2011年 8月



8月 19日 2011

次の訪問地、新潟市に向かう途中、10年前に訪れた黒部川に立ち寄る事にした。当時、黒部川の環境整備に躍起になっていた「黒部川水のフェスティバル」実行委員から“この場所を子供たちが黒部川と触れ合う場として育てて行きたい”という夢を聞いていたので、一体どんな進化を遂げているのか見たいと思ったからだ。

護岸の石に描かれたアート

護岸の石に描かれたアート

黒部川は源流から河口まで僅か85キロと極端に短い距離を、豊富な水量が突進する、通称「暴れ川」と呼ばれ、川に近づく事はタブーとされていた。しかし10年前、子供たちが川の水と触れ合い、もっと身近なものとして親しんでもらえるようにと、河川敷に水路を引いて魚の道を確保し、周囲に緑地帯を作って市民に開放される事になった。年一回開催される「水のフェスティバル」では、川に流れ着く「流木」で作った流木アート展や、河原の石に自由にペイントをして護岸壁を飾り、石のタイムカプセルとして次世代に残そうという試みが始まったばかりだった。

富山県警の救助ヘリ演習

富山県警の救助ヘリ演習

国道8号線を黒部大橋の前で右折し、黒部川沿いに奥へと進むと、きれいに整備された芝のグラウンドで富山県警の救難ヘリコプターがホバーリングしながら上昇下降を繰り返し、山岳救助の訓練を行っていた。因みに早朝のTVニュースでは、同型のヘリコプターが黒部川支流で遭難した家族を救助している様子が映し出されていた。無事救助されたのも訓練の賜物だろう。

当時の記憶を頼りに、石や流木のアート作品が並んでいた場所を探すがなかなか見つからない。河川敷をウロウロしていると電力会社の派手なカラーリングのランクルに出会った。もしかして知っているかも知れないと思いクルマを停めて尋ねた。「あ~、人工の水路ね。200mぐらい行った土手側にありますよ。」早速、この暑い日に涼を求める子供たちが楽しく遊ぶ光景を思い浮かべながら、その場所へ向かった。

大人たちの憩いの場

大人たちの憩いの場

小さな水路にチョロチョロと水が流れ、護岸の石には剥げかけた絵の具が寂しげなアート作品、所どころに転がるように落ちている流木アート。雑草一本生えていない整備された芝生のパークゴルフ場に囲まれ、水路にも途中に作られたビオトープにも魚や水生昆虫の気配はなく、水と戯れる子供たちの姿はどこにも見当たらない。ゴルフに興じる大人たちの笑い声とバタバタという救助へりのローター音の下で、子供達のためにと描いた夢が空しく残るばかりだった。どのような経緯があったのかは不明だが、かつて目指したはずの“水と触れ合う夢の遊び場”を、もういちど実現して欲しいと願いながら、黒部川公園を後にした。


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8月 18日 2011

幹線道路を離れ、激しく蛇行する峠道に差し掛かると、樹々の隙間から見える空が暗雲に覆われ、今にも降り出しそうな空模様だ。「越中五箇山相倉集落」の案内板を見つけて左折、さらに深い森へ入りしばらく進んだ先に合掌造りの民家が建ち並ぶ集落が見えてきた。まるでお伽話に出てきそうな景観にしばらく言葉を失う。

静寂につつまれた「越中五箇山相倉集落」

静寂につつまれた「越中五箇山相倉集落」

集落の入口にある駐車場にプリウスPHVを停め、辺りを散策しようとクルマを降りた途端、バラバラと音を立てて大粒の雨が降ってきた。茅葺きの茶屋の軒先でしばし雨宿り。さらに激しさを増した雨が糸を引くように視界を遮り、ぼんやりと見える合掌造りの連なりが夢のように感じられる。15分程で空が明るく輝き出すと、水道の蛇口を閉じるようにピタリと雨が止み、ちぎれた雲のかけらが谷間に留まって、幻想的な風景に磨きがかかる。

雨上がりの霧が幻想的

雨上がりの霧が幻想的

麓からは集落があることすら気づかない程、深い山々に囲まれた「越中五箇山相倉集落」は、平家の落人が住み着いたと伝えられている。世界的にもトップランクの豪雪地帯である五箇山は60年程前までは長い冬の間、外界と完全に隔離された暮らしがあった。雪下ろしや屋根の葺き替え、薪集め、田植えや稲刈りなど、多くの作業を村人が協力しあうことで、人里はなれた暮らしが成り立ってきたという。エネルギーを地域で共有し有効活用しようとする“スマートグリッド”の精神が、この集落には数百年前から根付いていたのだ。薪や建築資材を“おらが村の財産”として共有してきた集落の精神に見習う時期に来ているのかも知れない。

器用に紙を漉く子供たち

器用に紙を漉く子供たち

「越中五箇山相倉集落」から10分ほど下った場所に、特産の和紙の魅力を紹介する施設「五箇山和紙の里」がある。トヨタ自動車運営サイトGAZOO.comが提案する“マチで暮らす人たちにムラでしか味わえない感動体験”をWebを通してナビゲートしようという、全国に58あるガズームラのひとつでもある五箇山で、昔ながらの和紙作りを体験できるというので、ガズームラサイトでブログを公開している「わしのさと」さんの案内で、こどもたちと一緒に参加することにした。何種類かある体験コースのうち、初めてでも簡単にできる「和紙のはがき作り」に挑戦。

きれいにできたかな?

