8月 11日 2011

分水嶺で遊ぶ子供たち

分水嶺で遊ぶ子供たち

薄日の指す空模様が一転、厚い雲に覆われた途端に雷鳴が轟き、今にも降り出しそうな空模様の中、長良川の水を辿ってきた岐阜の旅も終盤、ついに源流部に到着した。大日ケ岳から湧き出した一滴が小さな流れを作り、白樺が林立する湿原を流れてきた一筋が「分水嶺」で2つに分かれ、一方は長良川となって太平洋へ、もう一方は庄川となって日本海へと注ぐ。これ程はっきりした分水嶺は全国的にもめずらしく、街道筋に近い事から「ひるがの分水嶺公園」として開放され多くの来訪者を集めている。落ち葉を数枚拾って源流から流して見ると、小さな池でくるくると回りながら、やがて2つに別れ吸い込まれるように流れて行った。同じ木から落ちた葉だが2度と出会う事は無いだろう。それぞれの流れる先には全く違った人々の暮らしがあるのだ。そう思うと分水嶺とは何と感慨深いものだろうか。

ひるがの分水嶺公園

ひるがの分水嶺公園

美味しい水に慣れ親しむ岐阜の人たちが、ここの水は天下一品と口を揃える銘水があると聞き、訪ねて見ることにした。郡上八幡から高賀山を目指して西へ10キロ程走り、長いトンネルをくぐり抜けると、深い緑に包まれた谷に出る。やがて、ごろごろと転がる巨岩の合間を縫うようにエメラルドグリーンの清らかな水が流れる高賀渓谷が現れる。そこから20キロ程山道を分け入った先に、目指す銘水が湧き出る“高賀神水庵”があった。平成8年に円空ゆかりの高賀神社が、参道わきの高賀谷戸で地下約50mの井戸を掘り、宮水として利用したのが始まりで「ふくべの霊水」と呼ばれる。平成9年、愛知工業大学土質工学の大根義男教授が「高賀山周辺は古生代から中生代にできた地質で、1億から2億5千万年前の砂岩層の上に閉じこめられた水が、そのまま湧き出している可能性が高い。」と発表したことから、周辺の人たちがこぞって水を汲みに来るようになった。平成12年には新聞やテレビで、シドニ-オリンピックマラソン金メダリスト高橋尚子選手が愛飲していたと報じられると人気に拍車がかかり、土日は終日行列ができるほどの盛況ぶりだという。

柔らかく甘みのある「ふくべの霊水」

柔らかく甘みのある「ふくべの霊水」

砂利敷の駐車場にプリウスPHVを止め、参道を歩くと東屋風の建物に人が集まっている。神社境内特有の厳かなムード漂う場所に、懇々と湧き出す“ふくべの霊水”をゆっくりと口に含むと、わずかに甘みを感じ、スッと身体に入ってくるような美味しさに驚かされた。一億年以上も前の水が、手にした柄杓の中にあるのが何とも不思議だ。初穂料の100円を払えば自由に汲んで持ち帰る事ができるとあって、大きなポリタンクを抱えた人が次々とやって来る。話を伺うと「この水でご飯を炊くと、ふっくら米粒が立ち、ご飯にツヤが出ておいしく炊き上がるし、お茶とかコーヒーも美味しくなりますよ。」と笑顔で話してくれた。

水を求めて沢山の橋を渡った

水を求めて沢山の橋を渡った

大垣をスタートし、岐阜、美濃、郡上と長良川を遡りながら“水”を追ったこの旅で、川を愛し、川と共に暮す人々の心に根付く“水”の持つチカラを実感することができました。明日は最上流部に根を下ろす桜の古木の物語を紹介します。
お楽しみに。

Filed under: ECO-MISSION2011,北陸,東海

Trackback Uri






8月 10日 2011

長良川鉄道郡上八幡駅

長良川鉄道郡上八幡駅

長良川を遡ると支流の吉田川と落ち合う谷間に“水のまち”として知られる郡上八幡がある。奥美濃の小京都と呼ばれるだけあって、袖壁と紅殻格子の歴史的家屋が建ち並び、4万8千石の城下町の面影を色濃く残す美しい景観を誇る町並みでは、いたるところで水の流れる音が聞こえる。町を流れる4本の川(長良川、吉田川、小駄良川、乙姫川)は、それぞれの表情は違うが、豊富な水量と抜群の透明度で、吸い込まれるような魅力に溢れている。

この新橋から吉田川へ飛び込む

この新橋から吉田川へ飛び込む

夏の風物詩として橋の欄干から飛び込む少年たちの映像をテレビなどで見かけた方も多いだろうが、その舞台となるのが吉田川の深い淵に架かる「新橋」。川面までの高さは12メートルもあり、覗き込むだけで足が竦みそうになるが、ここからダイブするとは何とも豪快で頼もしい限りだ。もちろん危険はあるだろうが、自分達もそうして成長したと自負する大人たちが愛情を込めて見守る事で、絶える事なく続いて来た「新橋からの飛び込み」からは、川と共に暮す郡上八幡の人々の原点を垣間見ることができる。

