ローカル交通の進化形「女川シーパル号」

リアス式海岸が作り出す深い入り江が絶好の港湾となり、日本有数の漁港として栄えて来た女川町は、黒潮と親潮がぶつかり合い、世界三大漁場として名高い金華山沖に近いことから、豊富な海産資源にも恵まれ、ブランド魚「金華サバ」や、旬を迎える秋刀魚漁で活気づいている。

秋刀魚漁から戻った船が並ぶ女川漁港

女川周辺は無数の入り江に集落が点在している。海岸線をなぞるように曲がりくねった細い道路が集落を繋ぎ、1日数本の路線バスが主な公共交通機関だった。しかし、過疎化のために赤字路線が増え続け、存続さえも危ぶまれるようになって行く。過疎による路線バスの廃止は、全国的にも深刻な問題となっており、自らクルマを運転して町まで出掛けられない高齢者が、日用品の買い出しにも困るような孤立化を招いている。漁業に好立地な女川町にあっても避けられない事態に、頭を悩ます日々が続いていた。

危機的な状況に行政と町の人たちが知恵を出し合い、新しいローカル交通網を模索した結果、狭い道でも小回りの利く車両を使い、低運賃で集落と町を効果的に結ぶ独自の交通手段「シーパル号」が誕生する。運行を開始した平成18年9月当初から利用者には好評で、現在では増便も検討するほどに成長しているという。町内を散策しながら、利用しているという方々に話を伺うと「便利なので毎日のように利用している。」「玄関先まで運んでくれるので買い物も楽だ。」地域の足として無くてはならない存在になっている事を実感する。女川港近くの「シーパル号予約センター」の話では、新交通システムの成功例として注目され、同じような問題を抱えた地方自治体からの問い合わせや視察の要請が後を絶たないという。

町民の足「シーパル号」を体験

シーパル号の運行を成功させるため「60才以上限定」「効率化のため完全予約制」「チケット一括前払い購入」などの条件を設けているのも特徴のひとつだ。一見、不便に感じるかもしれないが、ルールを決めて運行を続ける事が、深刻な過疎化による廃線のリスクを回避するための知恵なのだろう。町では定期的に利用者や運行担当の意見・要望などを聞きながら、より進化したローカル交通を目指している。

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