刺身や蕎麦に欠かせない日本原産の香辛料、山葵〈わさび〉。深い森の栄養豊富な水で育った山葵は、まろやかな刺激と独特の甘みで食材の旨味を引き出してくれる。安倍川源流で手間ひま掛けて栽培されている山葵は、味も大きさも申し分ない一級品。三ツ星レストランの有名料理人にも認められたという山葵を求め、安倍川源流部を目指した。
宿泊先の「湯の島館」で朝食を済ませ、ご主人の案内で山葵を栽培している杉山農園を訪ねた。茶畑が広がる斜面を上った先に現れたのは、山葵を栽培して20年。100年つづく杉山農園の4代目、麦わら帽がお似合いの杉山さん。自宅前にプリウスPHVを停め、お話を伺う間に充電させてもらおうとプラグインをお願いした。
収穫した山葵の仕上げや選別を行う作業場で、どんな場所で栽培しているのか杉山さんに伺った。
「山葵の栽培は渓流や地沢をそのまま使うところもありますが、畳石式のわさび田でやっています。畳石式は大きな石の上に小さな石を敷き、その上にはもっと小さな石、さらに砂を敷いた田に水を流す方式で、水が上から下へ循環して、冷たい水温を一定に保つことができるんですよ。山葵田は湧き水を引き込みやすい場所で、水量を安定させるために数カ所からパイプで水を引いています。これからご案内しますから一緒に行きましょう。」
杉山さんの軽トラックを先頭に、プリウスPHV、プリウス、湯の島館のワンボックスの4台が連なって、安倍川源流部の渓谷沿いにある「杉山農園山葵田」を目指した。
深い山へ分け入るのかと思いきや、意外にも安倍川沿いの開けた場所に“山葵田”はあった。石積みの棚田のような階段状の山葵田は水深5cmにも満たないため、太陽光の影響で水温が変わりやすく、ブルーメッシュで覆って適切な温度を保っているという。
用意していただいた長靴に履き替えて山葵田へ入ると、長靴越しにひんやりとした水の冷たさを感じる。限りなく澄んだ水に洗われ、力強い茎をいっぱいに伸ばした山葵は想像以上にデカい!山葵を掘り起こす小鍬を取り出した杉山さんが、サクッと砂に差し込んで起こし、根に絡み付いた砂を洗い流すと、長さ15cmはある見事な山葵が顔を出した。
「横田さんもやってみますか。」
杉山さんが促すままに手渡された小鍬を根本に差し込み、ぐいっと起こすが、しっかりと根を張った山葵はなかなか手強い。さらに起こしてから力一杯引き上げると、ようやく山葵が抜けた。杉山さんが収穫したものに退けを取らない見事な大きさに横田さんも大満足。
収穫した山葵のまわりにある“脇芽”は、そのまま苗になるため、傷つけないように丁寧に取り外す。葉と根のバランスを調整して植え込まれた苗は、安倍川源流の水の恵みで大きな株に成長するという転生を繰り返す。
山葵田を眺めながら杉山さんは言う。
「この下流では静岡市民飲料水の取水場がありまし、肥料や農薬などは一切使っていません。当然の事です。水、本当に水が全てです。渇水でも枯れる事がない安倍川の湧き水が山葵を育ててくれます。」
収穫した見事な山葵持参で、少し下流にある蕎麦と銘酒の店「銘酒館」さんを訪れ、蕎麦を打っていただいた。美味い蕎麦で評判の店だが、今日ばかりは山葵が主役。多めの山葵を乗せた蕎麦は、柔らかい刺激と甘みをまとい、本当に美味い!かなり大振りの山葵は5人分の薬味に使っても大部分が残った。
蕎麦をご馳走になった後、源流の森まで足を運んだ。激しい起伏の山々を鬱蒼とした木々が埋め尽くし、大小幾つもの滝があり、至る所から湧き出す水の音が聞こえる。安倍川源流の湧き水で大きく育つ山葵が美味いのは、水源の原始林が健康な証拠だと実感しながら、お世話になったガズームラ梅ヶ島を後にした。
杉山農園では山葵の収穫体験ができます。
豊かな自然の中での山葵穫り、オススメです。
杉山農園(ガズームラ特集記事)
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