60年後の“森”を目指すビル

「アクロス福岡」は近代的なビルが立ち並ぶ福岡市の中心部天神にあって、こんもりとした緑が生い茂り、明らかに異彩を放っている。10年程前エコミッション2001@ジャパンで立ち寄った時には、細い木々が根付いたばかりで段状の構造物がむき出しの状態だったが、重ねた時間と関わった人たちの地道な努力によって、以前とは比べものにならない程“森”へ近づいていた。

歳を重ねるごとに“森”に近づいて行く「アクロス福岡」

南側斜面は段状の森を散策しながら最上階まで昇る事ができる。緑のトンネルの中で深呼吸すると、本物の森の香りがするのは、きちんとした生態系ができている証と言えるだろう。
ビルに降った雨から空調の排水まで、全ての水を一元管理し、地下四階にある600トンものタンク(雨水300トン/浄水300トン)に貯水し、ポンプで屋上に汲み上げて再び流す循環システムを稼働させる事で、厚さ50cmのマットに植物の生育に欠かせない土中菌を繁殖させ、見事なまでに“本当の森”を再現させているのだ。

最上階の展望台まで登りながら、四季の植物を巡るよう植栽されており、竣工時には38,000本だった樹木も50,000本/38種を超えるまでに成長している。最上部付近には人の手で植えた植物に混じって、野鳥が運んで来たものも数多く根付くなど、年々多様性の幅を広げつつある。滝や水溜、小川など変化に富んだ水の表情も楽しみながら、こんな都会の真ん中で年々豊かになる“森”を散策できるとは、これほど贅沢なトレッキング体験は無いだろう。

1996年BCS賞(建築業協会賞)、2010年「生物多様性保全につながる企業の緑100選」に選出。
アクロス福岡HP

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