3日間滞在した小倉の町を離れ、北九州都市高速道路、九州自動車道、長崎自動車道を乗り継ぐルートで長崎県諫早市まで南下する。話題の高速道路無料化社会実験に重なる区間を通るのでは、と期待していたが、残念ながら今回はおあずけを喰らった。九州には実施されている区間が多いと聞いていたが、南西部に集中しているようなので旅の後半恩恵に授かるとしよう。
長崎自動車道のひときわ長いトンネルを抜けると一気に視界が開け、おだやかな大村湾が広がる。外洋とは運河のような狭い水路でわずかに繋がっているだけの極めて閉鎖性が高い海域のため、ひとたび汚染が進めば浄化は困難といわれている。カブトガニやスナメリなど希少種が生息し、沢山の人が力を合わせて保護活動に取り組んでいる「閉鎖性海域モデル」として、世界的にも注目されている。
諫早湾干拓堤防道路を通って島原半島へ渡ってみた。海岸線を進むと、きらめく有明海の干潟を背景に黄色い1両編成の島原鉄道が見え隠れして、何とも愛嬌のある姿をみせてくれた。プリウス PHVと抜きつ抜かれつを繰り返すうちに、島原の町が見えてきた。
傾斜のきついゴツゴツとしたシルエットの山が迫ってきた。有史以前から度々噴火を繰り返してきた雲仙普賢岳だ。1991年の噴火で甚大な被害を受けたという当時の報道を覚えている方も多いはずだ。この時にできた平成新山へ向かうと、噴火の跡は草木に覆いつくされ、小鳥がさえずるのどかな里山の景観。20年の年月は火山灰の上にわずかばかりだが確実に腐葉土を蓄積し、急斜面を緑色に変えていたのだ。
見晴らしの良い高台にネイチャーセンターという、雲仙普賢岳の情報展示館があったのでに立ち寄る事にした。突然の噴火に備えて避難用シェルターも完備したりっぱな施設だ。入り口では口蹄疫の感染拡大を防止するため、靴底を消毒する配慮がされていた。終息に向かっているとは言え、ここへ来るまでの道路沿いの牛舎や飼料を扱う倉庫にも、消毒用の石灰が大量に撒かれていた。1日も早い完全終息宣言を願うばかりだ。