九州へ向かうために本部港フェリーターミナルへ着くと、水平線にポツンと見える白い船影が一直線にこちらへ向かって進んでくるのが見える。やがて大きく右旋回すると、早送り再生しているかのように急速に膨張し、圧倒されるような大きさで波止場へ接岸した。出航予定時刻まで15分しかない。急いで乗船手続きを済ませて車列の最後尾に並ぶと、すぐに先頭のクルマが船体後方にぽっかりと開いたゲートに吸い込まれて行く。係員がフロントガラスに貼付ける認識表を配りながら、プリウスPHVに興味津々といった眼差しで話しかけてきた。家庭のコンセントから充電できるクルマに乗って沖縄を巡り、次の訪問地である九州へ向かう事を告げると、激励の言葉を掛けてくれた。
乗船の順番が回ってきたのでゲートを上り、薄暗い船内へ進む。スロープとフロアをぐるぐると回りながら3階の駐車スペースへ停車してクルマを預けると、アンカーロープで固定されて積載完了となった。渡航中の1泊2日間はクルマに戻る事は出来ないため、出発前に小分けにした手荷物を持って船室へ向かった。
■車両積載の様子
汽笛の合図でエンジンの唸るような振動とともにゆっくり離岸し、ひと呼吸おいて後方のプロペラが勢い良く回ると、泡を含んだ海水がクリームソーダのような波紋を吐き出しながらスピードを増して行く。本部港がみるみる小さくなり、沖縄の思い出を乗せた船は外洋へ出た。
伊江海峡を過ぎたあたりから、甲板に出ているととばされそうな程の強風に見舞われた。船は大波を乗り越える度に大きくピッチングを繰り返し、20メートル以上もある最上段の甲板にまで波しぶきが飛んでくる。見える範囲の海面は白く泡立ち、6,300トンもある大きな船体を揺らし続けた。船内放送では悪天候のため寄港予定の変更が告げられ、この後、鹿児島港へ到着するまで激しい揺れと格闘しながらのハードな船旅となった。
■船体を揺さぶる波
フェリーは沖縄本部を出航し、与論島・沖永良部島・徳之島・奄美大島に寄港しながら鹿児島港を目指す。4月初旬の別れと出会いの時節、立ち寄る港ごとにドラマがあった。すっかり陽が落ちた21時30分、奄美大島の波止場は家族や友人を見送る群衆でごった返していた。進学や就職で故郷の島を後にする若者が大勢乗り込み、何本もの紙テープを大事な人めがけて投げ落していく。クモの巣のように張り巡らされた思いの丈の向こうから“でっかい夢を掴んでこいよ〜” “お前ならがんばれるぞ〜” “身体に気をつけて〜”と声が枯れるほどの激励が飛び交っている。やがて出航の時が訪れると、叫びにも似た声援が頂点に達し、見送られる若者たちは目に一杯の涙を浮かべながら手を降り続けていた。次々と千切れては暗い海へと消えてゆく紙テープが哀愁を誘う中、いつまでも島のどこかの校歌が聞こえていた。
夜が開けて鹿児島湾へ入ると正面には頂きからモクモクと噴煙をあげる桜島が見えてきた。設備の整った鹿児島港では、アンカーロープを機械が巻き取り、吸い付くようにすんなりと接岸する。予想外の時化で荒れた航海も無事に終わり、ついに九州へ上陸した。抜けるような晴天の中、咲き誇る桜を愛でながら九州自動車道を北上、最高のドライブ日和の中、今日の宿泊地熊本へ到着した。
プリウスPHVには、専用開発の「グッドイヤー GT3」が装着されている。転がり抵抗を極限まで切り詰めながら、「曲がる」「止まる」というコントロール性能の高さをも合わせ持つ低燃費エコタイヤだ。沖縄での燃費チャレンジに貢献した事は言うまでもないが、バッテリーを追加し、現行プリウスより100kg以上重い車体でも快適でソフトな乗り心地は保たれたまま、きつめのカーブをスピードを上げて駆け抜けてもヨレを感じる事がなく、プリウスPHVにベストマッチなタイヤだと実感している。
カテゴリー: ECO-MISSION2011,九州
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