9月 5日 2013

カンパチが水揚げされてきた

カンパチが水揚げされてきた

まだ薄暗い尾無漁港を、一隻の漁船が勇ましく出港して行く。よほど海が荒れていなければ仲間と一緒に船を出すと言っていた、この民宿の主、茂刈さんたちの船だ。降りしきる雨の中、向かう先は沿岸に仕掛けた定置網で、この辺りでは「大敷」と呼ばれる伝統漁法の漁場だ。

昨夜の夕食で談笑中、茂刈さんから

「漁を終える“沖あがり”の頃合いに電話で連絡するから、水揚げを見に来るといいですよ。」

出港から数時間後、女将さんに声を掛けていただいたので、雨具を羽織って飛び出し、数キロ先の宇田浦漁港へ向かった。雨脚は一向に弱まる気配もなく、プリウスPHVのワイパーは全開、水たまりを越える度にバサッバサッと水のぶつかる音が響く。

茂刈さんの乗る「第一尾無丸」が帰って来た

茂刈さんの乗る「第一尾無丸」が帰って来た

宇田浦漁港へ到着すると「第一尾無丸」はすでに接岸していた。茂刈さんも漁師の“正装”ブルーのゴム引き姿も勇ましく、船から降りて水揚げの準備を始めている。民宿に居る時とは明らかに違う、引き締まった表情がカッコイイ!

引き締まった表情が魅力的な漁師の茂刈さん

引き締まった表情が魅力的な漁師の茂刈さん

船に選別台が据えられるとクレーンから吊られた網が生け簀に降ろされ、大きな銀色の塊が持ち上がり台へ放たれた。ぴちぴちと跳ね上がる大量の魚、魚、魚。すぐさま魚種や大きさを選別して氷漬けにされていく。このスピード感たるや、鮮度を保つための手際の良さが光る。

水揚げと同時に選別がはじまった

水揚げと同時に選別がはじまった

カンパチ、カマス、小鯛、カワハギなど多くの魚種が穫れていたが、この日のメインはゴマザバ。痺れたようなブルブルとした青物特有の動きと、締まった魚体が、鮮度の良さを物語っている。目の前の海で穫れる「大敷」の魅力がここにあるのだろう。

この日のメインはゴマザバ

この日のメインはゴマザバ

ほとんどの魚はすぐに市場へ出荷されるが、その一部は奈古漁港前の「道の駅阿武」で直売もされている。もしも訪れる機会があれば、手に取って抜群の鮮度と値段の安さを感じていただきたい。

江戸時代の初期に始まった大敷網漁は、かつて西日本の各地で行われ、沿岸漁業の中心的な役割を担っていたが、近年の沿岸漁業の不振に伴って次々と廃止された。阿武町の宇田浦、尾無の2か所の大敷は現存する数少ない漁場だという。大敷にかける地元の方々の思いは強い。

GAZOO mura 阿武の漁家民宿「浜の小屋」に宿泊し、3回の食事をいただいたが、どれも魚づくし。女将さんの料理の腕もさる事ながら、何と言っても鮮度の良さに惚れ惚れする格別なご馳走を堪能させていただいた。主の茂刈さんは、東京からUターンで漁師と民宿を始めたというが、これまでに各地を旅し、ジャズとクラシックを愛する、漁師としては異色の方だ。この辺りを再訪する機会があれば、また宿泊させていただきたいと思う。

海のムラ 阿武「第一尾無丸」の水揚げ風景



カテゴリー: ECOMISSION2013,Gazoo mura,山口県

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