愛知トヨタ 高辻営業所訪問

愛知トヨタ高辻営業所の女性スタッフが笑顔で迎えてくれた

愛知トヨタ高辻営業所の女性スタッフが笑顔で迎えてくれた

秋らしい爽やかな晴天の下、名古屋市街の中心部から高辻へ向かうと、週末の朝とあって普段は通勤で渋滞している大通りもクルマが疎らで、あっと言う間に今日の訪問先「愛知トヨタ 高辻営業所」へ到着した。開店まで1時間もあるが、すでに大勢のスタッフが慌ただしく連休イベントの準備に追われている。

名古屋高速3号線に面した高辻営業所は展示スペース、接客スペースともゆったりとした作りで、サービス工場、イベント用の別棟やオフィスを併設したボリューム感たっぷりの店舗だ。広々とした駐車スペースには、200V/100Vとも充電が可能なPHV用の配電ボックスが設けてあり、そこへプリウスPHVを停車させてもらった。

駐車場から店舗へ向かう来店客は、フェンダーにプラグを挿して充電しているプリウスPHVを見つけると、歩み寄って次世代のクルマに立寄り、「これがプリウスPHVですか?」「充電時間は? EVモードでの走行距離は?」などとスペックに関する質問が続く。九州から旅を続けて名古屋までの間、日を追うごとにプリウスPHVの認知度が上がっている事を実感する。

展示終了時刻が迫る頃、愛知トヨタ営業スタッフにも試乗してもらう事にした。特に女性スタッフからの希望者が多く、いちはやくプリウスPHVを体感しようと積極的だ。規定のコースを回る5分程の短い時間だが、静かでなめらかな走りに終始する感動を味わい、全員が満面の笑顔でドライバーズシートを後にするのが印象的だった。

豊川稲荷表参道の再生

「人と人」との繋がりがいかに偉大か

シャッターが閉まってひっそりとする商店街が1980年代後半から増加し、身近な都市問題としても注目されている。
日本三大稲荷として有名な愛知県にある豊川稲荷にある表参道にもその問題は見られるという。しかし、われわれが訪れると、そこにはひっそりとしているどころか、活気ある商店街の姿が見られた。
かつて豊川稲荷へは年間600万人もの参拝客が訪れていたが、ここ数年前では1/3となる200万人へと激減。そこで市は大掛かりな再開発案を掲げることになる。しかし、提案は出るものの、肝心のお金が出ない。なかなか動き出さない市と住民の仲は次第に悪化し、再開発はご破算となってしまうのである。しかし、動き出さなければなにも始まらない。そこで、できることからやり始めようと住民3人と市の職員1人、たった4人での再開発が7年前に始まった。なにかやろうにもなにから始めたらいいのか? そこで、昔バンドをやっていたから、「チンドン屋」なんてどうだろうかと言って、はじめの一歩が踏み出された。

愉快な音色でみんなワクワク。中小企業庁が選定した「がんばる商店街77選」に選ばれた

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持続性がなくてはエコではない

チンドン屋は月一回のペースで行なわれ、徐々に人が集まってきた。ある程度定着してきたら、今度は町並みがあまりキレイではないという問題があがった。その頃建築家でもありハーバード大学博士の「松島 史朗」さんが、国立豊橋技術大学へ着任。「なにやら建築のことをできる偉いお人が豊川に来たらしいぞ!」という噂が町には出始めた。再開発の話を聞いた松島教授は、「実験として2年間、一年に一軒の改修を行なう社会実験をしてみよう」ということで景観整備事業がスタート。さまざまな実験をした結果、売上が伸び来客数も増加、おせんべい屋さんには行列ができるほど。現在では市から補助金が出るまでになった。
驚くことに松島さんは自身の研究室の学生を参加させ、基本的なデザインを任せている。コストや責任、市や住民との細かい調整などは松島さんがコントロールしているが、基本は学生なのである。
「学校で勉強だけするのと違って、実際にここにはお客さんがいるんですよ。学生が自信満々に提案しても、こんなんじゃダメだよ。といった具合にひっくり返されたり、社会に出てから役立つものが多い。それらもあり、経済産業省の社会人基礎力育成グランプリで審査委員会特別賞やアカデミック奨励賞などをいただきました。ある学生は建築学会の大会で優秀賞をいただいたり、すべてが学生のためにも繋がるんです」
そして、この町おこしを継続的にやる場合、一軒だけお金をかけ過ぎてもダメなのだという。あの人は1000万円もかけていいものをつくったけれど,うちはそんなに出せないしやめようかなと、そこで計画は止まってしまう。無駄に新しいものを作っても、持続可能性がなくなるとエコにはならないのだ。いまあるものを使いながら、あるレンジの中でやり続ければ20軒は改装できるだろうといった具合に、いかに継続して反映していけるかが重要なのだ。

