10月 4日 2012

ランクルに搭載した超小型BDF精製機を見せてくれた山田周生さん

ランクルに搭載した超小型BDF精製機を見せてくれた山田周生さん

小雨まじりの中を、遠野から六角牛山(ろっこうしさん)の北側を抜け、沿岸部の鵜住居(うのずまい)方面へ抜ける笛吹峠へ向かった。深い谷間を縫うようにヘアピンカーブが連続する難所だが、地元の主要道路だけにそこそこの交通量もある。しばらくすると徐々に道幅も狭くなり、途切れる事なく現れる対向車とのすれ違いに気を使いながら、立石山の麓、鵜住居川のせせらぎが響く美しい集落に到着した。

山田周生さんと久しぶりの再会

山田周生さんと久しぶりの再会

岩手に滞在中、どうしても会っておきたい人がいた。廃てんぷら油からバイオディーゼル燃料(BDF)を作る超小型オリジナル精製機を搭載したランドクルーザーで、2007年から360日を掛けて世界一周を成し遂げたフォトジャーナリストの山田周生さんだ。世界を周るなかで各地のエネルギー事情やエココンシャスな現場をリサーチするなど、チームACPが続けるエコミッションに通じるものもある。

山田さんは世界一周から帰国した後、2009年4月から引き続き日本一周の旅に出発し、2年が経とうとしていた2011年3月11日。居合わせていた岩手県で東日本大震災に遭遇した。ライフラインが途絶え、沿岸部の津波被害が想像を絶するものだった事は言うまでもない。ガソリンが手に入らず物資を運ぶこともままならない状況の中、廃油を集めて燃料を作り出し、自立するエネルギーで走るランドクルーザーの機動力を生かした支援活動をすぐに始める決意したという。余震が続く中、沿岸部へ物資を運ぶためにアイスバーンの笛吹峠を何度も行き来し、被災地では何が必要とされているかを自身のホームページ「バイオディーゼルアドベンチャー」で発信し続けた。当時のアーカイブを紐解くと、献身的に動き回り、可能な限り正確な情報を掲載しようと奔走する山田さんの姿が見て取れる。

復興の鍵は“エネルギーの自立”と語る

復興の鍵は“エネルギーの自立”と語る

BDFランドクルーザーは過去5年間、15万キロを100%廃油を精製した燃料で走破した実績がある。復興に必要なのは“エネルギー自立”と考えた山田さんは、ガソリン不足で立ち行かない支援の状況を何とかしようと、県内の支援団体や自治体にバイオディーゼルカー導入のアドバイスをする一方、津波にさらわれ土がむき出しの空き地を耕し菜の花を植える【菜の花大地復興プロジェクト】を始動させた。菜種から絞った油は食用としてはもちろん、明かりを灯し、クルマの燃料にもなる。そして菜の花の黄色は人々を元気にしてくれる。

広い畑で黙々と作業する若者たち

広い畑で黙々と作業する若者たち

当初は難色を示していた地元も、山田さんの地道な説得に応じるようになり【菜の花大地復興プロジェクト】は大きく動きだした。瓦礫に埋もれた町、過疎化で放置されていた畑、町をつなぐ沿道の花壇、地元の方々や沢山のボランティアの若者たちが植えた菜の花が、今年の春には山田さんの足跡を覆うように、黄色い花を結んだのである。

三陸の太陽をいっぱいに浴びた菜の花が結実し、9月中旬、ついに菜種の搾油が始まった。「明日も450本の油が届くんですよ。」と嬉しそうに語る山田さんの笑顔は菜の花のように輝いていた。正確な情報収集と冷静な判断、何より情熱に満ちた山田さんとそこに集まる若者たちが、今日も岩手の大地を耕し続けている。

訪問当日は収穫を終えた畑に豚肥を撒く作業に追われる中、時間を割いて会っていただき、ありがとうございました。復興地が【菜の花大地復興プロジェクト】でエネルギー自立の道を歩み出す事を祈っています。

BDFランクル“被災地支援プロジェクト”



カテゴリー: エコミッション2012,岩手県

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