この数年で急速に浸透してきた太陽光パネル。メガソーラーの建設ラッシュが報じられ、一般住宅はもちろん役場や商業施設、山奥の休耕地にいたるまで“黒い板”の勢力は増すばかりだ。一方、地域発電の切り札として話題に上る“小水力発電”はどうだろう。全国の候補地は1,000箇所を超えるというのに、実際に稼働しているのはたった30カ所余と異様に少ない。両者の発電効率の違いを知るため、2つの施設を訪れてみた。
小水力発電
静岡県島田市を流れる大井川水系の農業用水を活用した小水力発電所が「伊太発電所」だ。低い落差でも効率良く発電出来る小水力発電所を作ろうと、国主導で研究された発電システムが設置されているという。
実際に訪れると、拍子抜けするほどコンパクトな建物で、看板が無ければ発電所だと気付かないかも知れない。案内していただいた伊太発電所大井川改良区の鈴木さんによると、その落差はたった7メートルだが、最大発電量は900Kw弱と、一般家庭1,500世帯の電気をまかなえるという。
そのヒミツは、水量を一定に保つため発電ユニット前後に設けられたプールと、それを効率よく受け止めて回るプロペラ水車(S形チューブラ水車)だ。そのプロペラシャフトには、さらに高回転を生み出す倍速装置を介して発電機に繋がっている。
農業用水を利用しているため年間を通して一定の水量を確保できないとは言え、昼夜問わずに発電できるメリットは大きく、今後、設置事例が増えて建設コストが下がれば、約5年で減価償却できる優れた発電方法だと、鈴木さんは語る。
太陽光発電
多種多様な太陽光パネルを集めてその性能を調査・研究しているという、山梨県北杜市「太陽光発電実証の杜」を訪れた。
台風一過のドピーカンと、まさに発電日和のなか、田園風景に囲まれた一画に、色や大きさ、厚みなどが違う27種類の太陽光パネルがずらりと並ぶ。これほど多くの太陽光パネルが見られるのは世界でここだけだというから一見の価値はある。
現在のところ、圧倒的なシェアを持つ太陽光発電の圧勝のように思えるが、産業用太陽光パネルの発電量は、多結晶シリコンの場合ユニット当り最大250Wh。メガソーラー建設には広大な土地が要るのだ。試しに、今回訪れた小水力発電所の面積に換算すると、約300ユニット設置可能で、最大出力は75Kwhとかなり少ない。
もちろん小水力発電は建設に掛かる費用や場所の制約などハードルは高いが、小規模で周辺環境にも悪影響を及びしにくく、高い発電効率という優等生発電。全国に1,000箇所以上もあるという候補地への建設が増えるのは間違いないだろう。