郡上八幡のシンボル「宗祇水」

郡上八幡のシンボル「宗祇水」

圧迫感を感じるほどの山々がもたらす豊富な水が、この町の豊かな伝統文化を遙か昔から繋いで来た。江戸時代に城下の防火や生活用水を目的に巡らされた水路や湧水から「水舟」と呼ばれる3段の水槽に引きこまれ、現役で使われ続けている。上段は飲用水、次の舟で果物などを洗い、最後の舟で食器を洗って魚を放った池に流し込む。食器を洗って出る残飯などは、池に落とされて魚の餌となり、残りは土に沈殿して浄化された後に川へと流される。水と共に暮らして来た先人の知恵が集約された見事な浄化システムが受け継がれているのだ。

郡上おどりに参加した福島の子供たち

郡上おどりに参加した福島の子供たち

PTA連合会と行政、民間のボランティアが力を合わせ、東日本大震災で被災した子供たちを自然豊かな岐阜県に招き、地元の子供たちとの交流の場を作ろうという「児童生徒リフレッシュサマーキャンプ」が開催されるという。先日お世話になったGazooMura郡上明宝の方々も取り組みに参加しているというので同行させていただいた。宿泊先の下呂温泉からバスで到着した60名の子供たちに、郷土料理や流しそうめんが振舞われたあと、夏には一ヶ月間続く郡上八幡の顔とも言える「郡上おどり」に参加するための練習を行った。硬い表情だった子供たちもすっかり打ち解けて笑顔が溢れ出し、日が暮れていよいよ本番。新町通りの踊りの和に加わって郡上八幡の方々の大歓迎を受けながら、楽しそうにいつまでも踊り続けていた。辛い経験をした子供たちに少しでも明るい笑顔を取り戻してもらえた事に、関係者ならずとも嬉しいひとときとなった。

Filed under: ECO-MISSION2011,東海

Trackback Uri






8月 9日 2011

長良川をさらに上流へ向かい支流の吉田川源流部、飛騨高地の深い森に囲まれた郡上市明宝を訪れた。ここはトヨタ自動車運営サイトGAZOO.comが提案する、マチで暮らす人たちにムラでしか味わえない感動体験をWebを通してナビゲートしようという、全国に58あるガズームラに選ばれている。「GazooMura郡上明宝」では、ガズームラサイトで地元の魅力を発信しているブロガーさん達を中心に、豊かな自然を肌で感じる事ができる体験メニューを用意して、マチから遊びに来る人をもてなしている。

川のせせらぎが心地よい民宿しもだ

川のせせらぎが心地よい民宿しもだ

地元ブロガー“ねむり姫”さんが切り盛りする「民宿しもだ」へ宿泊することにした。川のせせらぎ、迫る山々にこだまする野鳥の声、ゆっくりと流れる時間。豊かな自然を満喫しながら明るい女将さんお手製の郷土料理に舌鼓を打つ贅沢なひとときを満喫させていただいた。

ヤマメ掴み体験へ

ヤマメ掴み体験へ

吉田川沿いをうねるように進む「せせらぎ街道」を登りつめた高原に「めいほうスキー場」がある。雪質の良さで知られるスキー場だが、オフシーズンの夏にもさまざまな自然体験イベントを開催し人気を集めている。地元ブロガー“JIKOMA”さんは「もりっこはうす めいこう高原自然体験センター」を主催し、マチから遊びに来た方々に明宝の自然を紹介している。今日も自然体験が開催されているというので、プログラムの一部を見せていただく事にした。渓谷でヤマメを捕まえて命をいただく意味を知ってもらったり、生地からこねてピザを作り、薪を割って火を扱う方法を教えながら石窯で焼いたりと、美しい風景の中で、参加した家族全員が楽しんでいる姿を垣間見る事ができた。

素晴らしい川遊び体験

素晴らしい川遊び体験

マチに住む子供たちが親元を離れて自然と遊ぶ「冒険キッズ」を主催している「郡上八幡・山と川の学校」三島校長先生もガズーブロガーのお一人で“みっしー校長”として、郡上明宝の魅力を発信している。吉田川が持つ「人間を育てる力」が、現代の子どもたちに大切な経験をさせてくれると確信し、自然と遊ぶ楽しさと責任を学ぶ機会を提供している。たった一人で参加する子供の中には、不安に耐え切れずに泣き出す子もいるというが、豊かな自然の中、共同生活で友達と過ごす時間の大切さや責任感を察知し、あっという間に自立心が芽生えて笑顔が溢れ出すという。水遊びに興じる子供たちの笑顔は、清流にも増して素晴らしく輝いていた。

めいこう高原自然体験センター「自然体験」

郡上八幡・山と川の学校「冒険キッズ」

Filed under: ECO-MISSION2011,東海

Trackback Uri