10月 6日 2013

煙突と角のような排気口が特徴の「釜屋」。

「塩田だけでは塩は出来ません。海水の塩分濃度を18%ぐらいまで高めた鹹水(かんすい)作るために塩田を使います。塩は、その鹹水(かんすい)を釜で煮詰めて作るんです。」

流暢に、そして丁寧にそう話すのはスタッフの宮本さんだ。

播磨灘の恵み「赤穂の塩」を、江戸時代から続く伝統の製法で作っている赤穂市立海洋科学館「塩の国」を訪れ、“塩の生き字引”のような宮本さんの指導のもと、塩づくり体験に挑戦した。

赤穂市立海洋科学館「塩の国」は、70ヘクタールを超える敷地に、海水を引込んだ“人工海”を持つ赤穂海浜公園内にある。

ここは、現在主流となっているイオン交換膜製塩法が開発されるまで数百年間、広大な塩田があった場所で、今も現役で“赤穂の塩”が伝統の製法で作られている。

赤穂市立海洋科学館「塩の国」がある兵庫県立赤穂海浜公園にやってきた。

「塩の国」がある赤穂海浜公園は、70ヘクタールを超える広大な敷地に、海水を引込んだ“人工海”がある。ビーチに面したキャンプ場や遊園地などもあり、ファミリー層に人気の場所だ。

潮の干満差が大きい播磨灘を望む

潮の干満差を利用した入浜式塩田

長い日照時間や火成岩質の砂など、塩田に適した条件が揃っていた赤穂周辺は、古くから塩づくりが行われていた。江戸時代前期になると、瀬戸内海の大きな潮の干満差を利用して海水を水路に取り込む「入浜式塩田」が考案され、現在でもその巧妙な仕組みを利用した塩田が使われ続けている。

施設内に引込まれた天然の海水を塩田へと導いている。覗き込むと海藻の間を小魚が群れ泳ぎ、まさに海そのもの。

塩田施設に隣接する「内海」。潮の干満差は2mにもなる。

満ち潮を利用し、外周の水路に取り込まれた海水を砂地に撒いて「鹹水(かんすい)」を作る「入浜式塩田」全景。

満ち潮の時に水門を開き、塩田の周囲に掘られた水路に海水を取り込む。

外周の水路に取り込まれた海水は塩田で「鹹水(かんすい)」にされ、木製の樋によって集められる。溜まった鹹水は「つるべ」で釜へと移される。

狭い土地でも効率よく鹹水を作れる流下式塩田

砂の代わりに立体的な枝状の「枝条架(しじょうか)」を利用して、効率よく鹹水にする方法が「流下式塩田」だ。竹をほうきのようなカタチにまとめて階層を持たせた木枠に取り付け、海水を掛け流して水分を飛ばす。これは近年まで主流だった方法だという。

竹をホウキのような枝状のカタチにして重ねた「枝条架(しじょうか)」に、汲み上げた海水を流し、水分を飛ばして塩分濃度上げる方式の「流下式塩田」。

枝の先からは水分が蒸発して濃度が上がった海水が滴り落ちてくる。

表面積を増やして水分の蒸発を促すため、砂を波形に整えている。

鹹水(かんすい)を煮詰めて塩を作る釜。

塩の事を詳しく知るための展示館も併設されている。

鹹水からの塩づくり体験

海水の塩分濃度は3%前後しかないが、塩田で水分を飛ばした鹹水は18%にまで上がっている。「塩の国」では、施設スタッフの指導のもとで、この鹹水を使った塩づくりを無料で体験できる。

まずは塩田の種類や仕組み、塩づくりの歴史などを解説していただいた後、釜に見立てた土鍋に鹹水を入れてコンロで加熱する。ふつふつと沸騰してきたら、ただひたすらにヘラでかき混ぜる。少しずつ変化して行く鹹水の具合を見ながら、そぼろ状にになった所で火を止め、後は余熱で完全に水分が無くなるまでスプーンでつぶしながらかき混ぜると、サラサラの天然塩が完成する。

文章にすると簡単そうに感じるだろうが、15分以上、かなりの早さでかき混ぜないと上手く水分が飛ばないし、何しろ熱い。指導してくれた宮本さんの手つきはさすがにスムーズで、まるでヘラが踊っているように見えた。

苦労して出来上がったサラサラの天然塩を試しに舐めてみたが、まろやかな旨味と、わずかな苦味を感じる美味しい塩に仕上がっていた。天ぷらや白身魚のお刺身にうってつけの味だ。施設内ではこの天然塩のほか、ニガリ成分を取り除いた結晶塩も購入できるが、やはり自分で作った塩の味は格別。しかも無料で体験できるので、ここを訪れた時には挑戦してみてはいかがだろう。

製法や歴史など、塩に関するいろいろな事を分かりやすく解説してくれる塩の国スタッフの宮本さん。

塩づくり体験の注意事項を説明してくれた。火を扱うのでやけどに気をつけよう。

塩分濃度18%の鹹水(かんすい)から塩をつくる体験のスタート。休まずかき混ぜないと、上手く水分が飛んでくれない。

開始3分、早くも底のほうに塩が溜まってくる。もうすぐ完成かと思いきや、ここから15分、ひたすらかき混ぜる作業が続く。

だいぶ腕がクタビレタころ、ようやく糊状になってきた。

ほとんど水分が蒸発してぽろぽろになってきた。ここからは火を止め、余熱で作業を続ける。

“だま”をスプーンでつぶして粒子を細かくして行く。

完全に水分が蒸発し、サラサラの天然塩が出来上がった。舐めてみると、まろやかな塩気の中に旨味を感じる。天ぷらや白身魚の刺身には最高の塩だ。

集団でやってきた小学生は、4泊5日の野外活動の一環として塩の国を訪れたという、姫路市立中寺小学校5年生の児童たち。

子供たちも塩づくり体験に挑戦。

宮本さんの丁寧な指導で塩づくりが始まった。

「忠臣蔵」で知られる赤穂浪士ゆかりの赤穂城址。塩が赤穂藩の財政を豊かなものにしていた。

赤穂の塩づくり体験



カテゴリー: ECOMISSION2013,兵庫県,環境

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