昨日までの曇天が嘘のように、頭上にぽっかりと青空が広がる。遠野三山のひとつ「六角牛山(ろっこうしさん)」の背後から昇る朝日が、稜線に絡みつく綿雲を見事に照らし出す幻想的な風景が広がっていた。黄金色の田んぼが一層の輝きを放つ田園地帯を抜け、「遠野ふるさと村」へ向かった。
遠野郷の伝統民家「曲り家」を移築し、江戸時代の美しい里山の集落を再現した「遠野ふるさと村」では、古くから語り継がれた伝統、文化を継承する「守り人(まぶりっと)」と呼ばれる人たちが、様々な体験プログラムを通して、古き良き日本を味あわせてくれるというので、地元の子供たちと一緒に「お手玉作り」を体験させてもらう事にした。待ち合わせ場所のビジターハウス前には「ガズームラ」のノボリ旗が立ててあり、支配人の鈴木さんが笑顔で迎えてくれた。しばらくして今日の青空のような笑顔いっぱいの子供たちが到着。広い敷地を賑やかに行進しながら、明治初期に建てられた「大野どん」という曲り家へ向かった。
大野どんでは「まぶりっと」のおばあちゃんが布や裁縫道具、中に入れる小豆など準備をして待っていた。作り方の手順やポイントなどをひと通り説明し終わると小布と針と糸が配られ、いよいよお手玉作りが始まる。慣れない手つきで運針する子供たちは真剣そのもの。同行しているお母さんに手伝ってもらいながら、袋状に縫い終わると、1/3ほど小豆と音が鳴るようにビンの王冠を2個を入れ、口を閉じて出来上がり。文章で書くと簡単そうだが、普段、裁縫する機会が少なくなったお母さん達も悪戦苦闘。まぶりっとのおばあちゃんの助けを借りて、ようやく全員のお手玉が出来上がった。放おっては受け止める度に“チャッチャッ”と手に心地よい感触を確かめるように、あちこちでお手玉が宙を舞う。それを嬉しそうに見ていた“まぶりっとおばあちゃん”が数え歌に乗せたお手玉遊びを披露、子供たちも見よう見真似でそれに続く。さらに新しい遊び方を見せては、子供たちが真似る。そんな温もりのやり取りがいつまでも続いていた。
「まぶりっと」のように昔からの伝統を次の世代へ受け継ぐ文化は、かつて日本中に当たり前のようにあった。それは、異なる時間を生きる世代間の僅かなチャンスにバトンタッチする宝物だと思う。世代を越えた“お手玉”が今なお残る、遠野のような風習がいつまでも続く事を願ってやまない。
終始、楽しい時間を過ごしたふるさと村を後に、語り部のおばあちゃんから勧められた、遠野が一望できるという高清水山へ向かった。標高差500m程の急峻な坂道を上り、山頂付近で道を覆う樹々が途切れた先に、息を呑むような絶景が広がっていた。周囲を山に囲まれた典型的な盆地の底に、パッチワークのような田んぼが黄金色に輝き、3本の川がゆるやかな曲線を描いて流れている。聞こえるのは、秋の虫と風の音だけ。もしも「GazooMura遠野」を訪れる事があれば、是非とも見てもらいたい一番のおすすめポイントを見つけた。
遠野ふるさと村「お手玉の遊び」
遠野ふるさと村のみなさん、大変お世話になりまた。
おかげさまで美しい日本の原風景を感じる事ができました。
カテゴリー: エコミッション2012,岩手県
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