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コラム

 

「枯葉で走るクルマ」(長崎県)

 1989年、NASAが衝撃的なニュースを発表した。

「人類は現状のまま化石燃料を消費すると50年で渇望する。」

 宇宙開発は未知の惑星を探査すると同時に、地球の健康診断も可能とした。その結果、化石燃料に限りがあることを知り世界中が震撼したのだ。あれから約10年が経過して化石燃料の削減に邁進しているわけだが、いずれクルマの燃料を石油に依存する世紀は終局をむかえ、人類は新たなエネルギーを模索しなくてはならない。世界の石油企業、自動車産業が燃料電池、水素、太陽エネルギーなどの研究開発を推進している。2002年現在、化石燃料の削減という意味では、市販されたのは電気自動車とハイブリッドカーである。国家や企業レベルでの新エネルギー開発はともかくとして、民間レベルというか市民感覚の新エネルギーはボチボチと実用化されている。例えば、食用油の廃油を触媒して「NERO」廃食用油代替燃料に変えディーゼル車を走らせている。このメリットは既存のエンジン、ボイラーに、そのまま使えることだが、廃油をどれだけ回収できるかが一般化するためのカギとなる。

  九州の長崎総合科学大学で夢のある研究を見せてもらった。 長崎市内を見下ろす丘にある大学のキャンバスに、愛用のエスティマハイブリッドを乗り入れると、坂井教授と学生さんたちが迎えてくれた。バイオマスフュエルの権威、坂井教授は、10年以上バイオマスの研究を続け、ついに枯れ葉を燃料にクルマを走らせることに成功した。枯れ葉でクルマが走ると聞いて、戦後の木炭車を想像して年齢が知れてしまうが、エンジン音も高らかに現れたクルマはゴルフ場のカートほどの可愛いクルマだった。 すでに、ナンバーを取得して町を走っているクルマもあるそうだ。

  坂井教授が10年の歳月をかけて製作したバイオマス燃料抽出機でメタノールを抽出してクルマの燃料にする。バイオマスとは「太陽エネルギーを貯えた生物体の総称」で、一般的には植物と考えれば良い。その植物が燃焼するとき太陽エネルギーを放出する、それを銅や亜鉛などの触媒を使ってメタノールを抽出する。枯れ葉燃料の誕生だ。 坂井教授いわく「化石燃料は作ろうとしてもとんでもない年月が必要です、バイオマスは燃料となるものが草木など燃えるものなら、なにからも取り出せます、バイオマス用のプランテーションを作れば、いくらでも燃料が作れます」。森林を侵す竹林やスギ花粉をばら撒く針葉樹林も「クルマの燃料林」になる日もそう遠くは無いかもしれない。                   

 

                                         自動車環境評論家 横田紀一郎

普通のクルマとパワー的にも遜色ない。
試乗する筆者、長崎総合大学にて

トヨタのハイブリッドカーと並ぶ、
枯れ葉で走るクルマ

 


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