6月 17日 2011

奈良市街を一望できる若草山は鮮やかな緑の芝に覆われ、鹿の群れがゆったりと草を食む姿に癒される場所として、観光客や地元の家族連れに人気のスポットだ。食害による森林破壊など各地で鹿の被害が叫ばれる中、千年以上前から神鹿と呼ばれて大切にされてきた奈良の鹿は、世界中で唯一、人と共生する鹿として国の天然記念物に指定されており、人に慣れているとはいえ歴とした野生動物だ。

若草山の鹿たち

若草山の鹿たち

若草山を覆う日本在来の芝「ノシバ」は種皮が非常に硬く、水分が内部に侵入しにくい堅実種子と呼ばれ、そのままでは発芽しにくい。しかし、鹿が芝とともに食べた種子は消化されずに他の場所へ移動し、排泄物の湿度で種子の皮が柔らかくなって発芽が促進され、テリトリーを広げる事ができるという。また、冬に休眠状態に入り地上部分が枯れてしまうノシバは、侵入してきた他の植物に生存を脅かされるが、発芽しても鹿が食べてくれるのでノシバが守られるという密接な関係にある。奈良の鹿は、人やノシバなど周囲の環境と共生を続けながら、長い歴史を生き抜いてきた希有な存在と言えるだろう。

鹿救援隊

鹿救援隊

歴史と伝統の町奈良は先進的な環境企業の町としても知られ、太陽光パネル製造などの生産拠点でもある。世界中から観光客が訪れる奈良が、積極的に自然エネルギーを取り入れる姿勢を示す事は、環境立国日本をアピールする上でも好ましい事だと思う。

太陽を自動追尾するソーラー発電

太陽を自動追尾するソーラー発電

次世代のクルマとして来年早々にも一般販売が開始されるトヨタプリウスPHVは、通常の自動車として充分な魅力を持ちながらも、移動できる小型発電所と高性能バッテリーとしての一面を持ち合わせ、電気エネルギーをクルマや住宅、さらには町と共有しながら有効活用する「スマートグリッド」に大いに貢献する全く新しい存在として注目されている。

トヨタ部品奈良共販の皆さん

トヨタ部品奈良共販の皆さん

そこで、自然と共生しながら歴史と伝統を守るとともに環境最先端の町でもある奈良で、プリウスPHVを取り扱う予定のトヨタディーラーの方々にお越しいただき「スマートグリッド」を踏まえた新しいクルマの魅力を伝えるため、トヨタ部品奈良共販本社を訪れた。田園風景が残る街道沿いにあるトヨタ部品奈良共販は、県下に3つの拠点を構え、販売店に車両部品などを安定供給する重要な役割を担っている。到着後、プリウスPHV最大の特長である充電を開始し、後に予定されている試乗会に備える。

明るくたのしく“プラグイン”

明るくたのしく“プラグイン”

講演会場に集まっていただいたトヨタディラーさん、グッドイヤー西日本営業部の方々に、チームACPがこれまで巡ってきた世界の「環境最前線」や「スマートグリッド構想」を交えながら、プリウスPHVの魅力を時間の許す限り話す事ができた。

講演後は、ほとんどの方が未体験だという試乗会がスタートし、講演会に参加された多くの方々にプリウスPHVのハンドルを握っていただいた。滑らかな加速感や静粛性に驚かれ、一般販売が待ち遠しいとの嬉しい反応。またスマートグリッドの一端を担う役割も知り、震災でインフラが寸断した際の活用方法が1日も早く確立する事を願う声も聞かれた。

従来のクルマとは全く違う一面を兼ね備えた多くのプリウスPHVが、東大寺や平城京をバックに颯爽と駆け抜ける姿を目にする日も近い。

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6月 16日 2011

現代のノコギリクワガタ

現代のノコギリクワガタ

奈良県御所市の秋津遺跡で、縄文時代後半(2800年~2500年前)のものとみられるノコギリクワガタがほぼ完全な形で出土し、話題となっている。発見されたのは、6.3㎝のオスのクワガタで、小川の側に生えたアカガシの根本付近の泥に埋もれていた。アカガシの他にもクヌギやコナラなどの食用の実がなる樹木の雑木林が小川の南岸で見つかり、北側には約1000点もの縄文土器の破片なども発見されているという。折角奈良へ滞在しているので実物を見てみたいと思い、発見・調査している「奈良県立橿原考古学研究所」に問い合わせてみたが、DNA検査で現代のノコギリクワガタと比較するなど、研究中で見る事は出来ないとの残念な回答。「橿原市昆虫館」の学芸員さんが実物を見ているというので、訪ねて話を伺う事にした。

