次の訪問地、新潟市に向かう途中、10年前に訪れた黒部川に立ち寄る事にした。当時、黒部川の環境整備に躍起になっていた「黒部川水のフェスティバル」実行委員から“この場所を子供たちが黒部川と触れ合う場として育てて行きたい”という夢を聞いていたので、一体どんな進化を遂げているのか見たいと思ったからだ。
黒部川は源流から河口まで僅か85キロと極端に短い距離を、豊富な水量が突進する、通称「暴れ川」と呼ばれ、川に近づく事はタブーとされていた。しかし10年前、子供たちが川の水と触れ合い、もっと身近なものとして親しんでもらえるようにと、河川敷に水路を引いて魚の道を確保し、周囲に緑地帯を作って市民に開放される事になった。年一回開催される「水のフェスティバル」では、川に流れ着く「流木」で作った流木アート展や、河原の石に自由にペイントをして護岸壁を飾り、石のタイムカプセルとして次世代に残そうという試みが始まったばかりだった。
国道8号線を黒部大橋の前で右折し、黒部川沿いに奥へと進むと、きれいに整備された芝のグラウンドで富山県警の救難ヘリコプターがホバーリングしながら上昇下降を繰り返し、山岳救助の訓練を行っていた。因みに早朝のTVニュースでは、同型のヘリコプターが黒部川支流で遭難した家族を救助している様子が映し出されていた。無事救助されたのも訓練の賜物だろう。
当時の記憶を頼りに、石や流木のアート作品が並んでいた場所を探すがなかなか見つからない。河川敷をウロウロしていると電力会社の派手なカラーリングのランクルに出会った。もしかして知っているかも知れないと思いクルマを停めて尋ねた。「あ~、人工の水路ね。200mぐらい行った土手側にありますよ。」早速、この暑い日に涼を求める子供たちが楽しく遊ぶ光景を思い浮かべながら、その場所へ向かった。
小さな水路にチョロチョロと水が流れ、護岸の石には剥げかけた絵の具が寂しげなアート作品、所どころに転がるように落ちている流木アート。雑草一本生えていない整備された芝生のパークゴルフ場に囲まれ、水路にも途中に作られたビオトープにも魚や水生昆虫の気配はなく、水と戯れる子供たちの姿はどこにも見当たらない。ゴルフに興じる大人たちの笑い声とバタバタという救助へりのローター音の下で、子供達のためにと描いた夢が空しく残るばかりだった。どのような経緯があったのかは不明だが、かつて目指したはずの“水と触れ合う夢の遊び場”を、もういちど実現して欲しいと願いながら、黒部川公園を後にした。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,北陸
トラックバック Uri
最近のコメント