近畿



6月 18日 2011

エコミッションが日本全国を旅して2年目に入る。各地で環境保全に取り組む多くの場所を訪ね、たくさんの素晴らしい出会いを積み重ねて来た。町から町へと移動を続けるために走った道路は数知れず、カーナビの履歴は網の目のように日本地図を彩っている。考えてみると当然の事だが、未踏の地を冒険するような挑戦でもない限り「道路」がなければクルマは走る事ができない。

飛鳥から平城京朱雀門へ続く日本最古の国道

飛鳥から平城京朱雀門へ続く日本最古の国道

勇気を持って原野を踏みしめた足跡が、やがて一本の細い帯になり、利用する者が多い程、さらに太い道へと変わって行く。車輪の付いた乗物が発明されると轍が刻まれ、さらに利便性を求めて橋や切り通しが造られて現在のような道路へと進化する。一方、計画的に建設される道路は出来る限り最短距離を結ぶルートを、段階を踏むことなく労力を集中して一気に造られる。

飛鳥時代後期、朝廷の命によって一本の道路が建設された。飛鳥から平城京へと続く「下ツ道」と呼ばれる日本最古の国道だ。全長30km、ほぼ一直線に延びるルートは大極殿へ向かう「朱雀大路」に繋がり、京内では全幅74m(現在の19車線分)にも及ぶ。この道路を使って遷都が成され、7万を越える天平人が暮らす都が誕生し、平城京74年間の歴史が刻まれることになる。途方も無く広い道幅は往来のためだけでなく、遣唐使によって交流が深まった海外からの使者を招く際の儀礼に使われたと考えられている。

■日本最古の国道について語る「なら・観光ボランティアガイドの会」仲西さん

あいにく雨模様の平城京訪問となったが、遣唐使による大陸との交易の様子を展示する「平城京歴史館」を、地元の子供たちと一緒に観覧した。平城京から派遣された若者達が大陸の文化に触れる様を、「遷都1300年祭」の公式マスコットキャラクターとして人気の「せんとくん」のアニメ映画で紹介したり、復元された遣唐使船が展示されるなど、楽しみながら学べる内容で、本物の「せんとくん」登場には子供たちも大喜び。印象深い訪問となった。

子供たちにも人気のせんとくん

子供たちにも人気のせんとくん

■平城遷都1300年祭マスコットキャラクター「せんとくん」登場

降りしきる雨の中、朱雀門から延びる道路を眺めていると、いにしえの天平人が行き交う姿が思い浮かぶ。エコミッションはまだ見ぬ道路を紡ぐようにカーナビの履歴に収めながら、旅を続けていく。

遥か飛鳥へと続く道

遥か飛鳥へと続く道


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6月 17日 2011

奈良市街を一望できる若草山は鮮やかな緑の芝に覆われ、鹿の群れがゆったりと草を食む姿に癒される場所として、観光客や地元の家族連れに人気のスポットだ。食害による森林破壊など各地で鹿の被害が叫ばれる中、千年以上前から神鹿と呼ばれて大切にされてきた奈良の鹿は、世界中で唯一、人と共生する鹿として国の天然記念物に指定されており、人に慣れているとはいえ歴とした野生動物だ。

若草山の鹿たち

若草山の鹿たち

若草山を覆う日本在来の芝「ノシバ」は種皮が非常に硬く、水分が内部に侵入しにくい堅実種子と呼ばれ、そのままでは発芽しにくい。しかし、鹿が芝とともに食べた種子は消化されずに他の場所へ移動し、排泄物の湿度で種子の皮が柔らかくなって発芽が促進され、テリトリーを広げる事ができるという。また、冬に休眠状態に入り地上部分が枯れてしまうノシバは、侵入してきた他の植物に生存を脅かされるが、発芽しても鹿が食べてくれるのでノシバが守られるという密接な関係にある。奈良の鹿は、人やノシバなど周囲の環境と共生を続けながら、長い歴史を生き抜いてきた希有な存在と言えるだろう。

鹿救援隊

鹿救援隊

歴史と伝統の町奈良は先進的な環境企業の町としても知られ、太陽光パネル製造などの生産拠点でもある。世界中から観光客が訪れる奈良が、積極的に自然エネルギーを取り入れる姿勢を示す事は、環境立国日本をアピールする上でも好ましい事だと思う。

