6月 12日 2011

雨霞に煙り白一色の世界だった吉備中央町から岡山自動車道を南下、中国山地を抜けて山陽道に乗り継ぐ頃には空が明るさを取り戻し、心配していた雨の気配が薄らいだ。今日は「法隆寺地域の仏教建造物」とともに、日本で初めてユネスコ世界遺産に登録された「姫路城」を訪れるため長時間屋外を歩き回る事になる。晴天とは言わずとも雨だけは勘弁願いたいとの祈りが通じたのか、終日雨という予報が外れてくれたようだ。

姫路城に到着したプリウスPHV

姫路城に到着したプリウスPHV

姫路城は半世紀ぶりに「平成の大修理(2009~2014)」が行なわれているため、大天守部分が足場建屋に覆われている。「白鷺城」の異名を持つ外観の美しさの全貌を味わうことはできないが、足場建屋内に開設されている大天守修理見学施設「天空の白鷺」では、天守閣の高さまで昇り、改修中の作業を間近で見る事ができるという。また、普段は立ち入る事ができない区画が改修期間に限定公開されているなど、50年に一度の改修に立ち会える事は、外観の楽しみを差し引いても余ある絶好の機会に胸が高鳴る。

大天守は改修足場建屋に覆われている

大天守は改修足場建屋に覆われている

太平門をくぐり三の丸へ向かう先に世界文化遺産記念碑が建っている。この場所からの眺めが良く知られる姫路城の姿として絵はがきなどにも登場している。桜並木をしばらく進み、美しい塀に囲まれた殿中へ入ると、敵軍の襲来を想定した迷路のような急坂が続き「順路」のサインがなければ本丸へたどり着くのは難しいかもしれない。鉄砲や槍を突き出す穴がこちらを狙って並び、場内の壁には大量の武器が掛けてある。城とは戦う砦でもあり武士の精神が宿っている場所なのだと再認識した。

本丸に到着すると特別展示「天空の白鷺」には多くの見学者が集まっている。高層ビルの工事現場のような鉄骨組の建屋に入りエレベーターで大天守のある最上階へ昇る。片側がガラスになっているため、目の前を漆喰の壁や重厚な屋根瓦が通り過ぎて迫力満点だ。各フロアにもガラス窓が設けられ、屋根を葺き替え中の作業工程がつぶさに見学できる工夫がされ、全国から集結した匠の技を間近で見られる展示方法に感心させられた。

修復が済んだ鯱が取付けを待っている

修復が済んだ鯱が取付けを待っている

日本木造建築の最高峰とも言われる姫路城の大改修が半世紀ごとに行なわれるのは、風雨に晒されて痛んだ部分を補修するだけでなく、幾代にも渡り培われてきた技術と伝統を絶やす事無く後世に継承するという大切な役割を果たしているという。半世紀というサイクルは成熟した技術を有能な職人に引き継ぐために欠かす事のできないタイミングなのだ。日本が誇る匠の技とは、世代を引き継ぐ行為そのものなのかも知れない。

かつては武士のものだった城も、現在では市民の手に渡り、海外からも大勢の観光客が訪れている。そして、争いの象徴だった城の建築技術や美意識に驚嘆し、日本に対する理解を深めるきっかけになり、平和を作り出す機会を創出しているのはとても興味深くすばらしい事だと思う。城を通じて、匠の技も精神も欠かす事なく後世に引き継いでもらいたいと願うばかりだ。


カテゴリー: ECO-MISSION2011,中国,近畿

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