きれいにできたかな?

木枠を揺すって漉いたあと、紅葉など天然の素材を漉き込んで水分を絞り、乾燥させて出来上がり。手作り感いっぱいのオリジナル和紙はがきに、参加した子供たちも大満足の様子。笑顔あふれる夏休みのひとときとなった。体験の最後には、参加された方々をはじめ、和紙作りの先生や同行取材してくれた地元テレビ局クルーの皆さんにも被災地へ届けるメッセージもいただき、素晴らしい時間を共有できた事に感謝しながら、五箇山を後にした。

■五箇山和紙の里
http://washi.city.nanto.toyama.jp/

■同行取材してくれたテレビ局様
・富山テレビ
・北日本放送
・チューリップテレビ


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8月 17日 2011

壇ノ浦の戦いに敗れた平清盛の義弟・平時忠は能登への流刑が決まり、姓を時国に改めて輪島に移り住んだ後、困窮していた近隣の農村の救済を図り、この地を支配する豪農として800年の長きに渡り繁栄を続けた。輪島市町屋町周辺には国の重要文化財に指定されている「上・下時国家」をはじめとした歴史的建造物が点在している。遙か太古の時代、浅い海だった奥能登一帯は、豊富なミネラルを溜め込んだまま隆起し、半島随一の河川「町野川」流域に肥沃な土壌をもたらしている。平家ゆかりの「時国家」繁栄の背景には、この土地から授かった豊かな実りがあり、米どころとして全国的に知られる今に繋がっている。

登録有形文化財指定「南惣家住宅主屋」

登録有形文化財指定「南惣家住宅主屋」

両側を山に囲まれた町屋町の平地には、山の麓ぎりぎりまで田んぼが耕作され、青々とした稲穂が風になびく壮大な景色が広がっていた。ここにある建物はどれも統一感があり、黒瓦が特徴的な「輪島市大倉市営住宅」も景観に配慮した外観で静かな田園風景にマッチしていた。この土地に住む人達が地域ぐるみで“田んぼのある美しい町”を守り継承している事に感銘を受けた。

町屋町から15分程の海岸沿いに、5年前、当時の小泉首相が“絶景だよ、絶景”と言った事が報道され、全国的に知られるようになった「白米の千枚田」がある。崖を階段状に耕作した狭い場所に400年前に作られたという谷山用水を引き込み、田んぼが作られている。対面する高台に設けられた「千枚田ポケットパーク」の展望台から全体を見渡すと、美しい幾何学模様の棚田が古代遺跡のように斜面を彩り、まさに“絶景”。案内看板によると千枚田の名の通り、実際に1,004枚の田んぼが作られているという。

「白米の千枚田」の絶景

「白米の千枚田」の絶景

海側の田んぼの一番端に、折れ曲がったように見える一本の樹木が立っている。冬の日本海から吹きつける強風のために、陸側へ曲がって成長したようだ。近寄ってみると、海側の樹肌はささくれ、陸側には何本ものシワが刻まれている。この木の姿は、我々チームACPが敢行した「サウスアメリカ エコ・ジャーニー(2008年)」で訪れた南米大陸最南端の町“ウシュワイア”の峠に自生する「強風に耐える木」に酷似していた。
(当時のレポート:南極大陸まで1,000km足らず。時には風速60m以上の激しい強風に晒されるため樹木が変形している。それでも逞しく根を張り、早春に芽吹く姿に強い生命力を感じる。)

強風に耐えながら力強く生きる木

強風に耐えながら力強く生きる木

陽が日本海へ傾きだすと、それに呼応するように刻々と表情を変え、いつまでも眺めていたい気分にさせられる。田んぼの中には通路が張り巡らされ、一般客も立ち入って見る事ができるというので、急な斜面を下って田んぼの側へ行ってみた。展望台から見ると庭園のような景観も間近でみると、しっかりと畦塗りがされて引き締まった見事な田んぼに、稲が力いっぱい成長している。冬には強風に晒され、夏にはむせかえるような湿気の中、きつい傾斜を幾度となく往き来しながらの米作りの大変さから、にわかに荒れ始めていた棚田だったが、この美しい景観を守るため所有者を中心に組織された「白米千枚田愛耕会」による耕作・保存活動が行われ、オーナートラスト制度で協力者を募り、ボランティア参加による田植え・稲刈りイベントの開催など、地域を越えた力で日本の原風景「白米の千枚田」が守られている。

明日は能登半島を後に、富山へと移動します。
引き続き、素晴らしい日本の魅力をお届けしますので、お楽しみに。


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