6月 28日 2011

次の出会いを求めて走るプリウスPHV

次の出会いを求めて走るプリウスPHV

“プラグイン・ハイブリッドカー”と言えば、「コンセントから充電した電気で走り、電気が無くなるとガソリンで走るクルマ」というのが売りで、実際にリチウムイオンバッテリーを満タンにすると23.4kmを電気だけで走行できるため、通勤や買物など日常的な使われ方の大半を電気だけでカバーし、週末に遠出するようなケースではハイブリッドカーとして電池残量を気にせず、どこまででも走る事ができる。もちろんこれは素晴らしい進化といえるだろうが、プリウスPHVと現行プリウスとの違いは「充電できる」だけではない。

エコミッションでは現行プリウス(30系)とプリウスPHVが同じ条件で旅を続けている。フツーの人が日本中の様々な道路をごくフツーに乗った場合を想定しながら走っているので、特に燃費に気遣った走り方をしていない。暑い日にはエアコンもつけるし、高速道路では流れにのってアクセルを踏み込んだり、急勾配の林道を駆け上がる事もある。宿泊先の駐車場には充電設備がほとんど無いため、訪問先でコンセントがある場合に限り、短時間の充電をお願いしている程度で、今回の総走行距離3,660kmのうちコンセントからの電気で走行した距離は200kmにも満たないだろう。つまり「プラグイン」の恩恵をあまり受けずに全行程を走った訳だが、それでもプリウスPHVは現行プリウスに比べ、18.26%も低い燃費を記録した。これは140kgも重い事を考えると驚くような数値だ。一般発売後には、自宅や勤務先に充電設備(と言っても普通のアース付き100V、または単層200Vコンセント)を設け定期的に充電するという方が大半を占めるだろうから、その差は相当なものになることは容易に想像がつくというものだ。

大阪に到着したプリウスとプリウスPHV

大阪に到着したプリウスとプリウスPHV

この差はひとえにバッテリー容量に起因している。現行プリウスとプリウスPHVが並走しながら山を越えて隣町へ移動したとする。負荷が掛かる上り坂では当然エンジンが回り、140kgも重いプリウスPHVはより多くのガソリンを消費するだろう。2台は山の頂上を過ぎて下り坂に差掛かり、減速するたびに回生ブレーキで発生した電気をバッテリーへと蓄電しはじめる。しばらくすると現行プリウスのバッテリーは満タンになってしまうが、バッテリー容量が4倍あるプリウスPHVは坂を下り切るまで充電を続け、隣町へ到着するころにはたっぷりと電気が蓄えられていて、EVのアシストでより長い距離を走行できるという訳だ。つまり蓄えられた電気が、上り坂で消費されるガゾリンを上回るエネルギーとして駆動系に生かされているため、大きな燃費差となって現れたという事になる。

■中四国編におけるプリウスPHVと現行プリウス(30系)の燃費データ

プリウスPHV
走行距離  3,660 [km]
燃料使用量 160.4 [L]
燃費    22.8 [km/L]

現行プリウス(30系)
走行距離  3,668 [km]
燃料使用量 189.7 [L]
燃費    19.3 [km/L]

今回の旅でも多様な路面状況の中、2台の燃費を計測してみたが結果は一目瞭然。プリウスPHV はバッテリー容量増よって燃費向上の恩恵を受けており、その差は明らかだ。仮にコンセントから全く充電せずに走行した場合でも、現行プリウスより15%以上の好燃費を得る事ができるという予想以上のデータとなった。プリウスPHVは、単にコンセントで充電できるプリウスではなく「走る発電所+大容量蓄電装置」。クルマや住宅、さらには町とエネルギーを共有する「スマートグリッド」の一端をいち早く味わえる1台なのである。

■田園風景を走るプリウスPHVオンボードカメラ

■次回は走行性能の要、プリウスPHVに標準装着される
 GOODYEARエコタイヤ「GT3」についてレポートします。お楽しみに。


category: ECO-MISSION2011,中国,四国,近畿

トラックバック Uri


6件のコメント.