太陽を自動追尾するソーラー発電

太陽を自動追尾するソーラー発電

次世代のクルマとして来年早々にも一般販売が開始されるトヨタプリウスPHVは、通常の自動車として充分な魅力を持ちながらも、移動できる小型発電所と高性能バッテリーとしての一面を持ち合わせ、電気エネルギーをクルマや住宅、さらには町と共有しながら有効活用する「スマートグリッド」に大いに貢献する全く新しい存在として注目されている。

トヨタ部品奈良共販の皆さん

トヨタ部品奈良共販の皆さん

そこで、自然と共生しながら歴史と伝統を守るとともに環境最先端の町でもある奈良で、プリウスPHVを取り扱う予定のトヨタディーラーの方々にお越しいただき「スマートグリッド」を踏まえた新しいクルマの魅力を伝えるため、トヨタ部品奈良共販本社を訪れた。田園風景が残る街道沿いにあるトヨタ部品奈良共販は、県下に3つの拠点を構え、販売店に車両部品などを安定供給する重要な役割を担っている。到着後、プリウスPHV最大の特長である充電を開始し、後に予定されている試乗会に備える。

明るくたのしく“プラグイン”

明るくたのしく“プラグイン”

講演会場に集まっていただいたトヨタディラーさん、グッドイヤー西日本営業部の方々に、チームACPがこれまで巡ってきた世界の「環境最前線」や「スマートグリッド構想」を交えながら、プリウスPHVの魅力を時間の許す限り話す事ができた。

講演後は、ほとんどの方が未体験だという試乗会がスタートし、講演会に参加された多くの方々にプリウスPHVのハンドルを握っていただいた。滑らかな加速感や静粛性に驚かれ、一般販売が待ち遠しいとの嬉しい反応。またスマートグリッドの一端を担う役割も知り、震災でインフラが寸断した際の活用方法が1日も早く確立する事を願う声も聞かれた。

従来のクルマとは全く違う一面を兼ね備えた多くのプリウスPHVが、東大寺や平城京をバックに颯爽と駆け抜ける姿を目にする日も近い。


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6月 16日 2011

現代のノコギリクワガタ

現代のノコギリクワガタ

奈良県御所市の秋津遺跡で、縄文時代後半(2800年~2500年前)のものとみられるノコギリクワガタがほぼ完全な形で出土し、話題となっている。発見されたのは、6.3㎝のオスのクワガタで、小川の側に生えたアカガシの根本付近の泥に埋もれていた。アカガシの他にもクヌギやコナラなどの食用の実がなる樹木の雑木林が小川の南岸で見つかり、北側には約1000点もの縄文土器の破片なども発見されているという。折角奈良へ滞在しているので実物を見てみたいと思い、発見・調査している「奈良県立橿原考古学研究所」に問い合わせてみたが、DNA検査で現代のノコギリクワガタと比較するなど、研究中で見る事は出来ないとの残念な回答。「橿原市昆虫館」の学芸員さんが実物を見ているというので、訪ねて話を伺う事にした。

昆虫の歴史が解る展示コーナー

昆虫の歴史が解る展示コーナー

橿原市昆虫館は「見て・聞いて・触って・感じる昆虫館」とのコンセプトを掲げ、太古の虫から身近な虫まで、標本・生体を多数展示しており、子供から大人まで楽しみながら虫の世界を知る事ができる。もちろん現代のノコギリクワガタも飼育展示している。学芸員の中谷さんに今回発見された実物を見た時の感想を伺った。

「まるで昨日まで生きていたような保存状態でした。恐らく、生きているうちに大量の土砂が被って真空状態になり、バクテリアが分解する事なく奇跡的に今まで保存されていたのでしょう。現代の子供たちにもマスコット的なクワガタやカブトムシなどの甲虫類は、もしかしたら縄文の子供たちにも人気があったかも知れません。ある種の甲虫の幼虫は食用にもなっていましたので、芋虫から変態する事も知っていたはずですから、縄文人の長老のような知恵者からノコギリクワガタの幼虫だと教えられ、飼育しながらサナギになり、成虫に変わる姿にワクワクしたかも知れませんね。」

一匹の昆虫の発見を通して太古へと思いを馳せる中谷さんは、多くの子供たちに昆虫の魅力を知ってもらおうと、今日も虫たちと真正面から向き合っている。

■奈良県立橿原考古学研究所様から使用を承諾していただいた、2800年前のノコギリクワガタの画像

2800年前のノコギリクワガタが発掘された秋津遺跡

2800年前のノコギリクワガタが発掘された秋津遺跡

木片とともに土砂に埋まった状態で発見された

木片とともに土砂に埋まった状態で発見された

昨日まで生きていたような保存状態

昨日まで生きていたような保存状態


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