「おとうさん、これは大きいカニですね!」
「いやいや、こんなもんじゃないよ、ここのツガニは。それに数だってまだまだ。寒くなったらカゴいっぱいになるし、メスは内子が入って旨くなる。」
山間を流れる清流では、長年に渡って「ツガニ漁」が行われて来た。モクズガニのことを、この辺りではツガニと呼ぶ。高級中華で知られる“上海がに”とは同属異種のツガニ、不味いはずがない。
清流の高級食材ツガニにつられて、GAZOO mura 愛南の清流沿いにある農家民宿「風山の里」を訪れた。
連日の晴天はこの日も変わらず、抜けるような青空のもとで向かったのは愛南町御荘の農家民宿「風山の里」。出迎えてくれた石川さんご夫婦は、初対面なのになぜか心の底からほっとできる、陽気でやさしさ溢れる魅力的な方だ。
早朝の澄んだ空気と明るい陽射しの中、昨夕に仕掛けておいたカニカゴを引き上げに行くというので、案内していただいた。プリウスPHVがようやく通れるような川沿いの小道で上流へ向かうと、途中から未舗装のあぜ道に。やがてザーっという水が流れ落ちる音の響く淵へ到着した。
「風山の里」でツガニ漁体験
薮に包まれた淵は周囲が崖のように切り立っていて、ハシゴを使わないと降りられないほど。目印のロープをたぐり寄せると、底まで沈められて見えなかったカニカゴがゆっくり浮き上がったきた。それを抱えながらハシゴを上り、そのハシゴも抱えて薮をくぐり抜けて来た石川さん。果たして漁の具合は…
カゴの中には大量のツガニがうごめくいている!まずまずの漁科にうなずき、それをカゴごと軽トラックの荷台に載せる石川さん。これから、もうひとつ仕掛けているという漁場へ案内してくれるという。次の漁場は意外にも民宿近くの本流にあった。ツガニが産卵のために海を下る所を穫ろうというもので、川を石でせき止めて、そこにカゴを仕掛けてある。
ガードレールを乗り越えハシゴを使って護岸を降りて行くという、かなりの身のこなしが必要な場所だが、石川さんはすいすいと降りていく。いやはや恐るべき80歳である。
こちらのカゴにも10匹ほどのツガニが入っていたが、大きさが違う。やはり海へ向かおうというのだから成熟したツガニが多く、ずっしりとした重量感がある。穫ったツガニをバケツに移して漁を終えた。
愛南のツガニ、いただきます。
ここからはお母さんの出番。穫れたてのツガニを手際良く鍋に入れ、海水と同じ濃さの塩水をいれて火にかける。10分ほどで、何とも旨そうな香りが広がり、真っ赤に湯で上がったツガニのボイルができあがった。濃厚な味噌と、ぷりっとしたカニ肉がたまらない。時折「旨い」とだけつぶやきながら、無口でむさぼる“カニ宴”の始まりである。山と積み上げられたツガニが見るみる消えて行く。
GAZOO mura 愛南 民宿「風山の里」
みかん山をぐいぐい進むトロッコ
納屋を覗いてびっくり!裏山から敷かれたレールの上に、長年乗りたいと思っていたトロッコがあるではないか!トロッコは乗用ではなく、収穫したみかんなどの作物運搬用のものだが、どうしても一度乗ってみたいと願っていた。無理を承知で石川さんにお願いすると、何と快諾していただいた。
手でワーヤーを引いて小排気量のエンジンを始動。いざ、みかん山ツアーのはじまりだ。納屋を出ると強い陽射しに、みかん山が輝いている、などと景色を楽しんでいたのは一瞬の事だった。直ぐに崖のような急斜面が現れ、しがみついていないとトロッコから転げ落ちそうになる。こんな急斜面をがんがん登るトロッコがますます好きになった。
中腹まで来たところでUターン。上りよりもむしろ下りが恐ろしいのは階段などと一緒。車輛ごとズリ落ちないのが不思議なくらいの恐ろしさ、というか楽しさである。写真やつたない文章では、トロッコの魅力が十分に伝わらないので、下の動画をご覧いただきたい。
GAZOO mura 愛南 民宿「風山の里」トロッコ
納屋へ辿り着いたところでトロッコを降り、レールの裏側をよく見てみると、コイン大の穴が連続している。トロッコ側にはピッチの合った歯車があって、これがガッチリと噛み合う事であの急斜面を上り下りしていたのか、と納得。ともあれ、思いもよらない場所で、最高の体験ができた。石川さん、本当にありがとうございました!
「風山の里」石川さん 大変お世話になりありがとうございました。
次に愛南に来たときには、泊めてください。お元気で。
カテゴリー: ECOMISSION2013,Gazoo mura,愛媛県
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