前回の訪問は、まだ一般販売されていなかった初期型プリウスPHVで日本各地を巡り始めた当初だから、もう4年前になる。久しぶりに訪れた豊田市役所は、1年半前に豊田市新東庁舎が完成して充電ステーションがあった駐車場周辺も様変わりしていた。
駐車場のゲートを入りPHV/EV専用の駐車スペースへ向かった。以前とは違うレイアウトになっていたが、充電スタンドの鮮やかなグリーンは遠くからでもすぐにそれと分かる。通りからも目立つ場所に設けられた充電スタンドでは、フロント左サイドに充電口がある役所の公用車と思しき初期型プリウスPHV数台が充電中だ。空いたスペースにエコミッション号を停め、プラグを差し込んで充電開始。新旧プリウスPHVが仲良く充電する光景が嬉しかった。
充電完了を待つ間、都市整備部交通政策課で市内の充電スタンドの設置状況を聞いて見た。4年前は11カ所21基と言っていたが現在はどうなっているのか尋ねると、市内にある充電スタンドの一覧が載った「自然エネルギーでクルマが走るまち」という印刷物を提供していただいた。
それによると、設置場所は役所の支所や駅周辺を中心に、21カ所31基と確実に増えている事を知り、充電スタンドの“はしご”を体験する事にした。すべての施設が直線距離で10キロ以内に設置されているので、上手く活用すれば全くガソリンを使わずに市内を巡回できる。もちろん充電は無料!!プリウスPHVと時間の余裕さえあれば、悠々と市内観光だって出来るという訳だ。
エネルギーの“地産地消”を謳う豊田市は、ルーフに太陽光発電パネルを備えた充電スタンドの増設を進めている。さらに晴天時に発電された電気は、併設された蓄電池に蓄えられ、雨天や夜間にも充電できるシステムが完備されているので外部から給電の必要はない。まさにエネルギーの“地産地消”充電スタンドだ。
200Vの充電スタンドでは約90分でプリウスPHVのバッテリーが満タンになる。市役所で30分、約1/3充電したところで、一覧表を頼りに次の充電スタンドへ移動した。
豊田市駅西口交番となりにあるのは、やはり太陽光パネルと蓄電池のある3基の充電スタンドだ。早速プラグインして充電開始。さらに次の“はしご”先を少し離れた「藤岡支所充電スタンド」に決めたため、満充電までここで待機する事にした。
豊田市駅再開発で生まれ変わった大通りの華やかさとは対照的に、駅前とはいえ旧路地を往く人はまばらで、何だかゆったりと時間が流れている。鼻をくすぐる珈琲の香りに釣られて通りの反対側に目をやると、軽ワンボックスを改造した移動カフェがオープン前の店先を借りて営業している。せっかくなのでコーヒーでも飲みながら時間を潰そうとリアゲートから覗き込むと、思いもよらない若いお嬢さんが“いらっしゃいませ”と素敵な笑顔で迎えてくれた。
以前は横浜で移動カフェをやっていたが、独立を期に出身地戻って営業しているという増田 希さん。プリウスPHVが横浜ナンバーだったので親近感があると言って、おじさんたちの戯言にお付き合いいただいた。
好奇心いっぱいの彼女はプリウスPHVにも関心があるようなので、美味しいコーヒーとやさしい笑顔のお礼にと、プリウスPHVから取り出した電気でLED照明を点けて見せると、真ん丸な目をさらに丸くして驚いていた。こんな素敵なお嬢さんがプリウスPHVの電気を使って“PHVカフェ”をやったら評判になるに違いないと思った。
豊田市駅西口の移動カフェ「Cafebus non」オススメです。
充電もそろそろ終わりに近づいた頃、隣のブースにアウトランダーPHEVが入って来た。若い家族連れが降りてきてプラグイン。クルマは違えど同じPHV同士、会釈を交わすとお互いに思わず笑みがこぼれる。
4年前に市役所を訪れた時の、環境モデル都市推進課、兵藤さんの言葉が思い出される。
「あと何年かしたら、プラグインしてクルマに乗るのが当たり前になっているんじゃないですか。その時のために充電スタンドを増やして行きたいと思っているんですよ。」
“その時”がやって来た事を実感した。
最近はプリウスPHVに遭遇する機会も増え、各メーカーからも続々とPHV車がリリースされ始めている。豊田市のようなインフラ整備が全国に広がる事を期待したい。
充電ステーションを巡るプチツアーを楽しんだエコミッションが最後に立ち寄った充電スタンド藤岡支所でパーク&ライドの路線バスを見かけた。パーク&ライドとは、徒歩圏内に公共交通機関がない方でも利用できるように、パーキングスペースと駅やバス停留所を組み合わせたシステムのこと。市街地の渋滞の緩和、排気ガスによる大気汚染の軽減、二酸化炭素排出量の削減などに効果が期待されている。
2009年に“環境モデル都市”に選定され、常に一歩先を行く「ハイブリッドシティとよた」は、環境対策の牽引役として、さらに大きな進化を遂げていた。