奈良県御所市の秋津遺跡で、縄文時代後半(2800年~2500年前)のものとみられるノコギリクワガタがほぼ完全な形で出土し、話題となっている。発見されたのは、6.3㎝のオスのクワガタで、小川の側に生えたアカガシの根本付近の泥に埋もれていた。アカガシの他にもクヌギやコナラなどの食用の実がなる樹木の雑木林が小川の南岸で見つかり、北側には約1000点もの縄文土器の破片なども発見されているという。折角奈良へ滞在しているので実物を見てみたいと思い、発見・調査している「奈良県立橿原考古学研究所」に問い合わせてみたが、DNA検査で現代のノコギリクワガタと比較するなど、研究中で見る事は出来ないとの残念な回答。「橿原市昆虫館」の学芸員さんが実物を見ているというので、訪ねて話を伺う事にした。
橿原市昆虫館は「見て・聞いて・触って・感じる昆虫館」とのコンセプトを掲げ、太古の虫から身近な虫まで、標本・生体を多数展示しており、子供から大人まで楽しみながら虫の世界を知る事ができる。もちろん現代のノコギリクワガタも飼育展示している。学芸員の中谷さんに今回発見された実物を見た時の感想を伺った。
「まるで昨日まで生きていたような保存状態でした。恐らく、生きているうちに大量の土砂が被って真空状態になり、バクテリアが分解する事なく奇跡的に今まで保存されていたのでしょう。現代の子供たちにもマスコット的なクワガタやカブトムシなどの甲虫類は、もしかしたら縄文の子供たちにも人気があったかも知れません。ある種の甲虫の幼虫は食用にもなっていましたので、芋虫から変態する事も知っていたはずですから、縄文人の長老のような知恵者からノコギリクワガタの幼虫だと教えられ、飼育しながらサナギになり、成虫に変わる姿にワクワクしたかも知れませんね。」
一匹の昆虫の発見を通して太古へと思いを馳せる中谷さんは、多くの子供たちに昆虫の魅力を知ってもらおうと、今日も虫たちと真正面から向き合っている。
■奈良県立橿原考古学研究所様から使用を承諾していただいた、2800年前のノコギリクワガタの画像
カテゴリー: ECO-MISSION2011,近畿
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