6月 20日 2011

早朝から叩き付けるような激しい雨が降りしきる中、高松自動車道を西へ向かった。19日で週末の上限1,000円と一部区間の無料試験が終わってしまったため、この先、全ての高速道路通行に正規料金が掛かるのが辛いところだ。深い緑に覆われた丘陵地帯に並ぶ黒瓦の民家や美しい棚田を縫うように進むルートは、晴れていたらさぞかし気持ちのよいドライブになっただろうが、雨はさらに激しさを増し、橋を渡る時などは白い霧に包まれて50m先も見えない始末。追い打ちを掛けるように、向かっている先の「祖谷・大歩危」方面に大雨警報が発令されてしまった。高速を降りて国道32号線に入ると、景色が一変する。剣山系の切り立った山々の谷底を、雨で水量を増しながら滔々と流れる渓谷美に、思わず“うわぁ〜”と声を上げてしまう。警報が外れたのか雨も小振りになり、ちぎれる雲の合間から出現した山々の緑が渓谷の美しさを一層際立たせていた。

水量が増した祖谷川

水量が増した祖谷川

トヨタ自動車運営サイトGAZOO.comが提案する、マチで暮らす人々にムラでしか味わえない感動体験をナビゲートしようという「Gazoo Mura」に登録されている徳島「祖谷」は日本三大秘境のひとつで、剣山山系の谷を流れる祖谷川の急峻な斜面にへばりつくように集落が点在し、日本の原風景が色濃く残る風光明媚な場所だ。「屋島の合戦」に敗れた平家の武者30余名が安住の地を求めてたどり着いたという平家屋敷や、妖怪「こなきじじい」の民話が語り継がれるなど、まさに秘境と呼ぶに相応しい魅力に溢れている。

祖谷へ入る茅葺きのゲート

祖谷へ入る茅葺きのゲート

築90年の古民家で自然・田舎暮らしを体験できる「空音遊(くうねるあそぶ)」というゲストハウスを営み、GazooMuraブロガーでもある「のりさん」を訪ねた。東京でエネルギー関連の会社に勤めていたのりさんは、ローインパクトな田舎暮らしを実践しようと祖谷に住み着いた。訪れるゲストにシンプルな暮らしの一端を体験して貰おうと、古民家や隣接する納屋を自ら改修し、バイオトイレや五右衛門風呂も自作してしまうなど、日々、田舎で暮らす事の魅力を伝えるための努力を惜しまない。

「ここを訪れる方は、素晴らしい場所に住んでいて羨ましいですね、と言います。ここは何年も放置されていた古民家ですから、それほどすばらしい場所なら誰かが住んでいてもおかしくないでしょう。だけど放置されていた。それは不便だからです。ここには何もありませんから。テレビもラジオもない。多くのゲストは帰宅すれば沢山の電化製品のリモコンに囲まれ、半加工された食べ物を購入して生活しているでしょう。これまでの私たちの暮らしは、沢山のモノを身の回りに置くことで満足してきました。そういう時代も必要なのかもしれません。しかし、これから先はそういったモノをそぎ落して行く事が大切だと考えています。本当に必要最低限のモノだけで暮らす快適さは、実践してみなければ解らないでしょう。ここ“空音遊”は、そういったシンプルな暮らしの快適さを知る場でもあるんです。」

これからの「空音遊(くうねるあそぶ)」は、エネルギーを自前でまかなう事を目指しているという。太陽光発電や風力、点在する沢を利用した小水力発電など候補はあるが、どれも高額な費用が掛かるため導入は難しい。それは一般の家庭にも言える事。できるだけ費用を抑えて実現できる術を、もともと最低限のモノで暮らしているココで見つける事ができれば、また違った世界が見えてくると、のりさんは考えている。

公的インフラを使わず自活したいと語る

公的インフラを使わず自活したいと語る

秘境と呼ばれる祖谷でもさらに分け入った場所で、無いモノづくしの空音遊だが、インターネット回線だけは入っている。GazooMuraサイトなどを通じてシンプルな暮らしを発信するためでもあり、世界中の人とコンタクトできる最良の手段として欠かす事のできないものだからだ。これからも祖谷に住んでいる数人のブロガーさんとも連携しながら、地域の魅力を発信しつづけて欲しいとお願いして祖谷を後にした。

田舎暮らしを体験できる「空音遊(くうねるあそぶ)」のりさんの
GazooMuraページはこちらから

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6月 19日 2011

大阪の中心街を貫く新御堂筋を北上すると、前方に箕面山が行く手を阻むようにそびえる姿が見えてくる。空海、日蓮などが修行を行う修験場になった程の険しい山々に阻まれ、アクセスが困難だった箕面北部も、総延長5kmを越えるトンネルを含む「箕面グリーンロード」が2007年に開通して以降、大阪の新たなベッドタウンとして開発が進められている。止々呂美からときわ台を経由して能勢電鉄妙見線の終着駅「妙見口」から吉川地区へ入ると、深い広葉樹林に囲まれ、魚が群れ泳ぐ谷川の脇に美しい棚田が続く、昔ながらの山村風景が広がっていた。

吉川地区へ入るプリウスPHV

吉川地区へ入るプリウスPHV

妙見山の山頂にある「能勢妙見宮」まで参拝者を運ぶ「妙見ケーブル」乗場へ続く道は「花折街道」と呼ばれ、季節ごとに美しい花々が咲き誇る。この花を糧に養蜂を行なっている「吉川はちみつファーム」の中川さんを大阪市内に住む子供たちと一緒に訪ね、ミツバチを見せていただいた。黒い色はミツバチに攻撃されやすいので白っぽい服装で来るようにと事前に伺っていたので、子供たちは白装束に防虫ネットを被り準備万端、少し緊張しながらも棚田のあぜ道を登り、巣箱が並ぶ養蜂場に到着した。

ミツバチをおとなしくさせるための煙を作る道具「燻煙器」のフイゴで煙を吹きかけながら巣箱を開け、木枠を引き出すと、びっしりとミツバチがひしめく中に、一回り大きく腹部の長い女王蜂が目を引く。驚いて飛び出した大量のミツバチ達が、目の前をブンブン飛び変わり迫力満点!都会育ちの子供たちは及び腰だ。

巣箱の蜂がちょっと怖い?

