高松自動車道を降りて高松市街を走りだすと、いたる所で「讃岐うどん」の看板が目に止まる。多い場所では見える範囲に5つ以上のうどん店が軒を並べ、“やっていけるのか?”と、いらぬ心配をしてしまう程だ。総務省の家計調査によると、都道府県別うどん・そば消費量ランキング1位は香川県で、1世帯あたりの年間消費量は33.2kgと全国平均の2.11倍。店舗数でも人口10万人あたり65.77軒で全国平均の3倍という圧倒的な結果が出ている。さすがは県民食の筆頭、讃岐うどんの本場だけの事はある。
讃岐うどんの命とも言える、跳ね返るような強いコシと小麦の香りを維持するために、各店舗や製麺所では厳しい基準を設け、適正な熟成時間を超えてしまったうどんは焼却処分されている。廃棄量は香川県全体で年間1500トンにも上り、7割が水分のうどんを燃やすために、より多くの燃料が必要となるためCO2の発生量も膨大となる。ゆで汁の不法投棄による河川汚染とともに、うどん業界を取り巻く環境へのダメージが社会問題となっている。この難問解決に地元企業が名乗りを上げ、廃棄うどんからバイオエタノール精製に成功したという話を聞き訪問する事にした。
高松市郊外で製造プラントや搬送設備を開発・製造している「株式会社ちよだ製作所」は、太陽光発電やバイオエタノール精製などの環境事業にも積極的で、常に地域社会に貢献する新しい技術を生み出してきたバイタリティ溢れる企業だ。
敷地内にクルマを進めると、2基の自動追尾装置付きソーラー発電パネルが出迎えるように設置されている。挨拶もそこそこにプリウスPHVに充電をお願いすると、池津社長自ら快く応じていただいた。娘さんがプリウスオーナーで、先日発売されたばかりの「プリウスα」をオーダーして納車を待っているという事で、プラグインハイブリッドにも大変興味を示していた。
技術開発担当の尾嵜さんを交えて環境事業についてお話を伺うと、しっかりとまとめられたプレスリリースが用意されており、強い思い入れを感じる。4年前から再生可能エネルギーの開発をスタートさせ、環境先進国スウェーデンのバイオメタンガスインフラを調査・研究し、廃棄食品を原料としたバイオガス発酵設備を建設したのを皮切りに、太陽光発電など再生可能エネルギー設備の開発を進めている。
今回の「廃棄うどんバイオエタノール精製」事業で「かがわ産業支援財団」の新事業公募にエントリーし見事審査に合格、産業技術総合研究所四国センター、県産業技術センター食品研究所の協力を得て溶解酵素や酵母を共同開発し、昨年暮れに精製プラントを完成させ実証実験を始めている。精製されたバイオエタノールは精製度60%と、クルマの燃料に使用するにはさらに精製が必要で、コストが掛かりすぎるため、発電設備や食品製造ラインの燃料に使用する予定だという。
廃棄されたうどんからバイオエタノールが生まれ、抽出後の“残さ”もメタン発酵プラントでメタンガスの原料となり、その燃料で稼働する生産ラインで再びうどんが作られるという、うどんを取り巻くエネルギー循環の実現にむけた挑戦は始まったばかり。うどんに限らず、パンや米など多様な食品にも応用できる技術で香川県発、世界のオンリーワンを目指す「株式会社ちよだ製作所」に、今後も注目していきたいと思う。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,四国
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