毎年クリスマスには子供たちに笑顔の花を咲かせるサンタクロース。三重県津市にはトナカイのソリならぬヘリコプターを操縦して空からやってくるサンタさんがいるというので訪ねて見ることにした。“空飛ぶサンタ”を16年間も続けている民間航空ボランティアair-H’代表 林さんの思いとは…。
山間をゆっくり流れる朝霧に見送られながら「GazooMura宮川村」を後にした。プリウスPHVは下り坂のコーナーでブレーキペダルを踏むたびに電気を蓄え続け、エネルギーモニターの表示が満充電に近づいた頃、海沿いの津市に到着した。
中心街にある“空飛ぶサンタ”のオフィス「air-H’」を訪れると、浅黒く日焼けした、いかにも行動派といった面持ちの林さんが現れた。エコミッションの鮮やかなマーキングが施されたプリウスPHV & プリウスの訪問に林さんの笑顔が弾ける。
この笑顔ならサンタクロースの装束が似合うに違いない!
林さんは“空飛ぶサンタ”実現のため「民間航空ボランティア Air-H’」発足し、奇しくもエコミッションをスタートさせたのと同じ1999年から16年間、多くの子供たちの待つ幼稚園や、保育園、小中学校や病院などにサンタクロースとしてヘリコプターで降りたち、クリスマスプレゼントを届けている。
「子供たちの笑顔に励まされて続けて来ましたが、高額なヘリのチャーター費用やプレゼントなど、すべて持ち出しで行っているので、一時はもう終わりにしようと思った事もありました。そんな時、ある先生に言われた事があるんですよ。子供たちは、いずれ学校の先生のことを忘れてしまっても、サンタさんが空からプレゼントを持ってきてくれたことは忘れないだろうって。それが今も続ける原動力になっています。」
そう話す林さんの目は優しく、情熱に満ちている。三重県を中心に活動して来た“空飛ぶサンタ”だったが、日本中の誰もが涙し、絆を再確認した3.11東日本大震災以降は、毎年のように被災地へ赴いている。
この季節、サンタさんは夏休み…と思いきや、クリスマスのための準備に追われているという。ヘリのチャーターや訪問地との打ち合せ、飛行訓練やスケジュール調整など、華やかそうに見える活動の裏側で、やらなければならない事は山ほどあり“夏休み”どころでは無いようだ。
“空飛ぶサンタ”のほかにも、日本赤十字三重県支部急募ボランティアに参加し、近い将来、必ずやってくるであろう東海、東南海、南海地震への備えを民間レベルで行っている。地震発生の際、行政だけに重責を負わせる事に疑問を感じ、使命感を持って民間が救助を行うことこそ、多くの生命を救うことができると確信し、自分にできることから実践しようとしている林さんの決意は鋼のように固い。
その一方で「浜名湖の湖底に眠る幻の戦車チトを探せ!!」という夢とロマンに満ちたプロジェクトにも参加している。敗戦した日本軍が知力を結集させた「チト」という戦車を浜名湖と猪鼻湖、並ぶ二つの湖の括れ地点に沈めたという記録を頼りに何度も現地へ足を運んでいるという。
当時の目撃者も多く、発見の可能性は高いのだが、湖底のヘドロによる視界不良のため未だ発見には至っていないそうだ。“夢”を追い求める林さんの行動力に満ちた生き方にエールを送りながら、次の目的地、名古屋へと向かった。