昆虫の歴史が解る展示コーナー

昆虫の歴史が解る展示コーナー

橿原市昆虫館は「見て・聞いて・触って・感じる昆虫館」とのコンセプトを掲げ、太古の虫から身近な虫まで、標本・生体を多数展示しており、子供から大人まで楽しみながら虫の世界を知る事ができる。もちろん現代のノコギリクワガタも飼育展示している。学芸員の中谷さんに今回発見された実物を見た時の感想を伺った。

「まるで昨日まで生きていたような保存状態でした。恐らく、生きているうちに大量の土砂が被って真空状態になり、バクテリアが分解する事なく奇跡的に今まで保存されていたのでしょう。現代の子供たちにもマスコット的なクワガタやカブトムシなどの甲虫類は、もしかしたら縄文の子供たちにも人気があったかも知れません。ある種の甲虫の幼虫は食用にもなっていましたので、芋虫から変態する事も知っていたはずですから、縄文人の長老のような知恵者からノコギリクワガタの幼虫だと教えられ、飼育しながらサナギになり、成虫に変わる姿にワクワクしたかも知れませんね。」

一匹の昆虫の発見を通して太古へと思いを馳せる中谷さんは、多くの子供たちに昆虫の魅力を知ってもらおうと、今日も虫たちと真正面から向き合っている。

■奈良県立橿原考古学研究所様から使用を承諾していただいた、2800年前のノコギリクワガタの画像

2800年前のノコギリクワガタが発掘された秋津遺跡

2800年前のノコギリクワガタが発掘された秋津遺跡

木片とともに土砂に埋まった状態で発見された

木片とともに土砂に埋まった状態で発見された

昨日まで生きていたような保存状態

昨日まで生きていたような保存状態

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6月 15日 2011

モンドセレクション金賞受賞「ほんまや」

モンドセレクション金賞受賞「ほんまや」

大阪市水道局が「水都大阪2009」の開催を記念して販売を開始した、水道水のペットボトル飲料「ほんまや」が、5月にベルギーで開催された「モンドセレクション第50回ワールドセレクション」において金賞を受賞したという報道を耳にし、「ほんまや」の美味しさの秘密を知るため大阪市水道記念館を訪れた。

大阪市水道記念館に到着

大阪市水道記念館に到着

赤煉瓦と御影石の美しい外観の歴史的建造物「水道記念館」は大正3年に稼働を始めた「旧第1配水ポンプ場」を保存活用したもので、大阪市の水道の歴史について楽しみながら学ぶことができる科学館として人気の施設だ。今日も社会科見学の小学生や家族連れなどが訪れ、ゲーム感覚で体験しながら学べる展示内容に歓声を上げながら水道について学んでいた。また、日本動物園水族館協会加盟の淡水魚水族館として、琵琶湖・淀川水系の淡水魚、貝類を飼育・展示もしており、大阪の水道を取り巻く事象を幅広く知る事ができる。

淀川のいきもの展示

淀川のいきもの展示

施設を案内していただいた水道局総務部の山元さんは「ほんまや」についてこう語る。
「美しい“水の都”大阪の復興を広く伝える中で“ほんまや”を通じ、安全でおいしい水道水があることを、理解していただくために開発・販売しました。自治体が製造・販売する飲料水がモンドセレクション金賞を受賞するのは“ほんまや”が初めてで、さらに多くの方々に知っていただけた事が嬉しいですね。」

モンドセレクションのメダル入りボトルの発売予定はないのかを訪ねると、

「東北の被災地へお送りする対応が最重要と考えておりましたので、これから検討して行きたいと思います。被災地へ複数回に渡って“ほんまや”を送らせていただきましたが、500ml入りボトルは医療関係の現場で重宝されているそうです。被災地の1日も早い復興をお祈りしています。」

おいしい水道水を知ってもらうために開発された「ほんまや」はモンドセレクション金賞という追い風を受け、販売総数は100万本を越えて絶好調。市内のコンビニや自販機など売場も拡大し、人気はさらに加速を続けている。

急なお願いにも関らずご対応いただいた大阪市水道局総務部総務課の山元さん。
ありがとうございました。

大阪へ移動途中、昨年のエコミッションでお世話になった明石市役所へ立寄ってご挨拶させていただきました。明石市が新たに取り組もうとしている環境対策などの意見交換など、短い時間ながら内容の濃い再会でした。上田さんはじめ、皆さんありがとうございました。

明日は平城遷都1300年祭に湧く、奈良からレポート予定です。お楽しみに。

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