セラピーの森、しかも神社の参道に植えられた杉の大木と聞いて、整備された公園のような森を想像していた。山麓のログハウスが建ち並ぶキレイなキャンプ場の入口に「水上村森林セラピー基地」のサインボードが立っている。内心“やはり…”と思いながら、勾配を増す坂道でアクセルを踏み込んだ直後、予想に反して周囲の木々はぐんぐん高くなり、森は深さを増して行く。プリウスPHVを降りて足を踏み入れた先には、荘厳な原生林が広がっていた。
都会の喧騒に疲れた時には近くの公園辺りの森林浴でリフレッシュ、という方も多いのではないだろうか。森には「フィトンチッド」と呼ばれる香りの成分が満ちている。森の木々は植物に有害な細菌などから身を守るために、この「フィトンチッド」を放出しているのだが、これが人にとって清々しい爽快感を与えると言われている。
今日の宿泊先「市房観光ホテル」オーナーの西さんは、森林セラピストの資格を持ち、市房山を訪れる観光客のフィールドガイドをしている。“森のスペシャリスト”西さんの穏やかな口調で、動植物の名前や生態などを解説してもらいながら原生林のフィトンチッドをたっぷり吸込むと、爽快感どころか、恍惚感を覚えるほど心の底からリラックスできる。
市房山麓の森は自然が温存されている九州でも数少ない本当の原生林。その一番の見どころは樹齢1,000年を越える20本の大杉だ。平安時代に建立されたという市房山神宮の参道の杉は、悠久の時を越えて周辺の原生林とひとつになり、やがて幹周8メートルに迫る巨木へと成長した20本の兄弟と共に森の主となっていた。苔むした幹に触れると底知れぬパワーが伝わり、長旅の疲れを一気に吹き飛ばしてくれたような気がする。
ここ水上村は、トヨタ自動車がナビゲートするGzoomura(ガスームラ)のひとつ。「GazooMura(ガズームラ)」とは、インターネットとクルマを通じて、マチで暮らす人々にムラでしか味わえない感動体験・出会いの輪を広げて日本を元気にしようという新しい取り組みだ。全国から選りすぐりの58カ所が登録されている。
市房の森林セラピーがいち押しだが、他にも大噴水のある市房湖や美しい田園と里山風景、100種類もの桜が見られる桜図鑑園など見どころいっぱいの水上村。アクセスには緩やかなアップダウンの美しい景色が楽しめる「フルーツロード」経由がおすすめ。これから秋が深まると見事な紅葉の里としても人気の「ガズームラ水上村」を訪れてみてはいかがだろう。