9月 7日 2013

「あったか村」管理棟

「あったか村」管理棟

日本海を望む萩市須佐地区から国道315号線を10kmほど南下し、目指す“山のムラ”へと続く県道10号を進むうちに、頭上にぽっかりと青空が覗き始めた。久しぶりに顔を出した太陽が、色付き始めた稲穂を黄金色に輝かせ、深い緑の山々、秋めいた紺碧の空とのコントラストが目にも鮮やか。まるで、向かう先に待っている素晴らしい出会いを約束するかのように、陽の光は強さを増していった。

GAZOO mura 阿武の「山のムラ」は福賀地区という山間に広がる盆地だ。この集落の中心部からさらに谷沿いの曲がりくねった小道を進むと、山に囲まれた田んぼの傍らに農家民宿を営んでいる樵屋(きこりや)さんが見えてきた。近くに隣家も見当たらない自然いっぱいの一軒宿だ。昨年訪れた白神山地の熊の湯以来、久しぶりに携帯電話が繋がらない非日常に胸がときめく。

堂々とした佇まいの農家民宿「樵屋」

堂々とした佇まいの農家民宿「樵屋」

樵屋の主、白松さんは「あったか村」で家作り体験を開催している。あったか村とは限界集落を丸ごと買い取り、在来工法の家作りを通じて人々がふれあう交流の場だ。地元の学生を中心に海外留学生も参加して、力を合わせて家を手作りしながら、真に豊かな生活を再発見してもらい、定住へ向けたムラづくり・共同体づくりを目指しているのだ。

※家作りに携わるムラ人や学生たち

※家作りに携わるムラ人や学生たち

明るい太陽を浴びて輝く「あったか村」を眺めながら白松さんが言う。
「こんな村が、こんなところに、あったのか、と言ってもらえるような村を作りたいのです。過疎の村をこんな風に再生して、定住の里つくりの足がかりにしたいし、何と言っても、地域の温かい“溜まり場”になっていけばこんなうれしいことはありません。」

あったか村の住居はもちろん手作り

あったか村の住居はもちろん手作り

2003年にスタートした「あったか村」は管理棟、製材作業場を中心に、一般住居や東屋、共同トイレなどがバランス良く配置され、新しい建物も増え続けている。将来はここから巣立つ子供たちが現れるのを心待ちにしているという白松さんの理想郷は、仲間達に支えられながら、ゆっくりと確実にムラへ近づいているようだ。

チャンスがあれば忙しい日常から離れ、山のムラ(GAZOO mura 阿武)で家作りを体験して見てはいかがだろうか。本当に豊かな暮らしについて、ゆっくりと考えさせられる有意義な時間を過ごせるかもしれない。

ゆっくりだが確実にムラが出来上がってゆく

ゆっくりだが確実にムラが出来上がってゆく

白松さんは転落事故で脊椎を損傷し、車いすで生活するようになった時、今の自分に何ができるのか、一生懸命考えていたという。そして、一番不自由を感じていたトイレに着目し、バリアフリートイレを専門に扱う会社を起業した。全国のバリアフリーと名のつくトイレを片っ端から見て回り、障害者やお年寄りが快適に使えるトイレを試行錯誤の上に作り上げた。使い勝手だけでなく処理に関しても、無駄な水を流さないエコバイオトイレ(無放流タイプ)を考案するなど、本当に使いやすく環境にもやさしいトイレを追求している。

※白松さんが研究を重ねて設計したバリアフリーのトイレ

※白松さんが研究を重ねて設計したバリアフリーのトイレ


(※白松さん提供写真)

山のGAZOO mura 阿武



カテゴリー: ECOMISSION2013,Gazoo mura,山口県

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