“プラグイン・ハイブリッドカー”と言えば、「コンセントから充電した電気で走り、電気が無くなるとガソリンで走るクルマ」というのが売りで、実際にリチウムイオンバッテリーを満タンにすると23.4kmを電気だけで走行できるため、通勤や買物など日常的な使われ方の大半を電気だけでカバーし、週末に遠出するようなケースではハイブリッドカーとして電池残量を気にせず、どこまででも走る事ができる。もちろんこれは素晴らしい進化といえるだろうが、プリウスPHVと現行プリウスとの違いは「充電できる」だけではない。
エコミッションでは現行プリウス(30系)とプリウスPHVが同じ条件で旅を続けている。フツーの人が日本中の様々な道路をごくフツーに乗った場合を想定しながら走っているので、特に燃費に気遣った走り方をしていない。暑い日にはエアコンもつけるし、高速道路では流れにのってアクセルを踏み込んだり、急勾配の林道を駆け上がる事もある。宿泊先の駐車場には充電設備がほとんど無いため、訪問先でコンセントがある場合に限り、短時間の充電をお願いしている程度で、今回の総走行距離3,660kmのうちコンセントからの電気で走行した距離は200kmにも満たないだろう。つまり「プラグイン」の恩恵をあまり受けずに全行程を走った訳だが、それでもプリウスPHVは現行プリウスに比べ、18.26%も低い燃費を記録した。これは140kgも重い事を考えると驚くような数値だ。一般発売後には、自宅や勤務先に充電設備(と言っても普通のアース付き100V、または単層200Vコンセント)を設け定期的に充電するという方が大半を占めるだろうから、その差は相当なものになることは容易に想像がつくというものだ。
この差はひとえにバッテリー容量に起因している。現行プリウスとプリウスPHVが並走しながら山を越えて隣町へ移動したとする。負荷が掛かる上り坂では当然エンジンが回り、140kgも重いプリウスPHVはより多くのガソリンを消費するだろう。2台は山の頂上を過ぎて下り坂に差掛かり、減速するたびに回生ブレーキで発生した電気をバッテリーへと蓄電しはじめる。しばらくすると現行プリウスのバッテリーは満タンになってしまうが、バッテリー容量が4倍あるプリウスPHVは坂を下り切るまで充電を続け、隣町へ到着するころにはたっぷりと電気が蓄えられていて、EVのアシストでより長い距離を走行できるという訳だ。つまり蓄えられた電気が、上り坂で消費されるガゾリンを上回るエネルギーとして駆動系に生かされているため、大きな燃費差となって現れたという事になる。
■中四国編におけるプリウスPHVと現行プリウス(30系)の燃費データ
プリウスPHV
走行距離 3,660 [km]
燃料使用量 160.4 [L]
燃費 22.8 [km/L]
現行プリウス(30系)
走行距離 3,668 [km]
燃料使用量 189.7 [L]
燃費 19.3 [km/L]
今回の旅でも多様な路面状況の中、2台の燃費を計測してみたが結果は一目瞭然。プリウスPHV はバッテリー容量増よって燃費向上の恩恵を受けており、その差は明らかだ。仮にコンセントから全く充電せずに走行した場合でも、現行プリウスより15%以上の好燃費を得る事ができるという予想以上のデータとなった。プリウスPHVは、単にコンセントで充電できるプリウスではなく「走る発電所+大容量蓄電装置」。クルマや住宅、さらには町とエネルギーを共有する「スマートグリッド」の一端をいち早く味わえる1台なのである。
■田園風景を走るプリウスPHVオンボードカメラ
■次回は走行性能の要、プリウスPHVに標準装着される
GOODYEARエコタイヤ「GT3」についてレポートします。お楽しみに。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,中国,四国,近畿
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