6月 27日 2013

水にカタチを換えて電気エネルギーを蓄えた沼原湖

水にカタチを換えて電気エネルギーを蓄えた沼原湖

発電所で作られる電力量には限りがある。もしも電気が足りなければ停電するのは当然で、実際に東日本大震災の直後に実施された計画停電は記憶に新しい。では、余った電気はどうなるのか。現在のところ、スマートシティーの試験運用などで小規模な蓄電が行われているが、残念ながら、その大半は使われずに消滅してしまうのが現状だ。

今から44年前の1969年、逆転の発想で “エネルギーの保存” を実現し、世界初の技術が多くの賞賛を呼んだ沼原(ぬまっぱら)発電所を訪れ、その秘密に迫った。

どんよりとした空から小雨が落ちる薄暗い朝だ。時折ぱらぱらと音を立てて大粒の雨も混じり、ダム湖へ向かう山道はすこぶる視界が悪い。プリウスPHVのフォグランプを点灯して慎重に昇ると、雨霞みに包まれた幻想的な深山湖が現れた。

事務所前にはヘルメット姿も凛々しい、電源開発沼原発電所の横山さん、大浦さんが私たちの到着を出迎えてくれた。挨拶を済ませて事務所内へ通されると、揚水発電の仕組みについて説明していただいた。

エネルギーを転換する揚水発電

時間帯や季節によって電力消費量にはバラツキがある。例えば真夏の午後、涼を求めて一斉にエアコンをつけると、当然たくさんの電気が必要になるし、反対に過ごしやすい季節の深夜帯には消費量は少なくなる。そこに着眼し、消費量の少ない時間帯の余った電力を使って、電気エネルギーを位置エネルギーに転換しようという発想から生まれたのが揚水発電だ。

仕組みは至ってシンプルなもの。高低差のある2つのダム湖をパイプで結び、ポンプ水車を取り付ける。電力消費が少ない時に余った電気でポンプ水車を回転させて、高い方のダム湖へ水を汲み上げる。電気が足りなくなった時には低い方のダム湖へ落差を利用して水を戻し、その水圧でポンプ水車を回転させて発電する。需要と供給のギャップを埋める画期的な方法として建設された沼原発電所は、その高低差500m超を世界で初めて達成し、3基の発電機の最大出力は675,000kWと最大級の火力発電1基分(一般家庭22万世帯分)に相当する。

地下発電所メインフロア

地下発電所メインフロア

プリウスPHVを駐車場に停め、電源開発さんの用意したクルマに乗り換えて発電所のある地下300mへと続くトンネルを進む。勾配の感覚が麻痺し始めた頃、ヘッドライトが照らし出す闇の向こうに地下発電所の灯りが見えてきた。

技術の粋を集めた巨大な地下発電所

発電所は幅22m×高さ45.5m×長さ131mに4層のフロアを持つの巨大な地下空間だ。ここにあるパイプ、バルブ、ボルトなどなど、形状は見慣れたものだが、あまりにも大きく、巨人の世界に迷い込んでしまったような感覚にとらわれる。

3基ある発電機のうち1基は、15年に一度実施されるという分解整備の真っ最中。巨大で、しかも精密に造られたパーツが並ぶ貴重な光景を目にする幸運にも恵まれた。4つのフロアを貫く直径1mもの主軸、発電ユニット(クルマで言うオルタネーター)の直径は15m、重さ400トンという超ヘビー級、始動を補助するモーター(クルマに例えるとセルモーター)ですら大人3人が手を繋ぐほどの大きさがある。この施設や器機を40年以上も前に築きあげた、日本の底力につくづく感心させられた。

長い年月を経ても尚、厳密なメンテナンスで稼働しているこの発電所は、コンピューター制御部分の再構築も始まっており、まだまだ現役ばりばり。これからも日本のエネルギーを陰で支え続けて行くに違いない。

沼原発電所のポンプ水車は、2009年に国立科学博物館「重要科学技術史資料」(未来技術遺産)に選定されている。

発電機主軸の最深部

発電機主軸の最深部

地下300mの沼原発電所

メンテナンス工事中にも関わらず、
揚水発電の仕組みを分かりやすく案内していただいた
電源開発(株)沼原発電所 所長の横山さん、大浦さん
ありがとうございました。



カテゴリー: ECOMISSION2013,エネルギー,栃木県

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