熊本市街の目抜き通りをプリウスPHVで走っていると、ビルの陰から突然 “熊本城”が現れる。台風の影響だろうか、厚い曇に覆われたモノトーンの空に、加藤清正がこだわった漆黒の天守閣がくっきりと浮かぶ姿は威風堂々。さすがは名古屋城、姫路城と並び称される“日本三名城”の風格だ。
熊本の街を路面電車がひっきりなしに行き交う。普段、縁のない生活をしているため、これはチャンス!と、プリウスPHVを駐車場に預けて乗ってみることにした。料金はどこまで乗っても150円とリーズナブル。地元の人の多くはICカードを機械に
市電がゴトゴトと動き出すと、車窓から見える町並みは活気がある。買い物客でごった返すアーケード街を過ぎた頃、信号待ちで停車した市電の前方に広がるグリーンベルトが目に入った。
調べて見ると熊本市が軌道敷内に「市電緑のじゅうたん」と銘打ってシバを植え込む事業が行われているようだ。使われる芝はゴルフ場やグランドなどでお馴染みの一年を通じて緑を保つコウライシバを品種改良したもの。生育が早く、車両から受けるダメージにも強いのが特徴で、今日のような曇天でも、足元の鮮やかな緑が気持ちを晴れやかにしてくれる。
夏の暑い盛りに緑化した軌道敷内の温度を計ると、舗装に比べて17〜18度、中央分離帯では25度も下がり、ヒートアイランド現象の緩和に一役買っていることも実証されている。また、車輪の騒音対策(1日平均5デシベル減)、車両の進入防止にも有効なことから、国内では鹿児島県が初めて導入し、ここ熊本の他、長崎・富山など全国各地に広がりを見せている。
良い事ばかりに思える緑化事業だが課題もある。一番の問題は施工・維持管理に掛かるコスト。国の補助金や自治体からの補助などで経費を賄っているが、やはり限界がある。
この問題解決に一石を投じたのが熊本市が導入した「サポーター制度」だ。事業者や団体を対象としたオフィシャルサポーター、一般市民からは市民サポーターを募り、寄付金を集めている。
市民サポーターには、特製オリジナルデザインのTo熊カードと花の種を進呈したり、市内観光・文化施設の割引や芳名板への記載といった特典を設けるなどした結果、平成26年7月4日現在、オフィシャルサポーターが240件、市民サポーターは1,124件にまで膨らみ、グリーンベルトの延長が期待されている。
環境への取り組みとして、各地でこのような緑化事業が増え続けているが、自治体や大手企業だけに任せるのではなく、一般市民や地元企業など、直接関わる多くの人々が環境問題に意識を向け、手を取り合って行動に移すことで、さらに市街地の緑化が進んで行く事に期待したい。
秋季大祭に湧く馬の町 熊本「藤崎八旛宮」
路面電車に揺られ市街地へ入っていくと、大勢の人で通りが溢れかえっている。ちょうど今日は熊本市中央区に鎮座する藤崎八旛宮の秋季大祭。市街地の目抜き通りに繰り出した“夕随兵”の行列に出会うことができた。
あたりへ木霊する「どーかい!どーかい!」という威勢の良い掛け声、それに合わせて鼓動が高鳴り、藤崎八旛宮へ向かう行列の足が速まる。後ろに何百人もの勢子(せこ)と呼ばれる行列を引き連れ、掛け声に合わせて近づいてくるのは神社へ奉納する飾り馬だ。背中には鞍の代わりに男女の生殖器を象った「陽陰(ひのかげ)」と呼ばれる締め飾りを乗せ、のっしのっしと歩いてくる。時折機嫌を損ねて暴れ出しそうになるが、馬子の見事な手綱さばきで参道を進んで行く。
随兵頭が行列に向かい、「あいにくの雨なんて関係ない!みんなありがとう!」と叫び、最後は万歳三唱で閉める。老若男女が相まみれて一体になる姿を見て胸が熱くなる。失われつつある地域コミュニティーや社会との繋がりがこの地ではしっかり機能していることに気付かされ、これが本来あるべき姿なのではないかという思いが心に広がった。