山々に囲まれた田園風景の中に佇む赤い屋根の木造校舎。校庭を子供たちが走り回り、それを目を細めながらやさしく見守る先生たち。もしも“理想の小学校”を思い描くとしたら、いま目の前に広がる光景になるのかも知れない。子供たちと先生が、まるで大きな家族のように集う学び舎を訪ねた。
滞在している松山市街から伊予の町を抜け海岸線を南へ。陽が西に傾き始めた山間の静かな田園風景の中に、赤い屋根の美しい建物が見えて来た。脇道へ逸れて校門の前まで来ると、その存在感溢れる姿にスタッフ全員が引き込まれる。
この学校を紹介してくれた、松山在住の仙波さんと校門前で待ち合わたが、少し早く到着したので、いったん大通りへ引き返して待とうとしてクルマを走らせると、大きく手を振りながら追いかけて来る姿がバックミラーに映った。慌ててクルマを停めて挨拶を交わす。
「チームACPのみなさんですよね。ようこそ翠小学校へ。」
何と、50メートル全力疾走してくれのは、この学校の校長先生だった。
昇降口の脇にある大きな“ギンモクセイ”がほのかな香りを放ち、西へ傾き始めた陽の光が、ゆっくりとした時間が流れている。プリウスPHVを校庭の端に停めると、すでに授業を終えた子供たちや先生方が集まってくれた。
せっかくなのでプリウスPHVの電気を使って子供たちを楽しませようと、ヴィークルパワーコネクターを“カチン”。持参しているLED照明、信号機、シャボン玉などを接続し、ミニデモンストレーションの開始となった。
少しの時間だったが、プリウスPHVから取り出した電気の実演を子供たちや先生方に楽しんでもらえた。見てくれたお礼にささやかなプレゼントを手渡していると、ひとりの女の子が言った。
「ひとりがもう帰ってしまったので、代わりにひとつ預かってもいいですか?」
この学校に通う全校児童は15名。まるで家族のように学ぶ友達を気遣っての事だった。何とも微笑ましく健気な心を持っているのだろうと、感心したのと同時に、こんなにも澄んだ心を養える学校がうらやましくも思えた。競争ばかりに気をとられている学校が多いように思うが、皆さんはどう感じるだろう。
木の温もりが溢れる校舎の中を校長先生に案内していただいた。改築されたとは言え、80年前から使われ続けて来たものを上手く融合させているため、しっとりとした趣きを感じる。長年の使用で角が取れた階段、木の香り漂う長い廊下、細い桟が格子状に組まれた窓から差し込む柔らかな陽の光。どこを切り取っても美しく、気品がある。
もちろん、コンクリートの校舎でも、素晴らしい環境の学校はたくさんあるし、人間形成に関係することは少ないかも知れない。しかし、小学生の時に自然のものに囲まれて心の中に入ってきたものは、生涯を通じて忘れることはないだろう。この素敵な場所で“家族”に見守られながら、巣立って行く子供たちは、本当に幸せだと思う。
愛媛県伊予市立翠小学校訪問
カテゴリー: ECOMISSION2013,愛媛県
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