  • waka より:

    興味深く読ませていただきました。現在、所有している20型プリウスでも、1000km以上の長距離などでは、いつも、難なく30km以上の燃費を記録できています。プリウスPHVのHVの状態の際の燃費や機能が非常に気になっているところなのですが、15%以上の燃費UPだったということに、少し気をよく(笑)してしまっていますが、今後もこういった「データ」が、詳細にみたいところです。特に燃費を気にする訳は、超長距離で、たくさんのガソリンを燃焼させてしまうことへの、ある種の「言い訳」なのかもしれません・・

    • wakaさま
      コメントありがとうございます。
      30km/Lとは好燃費ですね!すばらしいです。
      20系は2005、2006年モンゴルで開催されたラリー参戦以降、北京〜パリ、南米大陸縦走と4万キロ近く走りましたが、厳しい路面状況にも関わらずノントラブルで走り抜いてくれました。本当に良くできたクルマだと思います。

      今後も燃費データを収集/発表してまいりますのでご期待ください。
      8月初旬より旅を再開予定です。

      • waka より:

        スタッフの方々は、出会いを求めて、楽しくツーリングされておられるようでが、私は、プリウスと”出会って”7年、本当に幸せでした。自然には、歩かなくては、見えない世界があるように、ツーリングなどでも、プリウスの静けさや、電動モードなどの、ゆったりツーリングがなければ、見つけられなかっただろう、道路端のすばらしい自然との出会いも何度もありました。実は、ここの、スタッフの記事を読んで、次の求愛は、プリウスPHVにしよう!!と、心がワクワクしています。

        今年の六月、鳥海山から下る際に、20型では、何度も過充電になりすぎたので、電気ももったないし、山の空気や、森林浴を楽しむために、わざわざ時間と、エネルギーを消費するために停車していたぐらいです。

        しかし、「バッテリー容量が4倍あるプリウスPHVは坂を下り切るまで充電を続け、隣町へ到着するころにはたっぷりと電気が蓄えられていて、EVモードでより長い距離を走行できるという訳だ」・・などとありますが、現在のPHVでは、EVモードがないように聞いておりますが、どちらなのでしょうか? これによって、片想いですが、愛情の大きさが、微妙に変化してしまうのですが・・(笑)

  • wakaさま

    ご指摘の通り、現状のプリウスPHVには任意にEVモードに切り替える機能はありませんね。
    正確には「EVのアシスト」と言うべきでした。訂正させてください。

    EV/PHVモードセレクトスイッチが装備されると良いですね。
    増大したバッテリーに蓄えられた電気エネルギーによって燃料消費が抑えられた事には変わりありませんが、wakaさんのおっしゃるように自然の中を走る時には、なるべくローインパクトでありたいという思いは、プリウスに乗っていると一層強く感じられますから。

    • waka より:

      ありがとうござました。「自転車のような乗り物」ならば、森の梢のささやきや、路地からの物音や匂などを楽しみながら、移動でき、私にとっては「理想の乗り物」なのです。プリウスPHVは、正にその、理想に限りなく近い、快適な自動車であってほしい。と願っています。海や空では活躍できないだけでしょう。

      白神の森にも行かれたそうですが、私も、津軽富士~日本海側に抜ける県道で、ブナなどに深く覆われた道路を、通り抜けました。春蝉と、鳥のさえずりが、深いジャングルにでも、迷い込んだように、いつまでもずっと、大きな声で、追いかけてきていました。そのような、音にずっと囲まれた続けた経験は初めてのことでした。

      それこそ、何十万キロも走ったので、知りつくしたかのように、錯覚していたこの日本でさえも、知っているかもしれないのは、まだまだで、それとてごく一部。がんばります!? (笑)

  • 風じ より:

    こんにちは
    とても興味ある記事で、しっかり読ませていただきました。
    プリウス20系に乗っていますが、先ごろPHVを仮予約してきました。
    現行の30系より(L)燃費が良いのには驚きます。
    現在、家のガレージに200Vと100Vのコンセントを付けて、早く欲しいなと思っている次第です。
    一般に販売されるPHVのタイヤはやはりGT3になるのでしょうか?現時点で、軽量ホイールには変える予定なのですが、最近は15インチのホイールは、鍛造は少なくなってしまい、今のうちに確保しておこうか迷っています。
    また、色々な記事を楽しみにしています。