能登有料道路を北へ向かうと、横田インターチェンジ辺りで杉林に覆われていた道路際の視界がぱっと開け、美しい田園風景が広がる。七尾市中島町を流れる熊木川中流域には、手入れの行き届いた田んぼを従えた立派な農家の建築群が建ち並んでいる。能登の家屋の代名詞ともなっているピカピカの黒瓦に板壁が特徴的で、近隣どうしで示し合わせたような統一感がある。穂が重みを増して垂れ始めた黄緑色の田んぼに黒瓦の引き締まった建物、遠くには風力発電の風車がゆっくりと回転し、用水路の脇には向日葵が植えられ、景観を一層引き立たせている。
社会や環境に適応しながら何世紀にも渡って発達し、形づくられてきた土地の利用、伝統的な農業とそれに関わって生まれた文化、景観や生物多様性に富み、世界的にも重要な地域を次世代に継承する事を目的とし、イタリア・ローマに拠点を持つ国連食糧農業機関(FAO)が創設した「世界農業遺産」に今年6月、能登の里山里海が認定されたという(先進国としては初「トキと共生する佐渡の里山」とともに認定)。幾代にも渡る持続的な農林水産業の継承によって育まれた素晴らしい景観と、その舞台で脈々と生きづく伝統的な技術、文化、祭礼などが高く評価されたもので、この地に足を運んで目の前に広がる景観をみれば当然の結果に誰もが共感できるだろう。
エコミッションで日本各地を巡っていると、目抜き通りには全国展開する大型チェーン店が軒を連ね、その地域が本来備えていたであろう伝統風景が失われている事に落胆することも多いのだが、こんな風景が点在する奥能登地方には、あらためて魅力を感じる。奥能登を訪れる機会があれば有名観光地だけでなく、何気ない農村に目を向けてみてはいかがだろう。田んぼを歩き、農家の建物を見てまわると、細かい所にまで手入れが行き届いた環境で、地に足のついた丁寧な暮らしが続けられている事に気づくのではないだろうか。
明日は能登半島最北端の町、珠洲の魅力をお届けします。
お楽しみに。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,北陸
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