エネルギー資源が乏しい国と言われ続け、そのほとんどを輸入に頼ってきた日本。近年、太陽光や風力などの自然エネルギーはもとより、海底深く眠る“燃える氷”メタンハイドレートや、石油生産藻オーランチオキトリウムなど、次世代の資源開発が話題となっている。しかし、精製・運搬技術の確率や、莫大な開発費などの課題も多い。
今日訪れた先は、半世紀も前から個人の技量だけでエネルギー自立した達人のお宅。
御年83歳にして冴え渡る創意工夫と経験に裏打ちされた驚きの技とは。
南関東一帯の地下に眠る豊富な天然ガス
南関東一帯は240万年〜40万年前には深い海の底だったが、地殻変動で隆起し現在の陸地が形成されたという。海底だった遥か太古、海草類や生物などの有機物が堆積してメタンガスになり、封じ込められたエネルギー資源が眠っているのだ。
1891年(明治24年)房総半島中央部の茂原周辺で、井戸を掘っていた穴に偶然タバコを投げ入れ燃え上がった事から、その存在が知られる事となった。産業としての始まりは意外に古く、1931年(昭和6年)というから、もっと広く知られていても良さそうなものだが、周辺の都市部に配慮した開発規制が布かれているため、大規模な開発が見送られてきたのである。しかし周辺には現在の年間消費量の600年分が埋蔵されており、更なる開発を望む声も聞かれる。
マイガス井を堀り、自前のエネルギーを手にする
産業用として掘り出されている天然ガスの層は地下500mにあるため、本格的な掘削によって建設されたガス井から大型タンクに保存されるが、九十九里平野部にある長生村周辺では浅い地層にも広がっており、上総堀(かずさぼり)という昔ながらの井戸堀りの技術で掘り当てる事ができるという。それを50年も前から仲間とともに実践し、「自前のガス井」を持つ水道屋さんが居るというので訪れてみた。
田んぼに囲まれた古民家風の大きなお屋敷から現れたのは、江沢 要さん83歳。にこやかな笑顔で出迎えてくれると、さっそくガス井を見せてくれると言うので庭の隅へ。
「これがそうです。囲いを外していますから火を着ければ燃えますよ。」
見ると地面から突き出た15センチ程の筒の先から、シュワシュワと泡が吹き出している。江沢さんがライターを取り出したので、一同“えっ”と身構えたが、笑顔で火を着けて見せた。
音もなく揺れるオレンジ色の炎は、危険を感じる事はなく、むしろ穏やかで優しい気持ちになるから不思議だ。
天然ガスをエネルギーとして活用するためには、ガス井に囲いをして水とガスを分離させ、パイプを通して家屋へ引き込む。敷地内には3つのガス井があり、それを集めて調理や風呂沸かしなど一般家庭で使っているガス器具のすべてを賄っている。しかも江沢さんは、井戸掘りから配管までの一切を自分で創意工夫して「エネルギー自立」を成し遂げていた。自宅の庭先から掘り当てたガスで生活出来るとは、何ともうらやましい限りだ。
孫やその先の世代に伝えたい資源
江沢さんは50年前、たまたま井戸職人が掘っているのを見て「これなら自分にもできる」と思い立ちガス井を掘り始めて以来、地層の方向を見極めたり、掘り出した土の状態を観察したりと、自分なりの創意工夫を重ね、ようやく高い確率で掘り当てる事ができるようになったという。
「私はガス井を掘り当てる技術を見込まれて水道屋になりました。天然ガスという長生村が授かった資源を活用する方法を残し、孫やその先の世代へ伝えたいですね。」
優しく穏やかな御大と思いきや、豊富な知識とガス井に向けた情熱を放つ姿は、とても若々しく輝いていた。
自前のガス井でエネルギー自立する江沢さん
本日はとても興味深いお話を伺いありがとうございました。
いつまでもお元気で、次の世代に技術を繋げてください。
明日は千葉県の最終日。
安全、安心、美味しい をお届けする予定です。
カテゴリー: ECOMISSION2013,エネルギー,千葉県
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