阿蘇の山々を望む肥後小国の高原に、はるばる北海道からやってきた2頭の「道産子」が暮らす小さな牧場がある。ここハヤノ牧場では、障害を持った子供達が馬と接し、身体的・精神的に適度な刺激を与えることで、目覚ましい改善が認められるという「ホースセラピー」が行なわれているというので、ハヤノ牧場の近所に住んでいる子供達に集まっていただき、実際にセラピーを体験してもらった。野鳥の声が響き渡るのどかな牧場で、子供達と道産子との賑やかで楽しい時間が流れて行く。
セラピー馬として北海道からやってきた道産子の「ニョッキ」と「オリーブ」を調教している、ホースセラピストの長さんにお話を伺った。
「北海道十勝で道産子と接しながらホースセラピストとしての技術を習得し、小国町へ戻りました。馬はとても賢い動物ですから、接する人の気持ちを敏感に察知します。馬の感情を考えて接することで、気持ちが通じる喜びが生まれます。温厚な性格で小柄な道産子は、子供が接するには最適な馬だと思いますよ。道産子と接する事で、自信や喜びを得られたら嬉しいですね。小国町のお隣、湯布院で観光スポットを巡る辻馬車を走らせて、馬を知り尽くしている佐藤さんの手を借りながら、準備を進めているところです。」
江戸時代中期に蝦夷地(現在の北海道)開拓を命ぜられた松前藩士が赴任する際、丈夫な農耕馬として知られる「南部馬」を連れて行った。やがて任が解けて内地へ帰る時に連れ帰らずに原野に放った馬が代を重ね「北海道和種馬」となった。「道産子」の愛称で知られるこの馬は、小柄で従順な性格。近年注目される「ホースセラピー」に最も適している日本在来馬である。
小柄な道産子とはいえ子供の目線からは見上げるような大きさに、始めは戸惑いながら恐るおそる撫でていた子供達だったが、優しい眼差しの馬達と触れ合うにつれ、次第に笑顔がこぼれていく。数時間後には、得意げに引き綱を持ち、馬たちに話しかけながら山道を歩く自信に満ちた姿が見られた。
現在、施設の拡充やセラピーカリキュラムの準備などを進めている最中だというが、小国町の大自然の中で、多くの子供達が道産子に触れ、笑顔いっぱいの経験ができる日は近い。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,九州
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