大分県の山間にひっそりと佇む「安心院」。九州の人にはお馴染みの呼び名だろうが、ボクは“あじむ”と読む事ができなかった。この不思議な響きのムラには、いにしえの時を刻んだ風格と、もてなす心に満ちた宿がある。月のきれいな夜。ゆっくりと流れる時間が心地よい。
今回エコミッションが訪ねた安心院は、GAZOO.comがより選った全国に58あるガズームラのひとつだ。農家民泊で里山散策や農業体験などができる「グリーンツーリズム」発祥の地として知られ、スローフード、スローライフといった言葉が一般に知れ渡るきっかけを作った場所でもある。
自然やグルメ、サファリパークや史跡などなど、見どころ満載の安心院。まずはムラの玄関口、家族旅行村にある「グリーンツーリズム研究会」に立寄り、事務局長の安倍さんに話を伺った。
事務局長と聞いてご年配の方を想像していたが、安倍さんは25歳の好青年。テキパキと安心院の見どころをマップを片手に教えてくれる。宿泊先のチェックインまでの間、安倍さんのおすすめコースで安心院を満喫した。
まずは古民家の壁面にたくさんの鏝絵(こてえ)が残る日出周辺へ。腕のいい左官職人が多かった安心院周辺には100カ所以上の鏝絵が守り継がれている。鏝絵とは、漆喰壁に鏝(こて)を使ってレリーフを描き彩色を施した家屋装飾で、古いものは江戸後期のものもあり、そのほとんどの家は住まいとして使われ続けている。安心院のこて絵は仕事の緻密さよりもユーモラスな雰囲気で、自由な発想と左官職人の心意気を感じさせてくれる。
安心院にある日本最大級のサファリパーク「九州自然動物公園アフリカンサファリ」に出向いてみた。音も無く走るプリウスPHVに動物達がゆっくりと近づいてくる。EVモードでサファリパークを走れば、動物達の警戒心が薄れる効果もあるようだ。
安心院の町へ戻り「杜の中のワイナリー」に立ち寄った。盆地の気温差を活かして良質なぶどうを育て芳醇なワインを醸している「安心院葡萄酒工房」は、ギフトショップやレストランを併設した大型観光施設にもなっており、休日の今日は家族連れを中心とした観光客で大賑わいだ。
安心院で宿泊させていただく農家民泊は「百年乃家ときえだ」さん。明治28年に建てられたという母屋と離れを丁寧にリペアして、宿泊客を招いている。その重厚な造りとは裏腹に、どこかのんびりとしたやさしい時間が流れる素敵な空間だ。
ゆったりしたご主人と笑顔が魅力的な女将さんは本当に仲良しで、お二人が力を合わせて作ってくれる手料理は手間と愛情がたっぷり込められている。素朴だが手抜きのない味わいに“本当のスローフード”を感じる事ができた。
安心院の魅力を教えてくれたグリーンツーリズム研究会の安倍さん
宿泊させていただいた百年乃家ときえだの時枝さんご夫妻
お世話になりました。ありがとうございます。