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環境団体の視点

ワシントンDCを拠点に、環境問題に取り組む方々の活動を続けて3日間、お送りします。


ワールドウォッチ研究所 訪問記(6月29日)

日本の環境問題関係者にとっては“教祖”的な存在といえる、「ワールドウォッチ研究所 (World Watch Institute) 」のレスター・ブラウン博士に会うことが出来ました。世界の環境問題の教科書ともいえる「地球白書」「地球データブック」そして「ワールドウォッチ」など数々の出版物を出して、全世界の環境問題関係者に情報提供をしている機関の所長さんなのです。

ジェファーソン・メモリアル前でワールドウォッチ研究所のレスター・ブラウン博士が会見の場所に指定してきたのは、有名な建造物の数多いワシントンDCの中でも、特にアメリカ人に人気が高いといわれる「ジェファーソン・メモリアル」でした。
日本人観光客にとってはあまりなじみの無いところかもしれませんが、ブラウン博士が指定したのにはちゃんと理由がありました。

「第3代大統領のトーマス・ジェファーソンは当時からすでに農業、アグリカルチュアに強い関心を持ち、アメリカでも最初にエコロジーに取り組んだ大統領といえるのです。そして彼は世界各地から植物、穀物を積極的に輸入し、農業の振興に力を入れました。今やアメリカで最大の生産穀物である大豆を、1805年に中国から導入したもの彼なのです。彼は私の“ヒーロー”です。」(ブラウン博士)

そしてレスター・ブラウン博士も最初は農業に興味を持ち、農業をやっているうちに地球の環境問題に関心を持つことになり、現在に至っているということでした。

レスター・ブラウン博士と話す隊長

ECO-MISSIONはさっそく一番気になっているポイントを尋ねてみました。

「我々日本人は、石油資源があと50年しか持たない、といわれていることに非常に危機感を持っていますが、どう思われますか?」(横田)
「それは実は、環境に気をつかっている人間どころか、石油会社のCEO、トップ達が一番気にしていることなのです。」(ブラウン博士)
「我々の孫の時代には石油はなくなってしまう。彼らの世代のクルマ社会はどうなっていると考えますか?」(横田)
「基本的には炭素エネルギーから水素エネルギーへの転換が必然でしょう。その場合に一番有効と考えられるのは、水から水素と酸素を得て、この水素をエネルギー資源として使うという方向が一つ挙げられます。」(ブラウン博士)

ジェファーソン・メモリアルでブラウン博士と語る

「1900年代の初頭に登場したクルマは、これまで100年かかって“インフラ”を世界の隅々まで築き上げてきました。新しいエネルギーを利用した乗り物を現在のクルマと同様に普通に利用するには、“インフラ”の整備でまた100年かかるのではないでしょうか?」(横田)
「そんなに長くはかからないと思います。化石燃料エネルギーの時代から、太陽/水素エネルギーに代表される新エネルギー時代へと転換することには。なぜならすでに風力エネルギーなどは実際に供給されている例もありますし、またテキサス州で行われているENRON(エンラン)と呼ばれるパイプラインによるエネルギー供給などもスタートしているからです。」(ブラウン博士)

やはりリサーチを専門に行っている研究機関を作り上げた方だけに、環境問題に関する具体的な話になると1時間でも2時間でも平気で説明してくれそう。

それだけでスケジュールが終わってしまいそうなので、プリウスの話題に移って……。

レスター・ブラウン博士とプリウス「市販第一号のハイブリッド車、プリウスをどう思いますか?」(横田)
「この分野では現在、トヨタがリーダー的なポジションを取っています。世界の自動車製造業者もそれに追いつくような行動をとっていくでしょう。」(ブラウン博士)
「アメリカのメーカーはどうでしょう?」(横田)
「トヨタの後を追っている。アメリカも同じ様な行動を取っていますが、日本車は環境問題に対して一つのいい例を示したといえます。クルマの燃費が非常に重要視されてきているのです。世界中が燃料効率のさらなる上昇を切望するようになるでしょう。」(ブラウン博士)

低公害システムの一つの方向性としての存在であるプリウスにはやはり詳しいブラウン博士、予想以上にプリウスの評価は高かった。
「燃料効率が良いだけじゃなく、クルマとしても非常にスムーズだよ。」(ブラウン博士)
「来年アメリカでも売ることになるといわれていますが、どう思いますか?」(小澤)
「クルマを運転しなければならない環境保護者もいるので、彼らにも売れるでしょう。そういう人たちも非常に興味を持っているはずですから。このクルマには多くの市場があるだろうと考えます。」(ブラウン博士)

ちゃんと「今出来ることを今やり遂げている」ということを正当に評価していただいたのでした。
「ベリー・スムーズ。スタイリングはグレート!」(ブラウン博士)

思いもかけずプリウスに試乗までしていただいたブラウン博士。
自分の考えを常に相手に正確に伝えようという雰囲気がひしひしと感じられる、実に誠実そうな方でした。
日本人のとらえている“教祖”的なイメージなどではなく、実に本気で地球のことを心配している一人の真摯な人間なのでした。

 


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