6月 22日 2013

千波湖畔に建つ徳川光圀像

千波湖畔に建つ徳川光圀像

那珂川を行き来する水運の港(戸口)に由来する「水戸」。そう呼ばれるようになったのは600年前、室町時代にまで遡る。長い歴史を誇った水の都は、陸上交通網の発達で港としての役目を終えたが、その地名は今に残る。先人たちが大切にしてきた“水に親しむ”心は世代を超えて受け継がれ、市街地の中心部を流れる桜川や千波湖には多くの市民が集う。

“水”環境に重きを置く水戸では、1610年に那珂川の豊かな水を引き入れ、右岸の低地を潤す大用水「備前堀」の開削が行われ、延長12kmにもおよぶ水路が引かれると、21ケ村、1,000haを超える農地に水が行き渡った。また、1932年(昭和7年)には近代上水道の工事が行われ、利水環境が大きく前進する。

ゴシック様式が美しい水道低区配水塔

ゴシック様式が美しい水道低区配水塔

水道の近代化を象徴する登録有形文化財

水戸市は早くから治水の近代化に力を入れてきた。その象徴とも言える歴史的建造物が80年以上も前に建てられた「水戸市水道低区配水塔」だ。ゴシック様式を取り入れた洋風の建物は、随所にこだわりが感じられる装飾が施され、見るものを魅了する。外観の美しさばかりに目を奪われがちだが、配水能力にも優れており、市内低地地域へ一定の水圧で水道水を送り出して来た。2000年に配水塔としての役目を終えたが、現在でも非常時の飲料水備蓄施設として市民の安全・安心を支えている。

水辺の危機“アオコ”の大量発生

市街地を流れる桜川と注ぎ込む千波湖は、水温が上がる今の時期になると“アオコ”が大量発生し、市民を頭を悩ませているというが、どんな事態なのか…。宿泊先で無料貸し出ししている電動アシスト自転車で、周辺を散策してみる事にした。

車道から一段高い土手道に駆け上がると、鮮やかな緑色の川面が見える。一瞬きれいな色調に惑わされるが、側へ近寄ってみると細かい粒の藻類が水面を覆い尽くし、わずかに異臭を放っている。水を汲み取って、持参したHORIBA製のPH測定器で計ると「ph7.4(中性)」。ペーハー値には異常は見られものの、「BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量) 」「COD(chemical oxygen demand:化学的酸素要求量)」といった測定を行えば、水棲生物が暮らす環境としての基準値をクリアしていない事は明らかだ。

千波湖につながる桜川はph7.5中性

千波湖につながる桜川はph7.5中性

千波湖に移動して同じようにPHを計測。こちらは「ph9.5(アルカリ性)」と出た。あまりの違いに誤計測を疑ったが、何度計っても同じ値を表示する。後で水戸市のホームページに公表されている計測データと照らし合わせると、やはり間違いなくph8〜10を記録していた。

どちらにも鴨やコクチョウなどの水鳥が群れをなしているが、水中を覗くと、鯉が数尾いたものの水棲昆虫などの姿は無く、酸素が欠乏しているものと推測できる。これほどまでにアオコが発生している原因を調べてみると、様々な要因が考えられるが、主に桜川の護岸工事に起因する事が分かった。

治水工事で河原を撤去し川床を掘り下げたため、水を浄化してくれる好気性バクテリアの棲む場所が減少、流れが緩やかになったのに加え、もともと森の養分を含んだ湧水が豊富なため、藍藻類の大発生“アオコ”に繋がったのだ。

千波湖はph9.5とアルカリ性

千波湖はph9.5とアルカリ性

古くからの水都の住民がこの事態をただ傍観しているはずもなく、市民と行政恊働の水環境の保全活動が始まっている。千波湖には2003年、親水デッキやカフェがオープンし、水をより身近に感じられるスペースを提供する一方で、ジェット水流で酸素を送り込んだり、湖畔に市民の手によるビオトープを作って維持・管理を続け、多様な生物のチカラを借りて水質浄化を促している。地道な努力の甲斐があってか、この数年で桜川、千波湖ともに水質の改善が見られ、少しずつアオコも減ってきているという。“泳げる千波湖を取り戻そう”という目標を掲げ、水面を見つめる水戸市民の活動は続いている。

水辺に遊ぶ水戸っ子

水辺に遊ぶ水戸っ子

水戸市街の桜川、千波湖を訪ね、ペーハーを計ってみた



カテゴリー: ECOMISSION2013,茨城県

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