大阪の中心街を貫く新御堂筋を北上すると、前方に箕面山が行く手を阻むようにそびえる姿が見えてくる。空海、日蓮などが修行を行う修験場になった程の険しい山々に阻まれ、アクセスが困難だった箕面北部も、総延長5kmを越えるトンネルを含む「箕面グリーンロード」が2007年に開通して以降、大阪の新たなベッドタウンとして開発が進められている。止々呂美からときわ台を経由して能勢電鉄妙見線の終着駅「妙見口」から吉川地区へ入ると、深い広葉樹林に囲まれ、魚が群れ泳ぐ谷川の脇に美しい棚田が続く、昔ながらの山村風景が広がっていた。
妙見山の山頂にある「能勢妙見宮」まで参拝者を運ぶ「妙見ケーブル」乗場へ続く道は「花折街道」と呼ばれ、季節ごとに美しい花々が咲き誇る。この花を糧に養蜂を行なっている「吉川はちみつファーム」の中川さんを大阪市内に住む子供たちと一緒に訪ね、ミツバチを見せていただいた。黒い色はミツバチに攻撃されやすいので白っぽい服装で来るようにと事前に伺っていたので、子供たちは白装束に防虫ネットを被り準備万端、少し緊張しながらも棚田のあぜ道を登り、巣箱が並ぶ養蜂場に到着した。
ミツバチをおとなしくさせるための煙を作る道具「燻煙器」のフイゴで煙を吹きかけながら巣箱を開け、木枠を引き出すと、びっしりとミツバチがひしめく中に、一回り大きく腹部の長い女王蜂が目を引く。驚いて飛び出した大量のミツバチ達が、目の前をブンブン飛び変わり迫力満点!都会育ちの子供たちは及び腰だ。
空中を飛び回っていたミツバチの一団が、側の石垣に群がっている。年に数回あるかないかの珍しい行動で、女王蜂も巣箱を飛び立ってしまい、新しい住まいを見つけ巣を作ろうと群がる「自然分蜂」が始まったのだ。これは養蜂家にとっての一大事で、女王蜂に放棄された巣箱はこのままでは空っぽになってしまうため、大急ぎで女王蜂を捕獲して戻さなければならない。幸い木枠を石垣に置いて女王蜂を誘うと見事飛び移り。事なきを得たようだ。
ミツバチ見学も終了し、中川さんの畑でキュウリをもぎ取って、新鮮な野菜本来の味を堪能させていただいた。普段スーパーマーケットなどの店頭に並ぶそれとは違い、カタチもいびつで色むらがあるが、パリパリとした歯触りと瑞々しい甘さに驚かされる。やはり穫れたての野菜はうまい。
キュウリをいただきながら、中川さんに吉川地区周辺の環境についてお話をうがった。
「箕面グリーンロードが出来て開発が進んでから、この辺りの環境も急速に変わりましたね。元々沢山のシカやイノシシが棲む山深い土地ですが、宅地造成で群れが分断され、里へ頻繁にでてくるようになりました。町役場のあるときわ台周辺の住宅地や大通りにも多くのシカやイノシシがうろついて、ゴミを荒らす被害が出ているようです。ここ吉川でも畑や田んぼが被害を受け始めていますので、注意深く見ているところです。」
吉川地区周辺に限った事ではなく、里山が緩衝材となって山森に棲む野生動物と共存してきた本来の姿が消え、森と隣り合わせで町が造られて行く事で、様々な問題が引き起こされている。住宅地の回りにできるだけ多くの里山を復興させ、動物達と共存できる環境整備が望まれる。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,近畿
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