10月 7日 2012

磐梯山を望む田園地帯を行く

磐梯山を望む田園地帯を行く

山形市内から羽州街道を南下、米沢南陽道路を経由して八谷街道(国道121号)を進むと、ひと際長い「大峠トンネル(全長3,940m)」の真中で県境を越えて福島県喜多方市に入る。「蔵とラーメンの町」喜多方はグリーンツーリズムも盛んな事から、全国に58あるガズームラにも選定されており、江戸末期から明治に建てられた本物の蔵に宿泊しながら、農作業や酪農、山菜採りなどが体験できる。

宿泊は五十嵐家の「江戸時代の蔵」

宿泊は五十嵐家の「江戸時代の蔵」

喜多方市中心部を抜け、3キロほど東へ行った先に、米どころ喜多方を象徴する田んぼに囲まれた「農泊 蔵の宿」がある。到着早々、にこやかに出迎えてくれたご主人に、プリウスPHVの充電をお願いし“プラグイン”していただいた。蔵の宿のご主人、五十嵐さんは江戸時代に建てられた蔵の内装をリフォームして民宿を営んでいる。さっそく蔵へ案内してもらうと、美しい漆喰の意匠や分厚い扉、太くて重厚な梁や柱など、存在感たっぷり。中へ入ってしばしお茶を頂いて休憩タイム。厚い土壁が外の気配を消し、包まれているような心地よさを感じる。

五十嵐さんは代々受け継いできた米作り農家だ。今は稲刈りの最盛期で、袋詰されたコシヒカリを軽トラックに積み込み出荷の準備に追われるのを見ていると、これからJAへ行くので一緒に行かないかと誘われた。

「この米は家で食べるのと知人に頼まれた分で出荷はしないんだけど、ここで穫れる米は全て放射線量を計る決まりになってるんですよ。面倒だけど安全が大事だから仕方ないですね。」と五十嵐さん。

米は全て放射線量検査を行なっていた

米は全て放射線量検査を行なっていた

テレビなどで観た事はあるが、実際の現場を見るまたとない機会にふたつ返事で同行を願いでた。最寄りのJAに着くと線量検査の真っ最中。吸引式アームで米袋を吸い上げてベルトコンベアに乗せ、金属ケースに収められた大掛かり装置に通されて行く。米袋には固有のバーコードがついていて、放射線量を計測して基準値以下なら安全を証明するシールが発行される仕組みだ。係の方に聞くと、今までに一度も基準値を上回った事は無いが、やはり風評被害が心配なので欠かせない作業だと答えてくれた。

話好きで明るい五十嵐さんご夫妻

話好きで明るい五十嵐さんご夫妻

蔵の宿へ戻ると大きなテーブルが、色とりどりの料理で埋め尽くされている。五十嵐さんご夫婦と我々メンバー4人の賑やかな夕食会が始まった。五十嵐さんの奥様が愛情込めて作ってくれた喜多方の郷土料理は、見るからに手間の掛かってそうな品々ばかり。味もボリュームも大満足の料理に舌鼓を打ちながら喜多方の地酒を酌み交わし、時には米を作る喜びや苦労、時には他愛のない話で明るいご夫妻との楽しい会話が続き、蔵の夜は更けていった。

「農泊若草物語」和綿の摘み取り体験

綿花摘み取り体験「農泊若草物語」さん

綿花摘み取り体験「農泊若草物語」さん

翌朝、蔵の宿を後にして、やはり農家民宿を営んでいる猪俣さん宅へ伺った。磐梯山を望む熊倉にある「農泊若草物語」では、めずらしい“和綿”の摘み取り体験ができるという。和綿とは江戸時代初期から栽培が定着し昭和20年代までは全国に約200種もあった日本在来の綿で、喜多方でも「会津綿」という和綿の品種で作った「会津木綿」が知られている。戦後の高度成長期を迎えた頃から安価な輸入綿に圧されて、ほとんど見かける事がなくなってしまった和綿だが、紡いだ糸や布には独特の弾力と厚みがあり、夏は湿気を吸い、冬は空気を含んで温かく、湿潤な日本の気候に適している事から、復活させようとする運動が全国に広がりつつある。さらに輸入綿の遺伝子組み換えや農薬過剰散布など多くの問題も人気を後押ししており、「農泊若草物語」の猪俣さんも和綿栽培に熱心に取り組んでいる。

コットンボールが爆ぜて綿花となる

コットンボールが爆ぜて綿花となる

和綿畑へ向かうと、固いコットンボールが幾つも爆ぜて、真っ白な綿花が朝日に輝いている。それを手に取ってみるとふわふわの感触がたまらない。棒状の綿花を指先でほぐすと、中にはコロッとした種が入っている。「この種を集めて“綿実油”を搾ることもできるんですよ」と明るく教えてくれる猪俣さんの話を聞きながら、収穫のお手伝いは続いた。

和綿栽培に使用する肥料は「ラーメンの町、喜多方」ならではの出汁ガラに米ぬかや菜種油などを混ぜて発酵させた有機肥料を使う徹底ぶり。何しろ手を掛けるほどにすくすくと育ってくれる和綿が大好きなのだという。

「収穫が済んでからの作業も大変ですよ。乾燥させた綿から種を取り除き、糸を紡いだり。これから長い冬の間にいっぱい糸を作って、色々なものを編みあげたいんです。もう、今からすごく楽しみです。これは私の“ライフワーク”です。」

照れながらも笑顔で話す猪俣さんの和綿に掛ける情熱を感じるひと時だった。

「蔵の宿」の五十嵐さん、綿花摘み取り体験をさせていただいた猪俣さん
大変お世話になりました。貴重な体験も沢山させていただき感謝いたします。

GazooMura喜多方「和綿の摘み取り体験」



カテゴリー: エコミッション2012,福島県

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