道央自動車道の終点まで走り275号線(頓別国道)をさらに北上すると、頓別川が蛇行しながらオホーツク海に注ぐ河口部でオホーツクラインに合流する。ここ浜頓別町一帯の平野部には、ラムサール条約に登録され多くの渡り鳥が越冬にやって来る「クッチャロ湖」を中心に三日月沼や水路が点在する湿原が広がり、太古の大自然を色濃く残している。晩秋を迎え、繁茂する草原が黄金色に輝く大パノラマの向こうには、5基の風車がオホーツク海を吹き抜ける風を捉えて、ゆったりと回っていた。
Team ACPはエコミッション2001@ジャパンで、町民の力で実現した風車「はまかぜちゃん」が建設されたばかりのここ、浜頓別町を訪れている。あれから10年が過ぎ、エネルギー問題が熱を帯びる今こそ「はまかぜちゃん」その後の姿を見てみたいと再訪することにした。この風力発電事業の発起人で、浜頓別町森林組合の代表理事を務める鈴木さんを町役場に訪れると、懐かしい笑顔で出迎えてくれ、10年前の記憶が一気に蘇ってきた。
「はまかぜちゃん」誕生の道のりは、鈴木さんを始めとする町民の勇気とパワーを感じるエピソードに溢れている。核廃棄物処分場誘致を推進したい行政と、それに反対する町民との衝突に端を発し、それならばエネルギーを自分たちの手で作り出そうと風力発電建設を町民に呼びかけた。鈴木さんが始めた活動は大きなウネリとなって町を包み、人口4.000人足らずの浜頓別町にあって、家計を預かる主婦層が中心の200人余りの町民が“身銭を切って”これに参加、地元企業の協賛もあって1億3千万円の巨費を捻出する。それでも足りない数千万円を工面するべく運営法人を設立し電力売却費を担保に融資を受けて、町民の夢とお金を集めて作った風車「はまかぜちゃん」完成にこぎ着けたのである。ブレる事のない信念と、町民の強い結束力が結実したプロジェクトとして、今こそ見直して欲しい好事例だと痛感する。
鈴木さんとの再会を喜びながら挨拶を済ませると、役場のエントランスにプリウスPHVを停車して「はまかぜちゃん」がオホーツクの風で作った電気を分けていただいた。以前は簡素な佇まいの役場の建物だったと記憶していたが、現在は近代的で立派な庁舎に生まれ変わり、しっかりとしたアース付き3穴コンセントも完備していた。周りを見渡すと町並みも再開発を終えたばかりなのか、隅々まで整備が行き届き、10年前に見たプレハブ造りの多い印象とは大きく様変わりしていて、軽いカルチャーショックを覚えた。鈴木さんの話では、一次産業の振興策が順調に進み、とりわけ水産業が好調で、町には活気が溢れているとの事。長引く不況に喘ぐ町が多い中、風車建設を実現させた時と同じように、浜頓別を愛する住民全体が力を合わせて邁進する姿が形となって現れているに違いない。
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category: ECO-MISSION2011,北海道
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