石廊崎、御前崎、潮岬と、太平洋に突き出た岬を結ぶような航路を進むため、一面の大海原に退屈することはない。春の日差しが降り注ぐ展望デッキで、もうすぐ見えてくるであろう、室戸岬を探していると、有明埠頭の待合室で見かけた若い親子連れに目が止まった。
衣類や日用品などを満載した福島ナンバーのクルマの持ち主、長澤さんは南相馬市で被災し、この沖縄行きフェリーに乗船した。不安と期待が入り交じる状況の中、沖縄では民間レベルでの被災者受け入れ態勢が整っていると知り、移住を決意したという。
長澤さんはサーフィンの指導者として、楽しく安全に遊べるビーチを作ることに情熱を傾け、南相馬市のNPO団体「ハッピーアイランドサーフィンツーリズム」を展開。ビーチクリーニングや海岸レスキュー隊の育成に取り組み、ジェットスキーのレスキュー方法をいち早く取り入れた事で全国的に知られた存在で、潮流の激しい場所にもかかわらず10年間事故の無いビーチを守り続けて来たという。
「沖縄に渡っても、これまでの経験を活かして、福島の復興の基盤をつくって行きたいと思っています。被災した地元の現状は、まだまだ厳しい状況ですが、それでも海を愛しています。ただ今は、子どものために遠くへ行きたい。南の海にはこころが安らぐ力もありますから。」
2歳になる東生(もとき)クンを抱っこしながら、やさしい眼差しでこう語ってくれた。
やがてい近づいて来た室戸岬を覆う緑のなかに、ぽつぽつと白く連なる桜並木を見つけた。
もうすぐ桜前線が東北地方にも春を告げる。
category: ECO-MISSION2011,沖縄
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