エコミッションを敢行するチームACPには様々な分野のプロフェッショナルがそろう。ラリードライバー、ナビゲーター、整備士からWEBやデジタル機器に精通した者までその分野は多岐にわたる。その中でも最も重要な役割の一つが旅、プロジェクトを記録することであり、カメラマンの果たす役割は大きい。その重要な任務に、絶妙なタイミングとアングルで見事こたえるのが、プロカメラマンの茅原田隊員だ。世界40カ国以上をめぐり、アフリカでのNGO活動やラリー参戦をしながら撮影をしてきたいわば冒険カメラマンである。
壮大な大自然や土煙をあげ豪快に走り抜けるラリー車を大迫力でとらえた写真の数々には誰もが驚きと感動を覚える。
しかし最近撮影された写真を見ると、壮大な光景とはうってかわって、ごく普通の生活を送る人々、日常の光景ばかりが目に入る。そこには非日常の風景の写真を見たときの驚きや衝撃はない。が、おもわず微笑んで、幸せな気分を感じる温かさがあるのだ。
なぜ撮影する対象が非日常から日常の光景へと変わっていったのか。
その理由は二つある。
一つは子供ができ、一緒に遊んでいるうちに日常の中にこそ本当の幸せや喜びがあるということに気付いたこと。
もう一つが東日本大震災を経験したことだ。
茅原田が住むのは仙台。海岸からは離れていたため津波に被害は直接はなかったものの震度7の揺れは容赦なく襲ってきた。街中にあるビルのガラスは割れ、崖はくずれ、ガス、水道、電気はストップ・・。
物流網が寸断され、物資も食料も手に入りにくくなったため、わずかに残った食料を販売する店には長蛇の列ができ、皆その日に食べるものを手に入れることで精一杯。余震に怯えながらうつろな表情で歩く人々には悲壮感が漂っていた。ガソリンも極端に不足し、道路を走る車も減った。
当たり前だと思っていた日常が一瞬にしてくずれた日だった。
ガソリンスタンドに行けば、ガソリンが入れられる。スーパーに行けば食材はなんでもそろう。蛇口をひねれば水が出る。家に帰れば家族がいる・・・・今まで何の疑問も持たずに普通にあったものが普通ではなくなった。普通の日常の光景が、いかに貴重で何事にも代えがたいことかというのを痛感させられたのだ。
震災からの復興にはライフラインの復旧、壊れた家屋の修理、という物理的な復旧、復興はもちろん大事である。
が本当の復興に必要なのは、街角にあふれる、「日常の豊かさ」であると茅原田は言う。何気ない笑顔、家族がいて笑いあえる小さな幸せ、子供たちの元気な姿、そういった光景が戻ってこそ始めて復興が進んできたといえるのではないだろうか。そしてそんな「日常の豊かさ」こそが、普段の生活ではなかなか気づくことが少ない、しかし一番大事で貴重なものなのかもしれない。
完全な復興はまだまだ時間はかかるが、震災直後の不安とうつろな表情であふれていた街角にも、笑顔と活気がもどってきている。日常の豊かさという視点で切り取られた写真からは目には見えないが確実な復興の足跡を感じるとることができるかもしれない。
category: ECO-MISSION2011,東北
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