上すると、湯治場で有名な玉川温泉を過ぎた辺りで、カーナビの案内ルートラインが見慣れない薄青色に変わった。もしや道を間違えたのでは?と減速したカーブの先に「冬季通行止め」の標識を見つけて納得する。外気温表示が20度まで下がっていたのでエアコンをOFFにして窓を開けると、鼻を突く硫黄の臭いを含んだ冷気が一気に車内に流れ込んできた。見れば道路脇のアオモリトドマツの森が、もうもうと吹き上げる蒸気に霞んでいる。ここ焼山、八幡平の標高1,000mを越える一帯は、地球の息づかいを真近に感じられる場所だ。

山腹の森林から蒸気が吹き上がる

山腹の森林から蒸気が吹き上がる

エネルギー資源に乏しい日本はその多くを輸入に頼ってきたが、地熱発電は純国産エネルギーとして安定供給が見込まれている。また、技術シェアの70%以上を国内企業が担っており、二酸化炭素排出量も極めて少ないことから、エネルギーの自立を目指す日本にとって大きな期待を持って迎えられ始めているのだ。

国内にある地熱発電所の半数以上が稼働する東北地方でも、有力な発電所としてさらなる開発が進められている「澄川地熱発電所」を訪問し、所長の千田さん、八幡平地熱(株)事業部長の永井さんに案内していただいた。

千田所長さんに発電所内を案内していただいた

千田所長さんに発電所内を案内していただいた

地熱発電がどのような方法で電気を作り出しているのか、きちんと理解している方は少ないのではないだろうか。今回の訪問で丁寧に解説していただいたので、簡単に仕組みをおさらいすると、現在行われている地熱発電とは、地下深くまで掘り下げた「生産井(せいさんせい)」から高温の地熱流体を取り出して水を分離し、水蒸気だけをパイプラインで発電所へ送ってタービンを回して発電、使用済みの水蒸気を冷却して水に戻し「還元井(かんげんせい)」で再び地下水脈へ戻すという一連の工程を、地下から吹き上げる圧力だけで稼働させている高効率な発電方法だ。生産井は地下1,500m〜2,500m、還元井が1,000m〜2,500mの深さなので、全長2,500m〜5,000mに及ぶ循環型発電システムといった所だろうか。

生産井の説明をしてくれた永井さん

生産井の説明をしてくれた永井さん

地熱発電の歴史は意外に古く、大正14年には出力1.12kwと小規模ながら、日本初の地熱発電に成功したというから約80年前に遡る。しかし、火山大国・日本といえども地表近くまで高温のマグマ溜りが上昇し、利用可能な候補地は限られており、その8割以上が国立・国定公園内にあるため、環境保護などの観点から地熱発電所計画の多くが見送られてきたのだ。“エネルギー元年”と言われる今年3月、純国産エネルギーである地熱利用がにわかに脚光を浴び始め、環境省はこれまで規制対象だった国立・国定公園内での地熱発電利用を緩和する方針を発表したため、新たな候補地を絞る調査が各地で始まっている。

生産井管理棟で充電させていただいた

生産井管理棟で充電させていただいた

エネルギー開発における環境への影響という観点から地熱発電を見てみると、水蒸気が森林に与えるインパクトを考慮した冷却方式の採用や、狭い範囲から放射状に掘削することによって、地上の開発面積を出来るだけ減らす工法、景観を損なわないよう建屋をロッジ風の外観にするなど、もともと環境負荷の少ない発電にも関わらず、さまざまな配慮が伺える。

現在の発電コストは石炭並と決して高いとはいえない地熱発電だが、今後、技術革新が進み、より高温の地熱流体を利用できるようになると飛躍的に発電効率が高まり、自然エネルギーの一翼を担う可能性を秘めているという地熱発電の今後に期待したい。

発電所内をはじめ、現在は閉鎖中の「地熱発電所PR館」を特別に観せていただきました。
東北電力澄川地熱発電所所長の千田さん、八幡平地熱株式会社事業部部長の永井さん
あいにくの雨でしたが、丁寧に案内していただきありがとうございました。

明日は子供たちの笑顔をたくさんお届けします。



カテゴリー: エコミッション2012,秋田県

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