毎年夏になるとプールや海で遊ぶ子供たちの水難事故が報道される。ボク自身も子供たちがまだ幼かった頃にプールへ遊びに行った時の事、夏休みで賑わうプールサイドの喧騒が途切れ、沈んでいる我が子を見つけた母親の悲鳴が響いた。その時、たまたま居合わせた消防レスキュー隊のお父さんがいち早く人工呼吸と心臓マッサージを施し、一命を取りとめるのを目の当たりにした経験がある。こんな生死を分ける場面に遭遇しないために注意を払って楽しむのが先決だろうが、万が一の心構えとして救命救急の方法を体験しておく事は、慌てずに冷静な行動を取るためにも必要だろう。最近ではプールや海水浴場だけでなく、駅、役所、大型商業施設などにAED(自動体外式除細動器)が設置され、多くの命が救われているというが、これも全く初めて扱うのでは一刻を争う緊急時に対応できるのか不安が残る。そこで、消防署などで救命措置を体験してもらうためのプログラムが用意され、参加する方が増えているという。
埼玉県白岡町消防団第七分団が夏休みの親子を対象にした“救命救急出前講習”を行うというので参加させていただいた。849年(嘉祥2年)の創建と伝えられる白岡八幡宮がその開催場所だ。
元旦には初詣子に集い、婚礼や初参りなど、生涯の節目を通じて代々親しまれて来た町の象徴“白岡八幡宮”は、ここを中心に地域の繋がりを深めてきた心の拠り所でもある。
救命救急出前講習を行う白岡町消防団第七分団の団長佐藤さんの挨拶で今日の催しが始まった。神社に古くから伝えられる「巫女の舞」の演舞、消防署のポンプ車による放水体験、エコミッションの参加など盛りだくさん。白岡町の皆さんも大勢集まり、時期外れの祭りのような賑わいを見せていた。社務所で行われた救命救急出前講習には夏休み中の親子が多数参加し、人工呼吸や心臓マッサージ、AEDの使い方をダミー人形を相手に体験した。始めは戸惑っていた子供たちだったが、消防団の皆さんの懇切丁寧な指導で少しずつ上達していた。繰り返し体験する事で万一の時にうまく対応できるようになるという事で、白岡町消防団第七分団では今後もこのような場を設けて行く予定だという。
核家族化が進む都市部を中心に、氏神様に集うことで培われてきた地域の繋がりが忘れ去られようとしているが、災害や万が一の緊急時に頼れるのは、ここ白岡八幡宮に象徴されるようなコミュニティーの存在だけかも知れない。今年3月の東日本大震災の時、目に焼き付いた災害の映像や被災者の叫びが、地域の繋がりの大切さを再認識させてくれたような気がする。沖縄からスタートしたエコミッションでは、日本各地で被災地へ向けたメッセージを頂いてきた。その温かい言葉を見つめていると、白岡町のような地域社会が日本中に広がっているのかも知れないと思えてくる。日本全体が優しさに包まれたひとつの大きなコミュニティーに生まれ変わる事を願いながら、埼玉を後にした。
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