やっぱりスゴかった!“世界初”の水素ステーション
水素燃料電池車MIRAIで挑んだ福岡〜東京1,200kmの「ささやかな冒険」は、福岡市中部水処理センターに隣接する“世界初”の水素ステーションから始まった。
何が世界初なのか?
8月31日の記事でも紹介させていただいたが、下水処理の汚泥からバクテリアのチカラで消化ガスを発生させ、それを精製したメタンから水素をつくるプラントを備えた、世界で初めての水素ステーションがここ「HyLeC福岡水素ステーション」なのだ。
実証実験が始まったばかりで一般車両への充填は行っていないのだが、今回のチャレンジに賛同していただき、特別に充填許可が下りた事が「Hydro Challenge @ MIRAI」実現の大きな一歩でもあった。
真新しい水素ステーションに向かうと、昨年9月に消化ガス発電設備を案内してくれた中部水処理センターの皆さん、水素製造プラントを立ち上げた三菱化工機の皆さんがMIRAIを迎えてくれた。
充填口を開けると、フチに溜った雨水をエアーガンで丁寧に吹き飛ばした後、“カチッ”とディスペンサー(充填ノズル)が装着された。実はこのディスペンサー、安全に水素を充填するための技術が凝縮された精巧な造りで、ひとつ800万円もする超高額機器。水素ステーションのタンクとMIRAIのタンクとの圧力差を利用して充填される水素をしっかりコントロールしているのだとか。
充填を終えたあと、水素ステーションに隣接する水素製造プラントを三菱化工機の平下所長に案内していただいた。汚泥からつくられた消化ガスからメタンを精製する装置、プラントの要とも言える水素製造装置、貯蔵タンクなどが整然と並ぶ敷地は思ったよりもコンパクトな印象を受ける。ここで作られる水素は1日約3700立方メートル、MIRAI × 65台を満充填できる量に相当する。当然この場所で消費する量を超えるため、近い将来、各地に建設予定のオフサイト水素ステーションに供給する予定だという。ここは「水素リーダー都市プロジェクト」を謳う福岡市の水素社会への取り組みの象徴として歩み始めた“創エネベース”なのだ。
原料に下水処理の汚泥を利用しているのも然ることながら、メタンから水素を製造する過程で分離されるCO2が農作物の育成増進に活用され、それを食べたあとの下水がまた原料となる、全てがクリーンな循環型水素社会を理想としているところが、このプロジェクトの真に“スゴイ”ところなのである。
そもそも多くのエネルギーを必要とする都市部には、水素の原料となる大量の下水があるのだから、「エネルギーの地産地消」を実現するための実証実験が成功すれば、日本中、いや世界中に広がりを見せる日もそう遠くないのかも知れない。
福岡〜東京1,200kmの全編に渡り、RKB毎日放送の今林記者に取材していただきました。
本日オンエアーされた動画をご覧ください。
ご協力いただいた「福岡市中部水処理センター」「三菱化工機」「豊田通商」「九州大学」の皆様、ありがとうございました。