巣箱の蜂がちょっと怖い?

空中を飛び回っていたミツバチの一団が、側の石垣に群がっている。年に数回あるかないかの珍しい行動で、女王蜂も巣箱を飛び立ってしまい、新しい住まいを見つけ巣を作ろうと群がる「自然分蜂」が始まったのだ。これは養蜂家にとっての一大事で、女王蜂に放棄された巣箱はこのままでは空っぽになってしまうため、大急ぎで女王蜂を捕獲して戻さなければならない。幸い木枠を石垣に置いて女王蜂を誘うと見事飛び移り。事なきを得たようだ。

石垣に自然分蜂をはじめた

石垣に自然分蜂をはじめた

ミツバチ見学も終了し、中川さんの畑でキュウリをもぎ取って、新鮮な野菜本来の味を堪能させていただいた。普段スーパーマーケットなどの店頭に並ぶそれとは違い、カタチもいびつで色むらがあるが、パリパリとした歯触りと瑞々しい甘さに驚かされる。やはり穫れたての野菜はうまい。

キュウリ畑で収穫

キュウリ畑で収穫

キュウリをいただきながら、中川さんに吉川地区周辺の環境についてお話をうがった。

「箕面グリーンロードが出来て開発が進んでから、この辺りの環境も急速に変わりましたね。元々沢山のシカやイノシシが棲む山深い土地ですが、宅地造成で群れが分断され、里へ頻繁にでてくるようになりました。町役場のあるときわ台周辺の住宅地や大通りにも多くのシカやイノシシがうろついて、ゴミを荒らす被害が出ているようです。ここ吉川でも畑や田んぼが被害を受け始めていますので、注意深く見ているところです。」

吉川地区周辺に限った事ではなく、里山が緩衝材となって山森に棲む野生動物と共存してきた本来の姿が消え、森と隣り合わせで町が造られて行く事で、様々な問題が引き起こされている。住宅地の回りにできるだけ多くの里山を復興させ、動物達と共存できる環境整備が望まれる。

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6月 18日 2011

エコミッションが日本全国を旅して2年目に入る。各地で環境保全に取り組む多くの場所を訪ね、たくさんの素晴らしい出会いを積み重ねて来た。町から町へと移動を続けるために走った道路は数知れず、カーナビの履歴は網の目のように日本地図を彩っている。考えてみると当然の事だが、未踏の地を冒険するような挑戦でもない限り「道路」がなければクルマは走る事ができない。

飛鳥から平城京朱雀門へ続く日本最古の国道

飛鳥から平城京朱雀門へ続く日本最古の国道

勇気を持って原野を踏みしめた足跡が、やがて一本の細い帯になり、利用する者が多い程、さらに太い道へと変わって行く。車輪の付いた乗物が発明されると轍が刻まれ、さらに利便性を求めて橋や切り通しが造られて現在のような道路へと進化する。一方、計画的に建設される道路は出来る限り最短距離を結ぶルートを、段階を踏むことなく労力を集中して一気に造られる。

飛鳥時代後期、朝廷の命によって一本の道路が建設された。飛鳥から平城京へと続く「下ツ道」と呼ばれる日本最古の国道だ。全長30km、ほぼ一直線に延びるルートは大極殿へ向かう「朱雀大路」に繋がり、京内では全幅74m(現在の19車線分)にも及ぶ。この道路を使って遷都が成され、7万を越える天平人が暮らす都が誕生し、平城京74年間の歴史が刻まれることになる。途方も無く広い道幅は往来のためだけでなく、遣唐使によって交流が深まった海外からの使者を招く際の儀礼に使われたと考えられている。

■日本最古の国道について語る「なら・観光ボランティアガイドの会」仲西さん

あいにく雨模様の平城京訪問となったが、遣唐使による大陸との交易の様子を展示する「平城京歴史館」を、地元の子供たちと一緒に観覧した。平城京から派遣された若者達が大陸の文化に触れる様を、「遷都1300年祭」の公式マスコットキャラクターとして人気の「せんとくん」のアニメ映画で紹介したり、復元された遣唐使船が展示されるなど、楽しみながら学べる内容で、本物の「せんとくん」登場には子供たちも大喜び。印象深い訪問となった。

子供たちにも人気のせんとくん

子供たちにも人気のせんとくん

■平城遷都1300年祭マスコットキャラクター「せんとくん」登場

降りしきる雨の中、朱雀門から延びる道路を眺めていると、いにしえの天平人が行き交う姿が思い浮かぶ。エコミッションはまだ見ぬ道路を紡ぐようにカーナビの履歴に収めながら、旅を続けていく。

遥か飛鳥へと続く道

遥か飛鳥へと続く道

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