「塩田だけでは塩は出来ません。海水の塩分濃度を18%ぐらいまで高めた鹹水(かんすい)作るために塩田を使います。塩は、その鹹水(かんすい)を釜で煮詰めて作るんです。」
流暢に、そして丁寧にそう話すのはスタッフの宮本さんだ。
播磨灘の恵み「赤穂の塩」を、江戸時代から続く伝統の製法で作っている赤穂市立海洋科学館「塩の国」を訪れ、“塩の生き字引”のような宮本さんの指導のもと、塩づくり体験に挑戦した。
赤穂市立海洋科学館「塩の国」は、70ヘクタールを超える敷地に、海水を引込んだ“人工海”を持つ赤穂海浜公園内にある。
ここは、現在主流となっているイオン交換膜製塩法が開発されるまで数百年間、広大な塩田があった場所で、今も現役で“赤穂の塩”が伝統の製法で作られている。
潮の干満差を利用した入浜式塩田
長い日照時間や火成岩質の砂など、塩田に適した条件が揃っていた赤穂周辺は、古くから塩づくりが行われていた。江戸時代前期になると、瀬戸内海の大きな潮の干満差を利用して海水を水路に取り込む「入浜式塩田」が考案され、現在でもその巧妙な仕組みを利用した塩田が使われ続けている。
狭い土地でも効率よく鹹水を作れる流下式塩田
砂の代わりに立体的な枝状の「枝条架(しじょうか)」を利用して、効率よく鹹水にする方法が「流下式塩田」だ。竹をほうきのようなカタチにまとめて階層を持たせた木枠に取り付け、海水を掛け流して水分を飛ばす。これは近年まで主流だった方法だという。
鹹水からの塩づくり体験
海水の塩分濃度は3%前後しかないが、塩田で水分を飛ばした鹹水は18%にまで上がっている。「塩の国」では、施設スタッフの指導のもとで、この鹹水を使った塩づくりを無料で体験できる。
まずは塩田の種類や仕組み、塩づくりの歴史などを解説していただいた後、釜に見立てた土鍋に鹹水を入れてコンロで加熱する。ふつふつと沸騰してきたら、ただひたすらにヘラでかき混ぜる。少しずつ変化して行く鹹水の具合を見ながら、そぼろ状にになった所で火を止め、後は余熱で完全に水分が無くなるまでスプーンでつぶしながらかき混ぜると、サラサラの天然塩が完成する。
文章にすると簡単そうに感じるだろうが、15分以上、かなりの早さでかき混ぜないと上手く水分が飛ばないし、何しろ熱い。指導してくれた宮本さんの手つきはさすがにスムーズで、まるでヘラが踊っているように見えた。
苦労して出来上がったサラサラの天然塩を試しに舐めてみたが、まろやかな旨味と、わずかな苦味を感じる美味しい塩に仕上がっていた。天ぷらや白身魚のお刺身にうってつけの味だ。施設内ではこの天然塩のほか、ニガリ成分を取り除いた結晶塩も購入できるが、やはり自分で作った塩の味は格別。しかも無料で体験できるので、ここを訪れた時には挑戦してみてはいかがだろう。
カテゴリー: ECOMISSION2013,兵庫県,環境
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