学生も住民も市も、みんなが対等

地域コミュニティのひとつとして、ギャラリーや喫茶として利用できる施設「いっぷく亭」では、学生も住民も市も、みんなが対等に意見交換を行なっている。毎週木曜日、午後8時から10時にかけて、堅苦しいこともなしにみんなが言いたいことを言う。
「チンドン屋」から始まった町おこし。いまでは毎月第4日曜日に、住民、学生、市の職員などがチンドン屋として商店街を盛り上げている。景観整備事業もこれまでに5軒、現在も2軒の改修に取り掛かっている。昭和の雑多なニオイ、ここにはそのニオイが戻ってきている。

プリウスPHV里帰り 豊田市訪問

あれほど寝苦しい夜が続き、猛暑だの酷暑だのと騒がれていたのが嘘のように、ひんやりとして半袖では心もとない朝だ。明け方に薄く広がっていた雲が厚みを増し、出発時刻が近づくにつれてパラパラと大粒の雨が落ちて来た。通りを行くクルマが水煙で霞む様子を眺めていると、数分間に何台ものプリウスが目の前を通り過ぎて行く。ここはプリウスPHVの生まれ故郷、トヨタ堤工場のある「クルマのまち、とよた」だ。

自然エネルギーが基本の充電システム

2009年に“環境モデル都市”に選定されたのをきっかけに、一歩先を行く環境対策に乗り出した豊田市の取り組みについて話を伺うため市庁舎へ出向くと、環境モデル都市推進課の阿久津さん、兵藤さん、交通政策課の愛知さんが笑顔で出迎えてくれた。挨拶もそこそこ、駐車場の一角にある鮮やかなグリーンが目を惹く駐車スペースへプリウスPHVを停車し、さっそく“電気くださ〜い!”。ルーフに太陽光発電パネルを備えた自然エネルギーによる充電ステーションが2機並び、すでに1機には別のプリウスPHVがプラグをさし込んで充電中だ。

あいにくの雨模様で太陽光発電は期待できないが、晴天時に発電された電気を蓄電池に蓄え、夜間にも充電できるシステムが完備されているので外部から給電の必要はない。蓄電池の容量も大きく、1基で2台のプリウスPHVを満タン可能だ。さらに市庁舎駐車場には同じシステムの充電ステーションが6基連なる場所もあり、市が保有している20台のプリウスPHVが次々と出入りしている光景に、数年先の日常を垣間見たような気がした。

ここを含め、市内には11カ所21基の充電ステーションを整備しているという。狭い範囲にこれほどの充電施設を備えている所は見当たらず、さすがは「クルマのまち」を名乗るだけの事はあると感心するばかりだ。ひと通り充電システムの説明を聞いてからエコミッション@2010プリウスPHVにプラグを“カチッ”。空っぽの車載リチウムイオン電池が満タンになるまでの間、市庁舎内へ案内された。

太陽光発電による充電施設に集まるプリウスPHV

太陽光発電による充電施設に集まるプリウスPHV

「環境モデル都市 とよた」が目指す次世代とは

市庁舎に入ると、美しい曲線基調の吹き抜けに掛かるエスカレータを上り、広い会議室へと案内された。楕円形の大きなテーブルを囲んで前述の担当者とチームACPメンバー、取材に来た中部経済新聞、中日新聞、読売新聞、毎日新聞の記者が同席し、「ハイブリッドシティとよた」の環境への取り組みについてお話を伺った。

知っての通り豊田市は世界有数の自動車産業都市だ。これまでは当たり前のように、市民の7割が交通手段を自動車に依存しており、渋滞や騒音、大気汚染などの原因となっていた。そこで、持続可能な交通モデル都市実現に向けて、基幹バスの低公害車化、エコドライブの推進、自転車道の整備など本格的な取り組みが始まっている。工場が立ち並ぶイメージが強い豊田市だが意外にも約7割が森林地帯。全国的な国産木材需要の低下や労働力の老齢化などで荒廃する放置森林を再生させようと「豊田市100年の森づくり」構想がスタート、間伐手遅れ林を一掃し、木材の安定供給を目指している、などなど。散乱する膨大な量のパズルを、ひとつひとつ組み立てるような地道な活動が官民一体となって続けられている。

日本が世界に誇る自動車産業の町である豊田市が懸命に取り組んでいる活動は「人と自然とクルマとの共生」のひとつの指針となる事は間違えないだろう。世界の環境問題を牽引する立役者として、どの都市よりも一歩先を進んでもらいたいと願うばかりだ。